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12月26日 2018年に注目された治療(Nature Medicine 12月号掲載論文)

2018年12月26日
毎年紹介しているが、今年もNature Medicineが、2018年に注目された新しい治療法についてまとめているので紹介する。残念ながら、大型新薬というのはないような気がする。( )内に個人的感想を書いておいた。

期待が持てる治療法

Onpattro
突然変異型のtransthyretinによるアミロイドーシスを治療するためのRNAi薬Onpattroの神経症状を持つ人への適用がFDAにより許可された。同じ標的に対するTegsediも2ヶ月後に認可を受けた。さらに、3番目の治療薬がTafamidsの治療成績が発表されようとしている。その上にファイザーがさらに広い範囲の適用を目指して治験を進めている。(アミロイドーシスでの競争というより、RNAi薬開発競争が反映されていると思う。)
Tybar TCV
腸チフスに対するワクチンで、WHOにより認可された。インドのハイデラバードの企業Bharat Biotechにより開発され、強い抗原と弱い抗原が組み合わせられたワクチンで、接種により87%の人が発病を予防できる。
Aimovig
アムジェンにより開発された、CGRPの機能を抑制することで偏頭痛を抑える抗体薬。同じ趣旨の抗体薬についてはこのカラムでも紹介した(http://aasj.jp/news/watch/9198
Lucemyra
麻薬からの離脱治療時に禁断症状を改善するために開発された化合物(lofexidine hydrochloride)。作用機序は、ノルエピネフリン分泌阻害。
Epidioex
マリファナから抽出されたcannabidiolで、FDAの認可を受けた最初のマリファナ由来薬剤。Lennox-Gastaut症候群、およびDravet症候群という希少疾患の子供のてんかん治療にFDAの許可が出た。(これについては他の小児のてんかんに適用を拡大していってほしいと思う)
Oriliaa
子宮内膜症に対する最初の内服薬としてFDAに許可された。ゴナドトロピン放出ホルモンの阻害剤作用を持つ最初の内服薬。Abbvieにより開発された。(Abbvie社は結構頑張っているようだ)
CD19 CAR-T
長期効果の結果が発表され、ALLの患者さんで2年半では83%の患者さんで、病気を抑えることができることがわかった。(これも3社も参入し、大きなお金が動いているが、誰にでも使えるオフシェルフ型の開発が今後のキーになる)
Biktarvy
ギリアドサイエンスにより開発されたHIVに対する薬剤で、すでに認可されたemtricitabine とtenofovir alafenamideに、新しいインテグレース阻害剤bictegravirを合剤にしたもの。(抗ウイルス薬を着々と開発しているようだが、HIVは完治は可能か?)
人工瞳孔
遺伝的な原因で瞳孔が欠損した人に、外科的に装着する人工瞳孔がFDAにより認可された。光に対する過敏性を改善することができる。
乳がん遺伝子診断
個人遺伝子診断サービス23&MeがBRCA1とBRCA2の3種類の稀な変異について、乳癌リスクとしてレポートするサービスをFDAにより認められた。(すでに特許になっていなかったBRCA変異があるとは) Xtandi
我が国のアステラス製薬が上梓している前立腺治療薬で、アンドロゲン受容体拮抗薬。これまで、転移前立腺癌にのみ適用が認められていたが、今回FDAは転移のない患者さんへの適用を認めた。(これは大型として期待できる)
Emgality
アムジェンと同じで、CGRPを抑えて偏頭痛を軽減するモノクローナル抗体薬。Eli Lillyにより開発された。

(以上が効果が期待される新しい薬剤としてリストされたが、例年と比べるとその期待度やインパクトはかなり見劣りすると言わざるを得ない。大型買収のニュースが話題になった今年だが、新薬開発のペースは維持できているのだろうか?)

期待はあるが少し問題もある

Natural Cycles(避妊アプリ)
基礎体温により避妊サイクルを教えてくれるスマフォアプリで、FDAやEUの認可を受けている。しかし、スウェーデンで35例が避妊に失敗したことが明らかになり、避妊に失敗する率が7%にのぼることが明らかになった。結局完全ではないが、一定の信頼性はある。
アップルウォッチ
心拍を記録する装置としてFDAにより認められていたが、不整脈の不安を煽ってしまって、必要ない程度の不整脈で病院を受診する問題が起こる可能性が高いことがわかった。
バクテリオファージによる炎症性腸疾患治療
バクテリアを殺すバクテリオファージで大腸菌を殺菌し、クローン病を治す治療法の第I/II相治験がようやく許可された。(アイデアは気に入っている)
MGL-3196
非アルコール性肝炎の内服治療薬で、甲状腺ホルモン受容体刺激作用がある。第I/II相治験で肝臓脂肪を低下させ、また症状の軽減に成功した。第3相治験の結果が期待できる。(これは大型に育ってほしい)
ベータタラセミア治療薬
IIb型アクチビン受容体とヒトIgGキメラによるタラセミア治療薬は第3相治験で期待通りの成果をあげた。一方、CRISPR遺伝子編集を用いる期待の鎌形赤血球症を治療法は、FDAに治験開始を差し止められた。(CRISPRに関してはまだまだFDAも慎重のようだ)
BAN2401
我が国のエーザイによるアルツハイマー病に対する抗体薬で、900人を用いた第2相試験でアミロイドプラークを減少させたと報告された。ただ、認知症の症状を軽減するかについてはクエスチョンマークがつけられている。(我が国というだけでなく、世界レベルでアルツハイマー薬として持ちこたえている。)
SPK8011
アデノ随伴ウイルスベクターを用いた血友病Aに対する遺伝子治療は、血友病に対して高い効果を示したものの、アデノウイルスに対する免疫反応が見られ、ステロイドの治療が必要になった。

赤信号がついた治療法

Sildenafil
バイアグラのジェネリック薬。低体重児予防の目的で、180例の妊婦さんに投与され、死産が11例発生した。
Zinbryta
多発性硬化症に対する抗IL-2受容体モノクローナル抗体薬は、強い神経炎症に見舞われ、治験が中止された。
BACE阻害剤
アミロイドの切断を阻害する薬剤として最も期待され、多くの製薬会社により開発が続けられてきたが、メルク、ヤンセン、Eli Lilly, AstraZenecaが相次いで治験を中止した。(個人的には期待していたのに残念)

(全体的に見ると、まず核酸薬の品揃えが、希少疾患を中心に着実に増えており、より一般的な疾患にも拡大すると予想できる。最も期待されているアルツハイマー病に対するBACE阻害剤が現在のところ完全に失敗に終わり、エーザイのBAN2401が踏みとどまっているという、アルツハイマー薬の難しさが際立った記事だ。BACE阻害剤は動物実験レベルでアミロイドプラークを抑えることが示され、Natureにまで論文が発表されている。その意味で、失敗の原因をがアミロイドプラークを抑えられなかったのか、あるいはアミロイドが抑えられても、症状は進行するのか明確にしてほしい。 残念ながら今年は本当に小粒の話で終わってしまった印象が強い。)

  1. 橋爪良信 より:

    アルツハイマー型認知症におけるバイオマーカーのバリデーションの重要性が増した感があります。これまでのバイオマーカーの取り組みと関連付けて、このままアミロイド仮説で進んでよいのかどうか議論されるべきではないでしょうか。

    1. nishikawa より:

      同感です。もう少し上流、炎症やストレスも標的にできるのかキーになると思います。

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