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10月16日:収穫期に入ったUKバイオバンク II 脳イメージデータベースの統合(10月11日号Nature掲載論文)

2018年10月16日
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昨日は、UKバイオバンクがどのような設計で構築され、維持され、また将来へと発展しようとしているかについてのNatureの論文を紹介した。何か新しいことがわかったという論文ではなく、多くの人々に使ってもらうため、このデータベースがいかに使いやすいかを示す論文だったと言える。この論文に続いて掲載されていたのが今日紹介するやはりオックスフォード大学からの論文で、UKバイオバンクにMRIを使って取得した脳画像データベースを統合することで、何が可能になるかを示した論文だ。タイトルは「Genome-wide association studies of brain imaging phenotypes in UK Biobank(UKバイオバンクを用いた脳画像上の形質と全ゲノムレベルの関連解析)」だ。

UKバイオバンクが所期の登録数に到達する見通しが立ったところで、参加者の脳イメージを2020年までに10万人分集めるプロジェクトがスタートしており、このプロジェクトの現状を紹介したのがこの論文だ。

もともと、脳画像を研究している科学者は、ゲノム研究との接点は多くない。この壁を取り払って、両方が協力して、脳画像とゲノム解析を統合する方法を議論し、脳の構造や機能と遺伝子との相関を調べることができるデータベースの構築を目指したのがこの研究だ。このために、一人の参加者の脳を、各部分の大きさや形に注目する構造解析、領域間の結合に注目する拡散解析、そしていくつかの課題を遂行時の脳血流を測る機能的MRIの3種類の方法で画像化し、この画像を3144種類の形質に分解し、この値と相関するゲノム領域をUKバイオバンクのDNAアレーを用いて特定している。

両方のデータベースを使って明らかになる多くの例が紹介されているが、その一部を紹介しよう。

T2強調画像と呼ばれる方法で撮影した脳各領域の形質は多くのSNPとの相関が認められるが、この画像から得られる指標は老化などによる鉄の沈着を反映していることが多い。実際、相関の認められたSNPは鉄輸送や神経変性に関わるCoasyと呼ばれる遺伝子や、SLC44A5など栄養分やミネラルの輸送にかかわる遺伝子が見つかる。すなわち、このような画像と遺伝子の相関から、老化や変性過程に関わる遺伝子の特定が可能になる。また灰白質の体積と相関する遺伝子は、知性、統合失調症を脳構造とその背景にある遺伝子に連結させてくれる。

また拡散MRIで領域間の連結に関わる形質に相関するSNPを探すと、細胞外マトリックスやEGFシグナリングに関わる遺伝子が数多く上がってくる。例えば左右の脳をつなぐ脳梁膝部とBCANと呼ばれる細胞外マトリックス遺伝子と相関が見られる。すなわち、MRI画像の取り方によって、異なるクラスの遺伝子が相関してくることを示している。

最後に、脳の機能異常では通常複数の形質が合わさるが、脳画像上の複雑な変化と相関する遺伝子領域を特定する可能性を追求し、例えば脳全体の体積と関わる複数の形質が、統合失調症との相関が認められているBANK1遺伝子と相関することなども例として示している。

実際にはさらに多くの霊が示されているが、要するに構造やネットワーク、そして機能とゲノムを相関させていくことで、最終目的である遺伝と脳の高次機能の関係を明らかにできる可能性を高らかに歌い、その基盤にUKバイオバンクが寄与できることを示している。

おそらく、このような相関解析の結果新たな課題がわかると、そのためにまた新しいデータを足していくのだろう。おそらく、このデータベースは脳、特に脳疾患の研究者には役に立つだろう。診断でMRI検査をした時、その結果から遺伝子を想定することが可能になる。データベースは構築して、公開すればそれで終わりではない。それをより少ない努力やコストで、もっと多くの課題に使えるように発展させることが重要になる。この当たり前のことが良くわかる、UKバンクについての紹介論文だった。

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