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1型糖尿病の新しい標的

2013年11月18日

I型糖尿病はいわゆる自己免疫疾患で、膵臓のβ細胞が免疫反応によって壊される事によって起こる。従って、I型糖尿病の予防や治療はβ細胞に対する免疫反応を抑制したり、あるいは障害されたβ細胞の移植による方法が中心だった。今日紹介する論文はβ細胞自体を標的とする治療法開発の可能性を示唆するものだ。ハーバード大学のグループが11月13日号のNature Translational Researchに報告した論文で、「Restoration of the unfolded protein response in pancreatic β cells protects mice against type1 diabetes (折り畳まれていない蛋白に対する反応を回復させる事によりマウスの1型糖尿病を予防できる)」とタイトルがついている。これまでの研究で、1型糖尿病のβ細胞が小胞体(ER)ストレスを示している事が知られていた。ERストレスとは、小胞体の中で起こる様々な過程がうまく進まない事で起こる。1型糖尿病のケースでは、小胞体内で蛋白質が作られすぎたりして折りたたみの進まない蛋白質が溜まり、それがERストレスを誘導して細胞が死に至ると予想されていた。幸い、この蛋白質の折りたたみを促進できる化学物質TUDCAという化合物が知られている。この化合物により、もしER内での蛋白質の折りたたみが促進出来れば、β細胞が死ににくくなり、I型糖尿病の発症を止める事が出来る可能性がある。この研究ではこの可能性をマウス1型糖尿病モデルで確かめた。予想通り、TUDCAを2日に一回投与したマウスでは糖尿病の発症を強く抑制する事が出来た。人の1型糖尿病β細胞でも同じように蛋白質折り畳みがうまく行かない事によるERストレスの兆候が見られるため、蛋白質の折りたたみを促進できる新しい化合物を見つけて治療に使う事も一つの可能性として浮上したと言える。勿論、人でもどのぐらい効果があるのか、また発症をどの程度遅らす事が可能かなど調べる課題は多いが、様々な角度から研究が行われ、少しでも多くの薬が開発される事は大歓迎だ。


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