しかし、今日紹介するカリフォルニア大学サンディエゴ校からの論文は、酒を飲んだほうがボケずに長生きできるという酒好きにとっては極めつきの研究で、同じ酒好きのみなさんのために是非紹介しようと思った。タイトルは「Alcohol intake and cognitively healthy longevity in community dwelling adults: The Rancho Bernardo Study(地域社会で暮らす人にとって、アルコール摂取は認知機能を維持した長生きをもたらす:The Rancho Bernard研究)」だ。
研究はサンディエゴの近くのRancho Bernardoに住む成人を対象に1972年以来進めれらているコホート研究で、認知機能を始め様々なテスト項目を定期的に検査している。
この集団の中で85歳になって認知機能を調べることができた1344名についてアルコール摂取との相関を調べている。アルコール摂取量についてはビール、ワイン、スピリッツなど詳しく分類して計算し、moderate, heavy, excessiveに分類している。この地域ではほとんどの人がアルコールと共に生きているようで、全く飲まない人は28人だけで、前回紹介した半分の人が酒を飲まないというノルウェーとは大違いだ。
いろいろ調べているが詳細は全て省いて最も気になる点、85歳までボケずに生きることができるかについて見てみると、補正操作にかかわらずheavyと分類されたひとたちのオッズ比が2以上で優位に高い。Excessiveに飲む人ですら喫煙を補正すると2を越すという結果だ。
量とは別に、どの程度頻回に飲んでいるかを調べても、例えば全く飲まない人を対照にして計算すると(補正なしのデータを示す)、1ヶ月に2回程度の人は1.92、週一回程度の人が1.79、毎日飲む人が2.3と飲んだほうがオッズ比が高い。他にも様々な補正をしているが、結果は変わらない。
まさにこのような論文が出るのを待っていた。とは言え、これを紹介して若者に酒を飲むべきだなどと主張する気にはならない。環境のいい郊外で暮らしている人が対象で、都会の集合住宅で暮らす私に当てはまるかどうかわからない。結局、酒の習慣を単純な枠にはめて考えるのが間違っている。確かに頭の中で「飲み過ぎるな」と囁く声を黙らせるにはいい話だと思うが、逆の結果でも晩酌は欠かせない。
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