さて米国では学校の始業は9月になるが、今日紹介するハーバード大学医学部からの論文は、最も成長して就学する9月生まれの児童と、最も早く就学する我が国でいえば早生れに相当する8月生まれの児童で、ADHD(注意力欠如、多動性障害)の診断を受ける頻度が大きく変化することを40万人規模の学童調査で示した研究で11月29日のThe New England Journal of Medicineに掲載された。タイトルは「Attention Deficit–Hyperactivity Disorder and Month of School Enrollment (ADHDと修学月)」だ。
研究では2007-2009年にかけて生まれたが児童の中でADHDと診断を受けてさまざまな治療を受けたケースを、保険会社の一種のレセプトから掘り起こし、症例をいくつかの条件で層別化し、9月生まれと、8月生まれの子供のADHD診断頻度を比べている。我が国で言えば、4月生まれの子供と、3月生まれの子供のADHDの診断率を比べるのと同じ研究だ。
少しわが国と異なるのは、小学校へ入学する前5歳前後でで幼稚園に入るが、この幼稚園入園は州によって9月で区切られている州と、入園時期を9月に限定しない州があるので、両者で診断率を比較している。
結果だが、幼稚園入園時期が厳密に9月になっている州では、9月生まれの児童と、8月生まれの児童でADHDと診断された頻度を見ると、3割高くなっている。ところが4月vs5月というように、他の前後の月を比べるとほとんど差がない。ADHDではなく、身体的な他の病気を比べると、このような差は見当たらない。さらに驚くのは、幼稚園の入園時期が小学校に連動して9月になっていない州では、このような差が見られない。そして、この差は男の子だけで有意に見られる。
以上が著者らが引き出した結果だ。ただ、データをよくみると、ADHDと診断される数は、もっとも年長の9月生まれが0.63%と最も低く、それから10月、11月、・・・6、7、8月と実年齢が低下するのに従って、0.69, 0.74, 0.76, 0,81, 0.89, 0.90, 0.90, 0.87となっており、実際には4月、5月生まれで診断率が最も高い。ただ、前の月とだけ比べると、その差が見えないようになっている。従って、私なら早生まれの最初の5ヶ月(4−8月生まれ)と最も年長の3ヶ月(9−11月)ではADHDの診断率が異なっていると結論するだろうなと思う。
いずれにせよ、我が国で言う早生まれの子供は確かにADHDと診断されやすいという結論になるが、ではその原因は何かが問題だ。著者らは、ADHDの気づきが最初学校や幼稚園の先生や、親が他の子供との比較をきっかけに行われることが多いことから、実年齢が低いことによる注意障害などが年長の子どもと比較することでより顕著に見えてしまうからだと考えている。すなわち、多くは過剰診断と結論している。
ただ、幼稚園の入園時期が9月と区切られていない場合この傾向が薄まることから、個人的には大勢の子供との交流が、児童に対してストレスになり、実年齢の差がより強く現れているのではとも思う。
このように、私は著者の解釈だけしかあり得ないとは思はない。ただ、早生まれの子供には、これまで問題になっていなかったADHDと診断される頻度の問題があることはよくわかった。子供のことを親身になって調べた研究だと思う。我が国では、教育のためのマニュアルも大きく違うと思う。その意味で、ぜひ同じような調査を行い、同じような傾向があるのか明らかにして欲しい。というのも、このような差でADHDの診断数が変わるなら、介入の余地がある。しかし、このような調査研究を掲載したThe New England Journal of Medicineの編集者も社会のニーズをよく把握して雑誌を運営していることがよくわかった。
素晴らしい記事に出会え感謝しております。
加えて日本では、ADHDの経過観察の診断書、親の同意書のみで幼稚園、保育園に支援費が入る制度がある為、その制度を利用しようと、親を追い込む幼稚園、保育園も少なくない。支援費の不正受給の為に、子供、その家族の人生を大きく変えてしまうのだ。親が療育センターへ連れて行けば、必ず最低でも【要経過観察】になる事を逆手にとっている。この事について、もっと研究、そして幼稚園、保育園が不正受給を出来ないよう国としても改善をして欲しい。