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8月2日;開業医をやる気にさせる患者さんのタイプ(Patient Education and Counseling オンライン版掲載論文;http://dx.doi.org/10.1016/j.pec.2016.06.023)

2016年8月2日
   医師として働いた期間は七年弱で長くないが、正直に告白すると、気楽に付き合える患者さんと、苦手な患者さんといったような、患者さんに対するえこひいきの感情はあった。ただ、医師をやめてから2年間、患者さんに文句を言われている夢を見ることがあったことを考えると、このえこひいきが罪悪感として心のどこかに引っかかっていたことは確かだ。
   今日紹介するジョンホプキンス医科大学からの論文は医師にとってfavorite patientとはどんな人たちかについて25人の開業医さんにインタビューした論文でPatient Education and Counselingオンライン版に掲載されている。タイトルは「A qualitative exploration of favorite patients in primary care(一般臨床でやる気にさせる患者さんについての定性的研究)」だ。
      Favorite patientをどう訳すかはなかなか難しい。論文を読んでみると単純な好き嫌いではなく、えこひいきに近い。そこで、やる気にさせると訳しておいた。
   まず「患者教育と相談」という雑誌が存在するのには驚いたが、患者さんとの関係が医師の仕事の重要な部分であることを認識し、この問題をカバーする論文を集めることは重要だと納得する。
  調査内容が内容だけに、統計結果などは一切示されず、インタビューで得た医師の生の声から著者らが考えた結論が淡々と書いてある。したがって、明確な結論があるわけでもないので内容をまとめることは難しく、詳細については読んでもらうしかないが、そこをあえてまとめると次のようになるだろう。
1) まずインタビューの対象になった医師は、大病院と契約している開業医さん25人で、ゆっくり時間をかけて本音を聞き出している。
2) 何をfavoriteと考えるかは医師によって違う。最初はほとんどが患者さんをほぼ平等に扱っていることを強調するが、話しているうちに確かにやる気の出る患者さんとそうでない患者さんがいることを認める。
3) やる気にさせる患者さんを表現するキーワードとして、「何かピンとくるものがある」「楽しい」「賢い」「愛らしい」「記憶に残る」などが挙げられる。(これは私も納得する。)
4) とは言え、一番やる気になるのは、病気のため長年の付き合いが確立している患者さんで、たまに風邪でやってくるような健康な人たちはあまりやる気にならない。(私も若いときは、難しい病気の患者さんほどやる気になった)
5) 一方、やる気にならないというか、苦手な患者さんは、医者の限界を理解せずに、要求の多い患者さんということになる。
6) 医師の方でもやる気になる患者さんにはやはり時間をかけおり、また亡くなると喪失感が大きい。(私も納得だ。)
ということができる。
   これを簡単にまとめると、慢性的病気を持っていて、医師と長く付き合っており、性格的には医師としっくりくるような患者さんが、やる気にさせる患者さん像になる。また、医師も人間なので、どうしても選り好みがあることも結論といえるだろう。
   最後に、医師は、「多くの患者さんが医師に好かれようと努力をしていること、しかし自分がどうしても患者さんの選り好みをしてしまう」という自覚を持つことが重要だとアドバイスをしている。
   一方患者さんに対しては、「医師と患者の関係は相互的で、患者さんの側からもうまく働きかけることで関係を良好に保つことの重要性」をアドバイスしている。
   このようにあえて結論をまとめてみたが、はっきり言って明確な回答が示された論文ではない。ただ、多くの生の声が記載されているので、医学部や看護学の学生さんに読んでもらって、討論させるためのいい材料になるかなと思った。
   我が国では、今でも医師に対する個人的謝礼を送る悪弊が残っており、私も医師を紹介した友人から「いくらぐらい包めばいいのか」などと質問を受けて暗い気持ちになる。このような悪弊を一掃する意味でも、医師をやる気にさせる患者さんについてもっと深掘りすることは重要だと思う。

  1. 橋爪良信 より:

    個人的な経験ですが、製薬会社で鎮痛薬の研究に携わっていたころ、通勤中に追突事故に遭い、ペインクリニックに通っておりました。医師が、保険証の記載から私の研究者としての背景を捉えていたこともあり、治療法の意義から薬剤の処方、西洋的/東洋的な痛みへのアプローチなど、処置を受けながら示唆に富む議論ができたことを記憶しております。通院を繰り返すうちに、患者さんのニーズ、医師が求める鎮痛薬のプロファイルなど、研究にフィードバックできる情報まで得ることができました。これこそ怪我の功名といいますか、、、貴重な経験でした。また、研究以外にも様々な話題がありましたが、「橋爪君、ぜひ欧州メーカー製のディーゼルエンジン車に乗ってみなさい」と言われたのが印象的で、この六月にようやくその課題を達成することができました。現在はその意味を探っているところです。
    推測ですが、「車で国境を超える文化的背景を持つ人々が求める車づくり」を感じろということなのでしょうか。。。

    1. nishikawa より:

      なかなか一般の人はそこまではいかないです。
      ディーゼル車ですが、私のカミさんも大ファンで、トルクを使って坂で加速して満足感に浸っているようです。

  2. 中原 武志 より:

    面白い論文ですね。
    患者の側から考えても、この内容には納得できることが多いですね。 
    私は一人だけ、この医師は凄いなと思っている人がいます。
    簡潔であって無駄な話はしないが、やさしく患者と向き合えている。患者の話を聞くこともできるるし、患者の立場を考えて、医療も考えることができる。
    簡単なようでいて、なかなかこんな医師はいないのです。
    医師の立場からの要素と患者側の要素を合わせて考えると面白いですね。

    1. nishikawa より:

      このような調査をきちっとすることが重要です。

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