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3月19日 成熟ミクログリアは脳内で完全に独立した自己再生システムを形成している(Nature Neuroscienceオンライン版掲載論文)

2018年3月19日
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アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患はもとより、発生時のシナプス形成など様々な過程におけるミクログリアの機能が続々明らかになっている。このミクログリアは発生初期に卵黄嚢から発生した最も最初の血液細胞が一回だけ脳へ移動して形成され、その後は新しい血液細胞のリクルートがないことが知られている。すなわち、血液細胞なのに他の血液システムとは完全に独立した脳内の組織として一生を過ごすと考えられるようになった。とはいえ、これだけ大活躍だと、細胞はもちろん失われる。その時、どこでどのように新しいミクログリアは造られているのかは、実際には決まっていたわけではなかった。

今日紹介する中国深圳にある科学アカデミー研究所からの論文は、確かめたわけではないが、皆がおそらくこうだと思っていたことを、様々な材料と方法を駆使して証明してみせた研究でNature Neuroscienceにオンライン出版された。タイトルは「Repopulated microglia are solely derived from the proliferation of residual microglia after acute depletion(急性的に失われたミクログリアの再生は残存ミクログリアの増殖のみに依存している)」だ。

まずこの研究では、ミクログリアの維持に必須のcfmsを抑制する化合物を経口投与することで、脳内のミクログリアを90%以上除去した後でも、3ー5日間急速に増殖を繰り返し、1週間でほとんど元に戻ることを示し、この実験系を用いて再生するミクログリアの起源を調べている。

次に、GFP標識されたマウスと循環系を繋いだパラビオーシスを用いて、血液循環からの供給が全くないことを確認している。

あとは、脳内の様々な細胞系列特異的に、標識分子をコードする遺伝子をCre-組み換え酵素を用いてオンにする標識実験を行い、ミクログリア再生に関わる起源が、アストロサイト、オリゴデンドロサイトなどのグリア細胞、あるいは神経細胞ではないことを確認している。 このように、ミクログリア再生が完全に骨髄由来の血液系から独立し、神経やグリア由来でないとすると、あとはミクログリア自身だけが起源として残る。そこで、cfms抑制でも脳内に残ったミクログリアを同じように標識する実験を行うと、残存しているミクログリアそのものから再生されたミクログリアがリクルートされていることがわかる。また、骨髄造血のように前駆細胞からミクログリアが分化するのではないことも否定して、 結局成熟したミクログリアが刺激に応じて急速に増殖して、脳内で必要とされる数のミクログリアを必要に応じて常に供給していると結論している。新発見というわけではないが、もし人間でもそうなら、ミクログリアの動態を調節する方法の確立につながる可能性は大きいと思う。しかし、個人的には、血液が完全に独立した脳組織に同化するという話は気に入っている。

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