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10月19日 フェースブックに書かれた文章からうつ病を診断する(米国アカデミー紀要オンライン掲載論文)

2018年10月19日
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以前紹介したように、医療現場でAIがもっとも期待されるのが、一般の人による自己診断が可能になることだ。以前紹介したのは、皮膚の腫瘤をスマフォで写真をとると、それが悪性かどうか専門医と同じレベルで診断してくれる例だが、ほかにも毎日の活動記録から医者にかかったほうがいいかをアドバイスしてくれるアプリなどが考えられる。

今日紹介するプリンストン大学からの論文は、精神科の病気、特にうつ病も同じようにAIで診断する対象になることを示した論文で米国アカデミー紀要オンライン版に出版された。タイトルは「Facebook language predicts depression in medical records(フェースブック上の言語によって医学的なうつ病の診断ができる)」だ。

この研究では病院で治療を受けた1万人あまりの患者さんからインフォームドコンセントをとって医療データとともにフェースブックに書いた文章にアクセスできるかしらべ、1175人について2008-2015年に書かれた文章を集めることに成功している。そのうちで臨床的に明確にうつ病と診断され、フェースブック上で十分な単語データがそろったのは114人だが、このデータを使ってディープラーニングを行い、うつ病ではない570人のデータと比べ、フェースブック上のどのパラメータが最も診断に利用できるのか調べている。

結果だが、人口統計的データや、フェースブックへの書込みパターン、あるいは書いた文章の長さや、書き込みの頻度などは、うつ病を予測するデータとしては利用できないが、フェースブックで使われた単語の種類など言語的側面は、7割の確率でうつ病の発生を予測できることを示している。

また、この予測確率はうつ病と診断された時点に近くなるほど上昇しており、発症前6カ月の文言語分析では72%の確率に上昇しており、診断的価値が高いことを示している。

実際に診断に役立つのはどんな言語的特徴を持っているのかも抽出しており、落ち込んだ時(涙、泣く、痛み)や、孤独感(失う、とても、ベイビー)、あるいは敵意(憎む、クソ、ウー)、などと関わる単語の使用が上昇することを示している。

残念ながら、このモデルを使ってテストを行っていないので、最終的な診断価値はわからないとしたほうがいいだろう。しかし、フェースブックなどの書き込みの文章が気分を反映することは間違いないし、これを使ったAIは間違いなく設計できるだろう。あとは、もっとも予測率の高いアルゴリズムを誰が開発するのかという競争だと思う。そしてもしこれが可能なら、パソコンやスマフォでの文章を常にモニターして、うつ病の危険を察知して自分に知らせてくれたり、あるいはかかりつけ医に知らせることが可能になるのは、そう遠い話でないと思う。おそらく、ほかの精神疾患についても同じようなAI診断が可能になるだろう。

このようなAIをどう使うのか、早急に議論を進めたほうがよさそうだ。

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