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12月6日:mRNAのアセチル化(12月13日号Cell掲載論文)

2018年12月6日
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私がmRNAのメチル化をしっかり理解できたのはそう昔の話ではなく、こんなこともあるのかと論文ウォッチでもかなりの回数紹介している。最も最初に紹介したのは、2013年の京大薬学部岡村さんのグループがCell に発表した論文だった。あれから5年だが、今度はmRNAのcytidineがアセチル化の意味についての研究が米国NIHから12月13日号のCellに発表された。tRNAやrRNAならあらゆる修飾が存在するなら、mRNAで起こって何が不思議かと言う話だが、それでもmRNAがここまで様々な修飾を受けているとは考えだにしなかった。タイトルは「Acetylation of Cytidine in mRNA Promotes Translation Efficiency(mRNAのcytidineのアセチル化は翻訳の効率を上げる)」だ。

この研究では最初からmRNAのcytidineもアセチル化されており、それに関わる酵素は他のRNAと同じでNAT10 だと決めて研究を始めている。

先ずNAT10をノックアウトしたHeLa細胞株を作成し、細胞の増殖が低下すること、そしてpolyA-mRNAのアセチル化がNAT10欠損株で完全になくなることを明らかにしている。すなわち、mRNAのアセチル化はコンスタントに起こっている。

次に、アセチルcytidineに対する抗体で濃縮したmRNAの配列を決定し、基本的には特定のmRNAや特定のcytidineがアセチル化されるのではないが、アセチル化が欠損すると発現が低下する遺伝子が多いこと、そしてタンパク質をコードしている部位のcytidineがより選択的にアセチル化されていることに気づく。

次に、アセチル化がmRNAの代謝に及ぼす影響を調べ、細胞内での半減期がアセチル化されているRNAほど長いこと、アセチル化されているほど翻訳の効率が高まることを発見する。

そして、これら現象の原因を、さすがRNA研究者のプロと思わせる発想で実験的に示すのに成功する。それぞれのアミノ酸に対応するコドンの3番目の塩基は、たとえばセリンに対しては4種類全ての塩基が対応できるし、例えばチロシンの場合UAに続いてUかCの2種類が来るように、複数個存在できる。面白いことに、アセチル化されているcytidineはまさにコドンの3番目の塩基として使われている確率が高い。しかもコドンに対応するtRNAが相補的コドンだけでなく、3番目の塩基がマッチしなくても翻訳できるWobbleと呼ばれるtRNAが存在するコドンの最後のCがアセチル化されている確率が高い。このことから、リボゾーム上で出会う確率がそう高くないtRNAを安定的に捕まえるための仕組みではないかと仮説を立てた。

そして、翻訳活性を図るためのルシフェラーゼ遺伝子内のこの条件を満たすコドンの最後のCを、同じアミノ酸をコードできる他の塩基に変えてNAT10の欠損細胞株と、正常細胞株に導入すると、アセチル化活性が正常株では、C以外の塩基に代えると翻訳活性が5分の1になること、また試験管内での翻訳でも発現量がアセチル化されたcytidineでは20−30%翻訳が高まることを示している。

完全にマッチしないtRNAを効率よく捕まえる一つのメカニズムとしてこのような仕組みができてきたという結論になるが、RNA研究のプロでないとできない研究だというのはよくわかった。

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