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2月5日 実験進化学は可能か?(2月1日号Science掲載論文)

2019年2月5日

環境が変わることで新しい形質が選ばれる例として最も有名なのが工業暗化として知られている、産業革命で工業が発達し、街が煤けてくると、蛾の羽の色が黒くなったという話だ。もちろん当時、その背景にある遺伝子の変化を調べようなど考えも及ばなかったと思うが、2016年6月にこのコラムで紹介したように(http://aasj.jp/news/watch/5337)、この原因がトランスポゾンの挿入による進化であることが明らかにされている。このように、ゲノムレベルの多様性と環境による選択を共に追跡できる条件が整ってきたことは確かで、進化を実験的に研究したいという人たちには大きな可能性がひらけていると言えるのではないだろうか。

今日紹介するカナダモントリオールのマクギル大学からの論文は、マウスの毛色の自然選択過程で選ばれるゲノムについて実験的にアプローチした研究で2月1日号のScienceに掲載された。タイトルは「Linking a mutation to survival in wild mice(野生マウスで突然変異を生存に結びつける)」だ。

この研究ではネブラスカ州の砂地と、緑地で野生マウスを野生のまま飼育した時、生存に適した毛色とそれをコードするゲノムとの関係を調べている。砂地は淡い茶色をしており、一方それ以外の場所の土地は黒っぽい。それぞれの土地からまず481匹の野生マウスを集め、土地に適応しているかどうか実地に試すため、50メーター四方のネズミが逃げないように囲ったフィールドを用意し、各土地から集めたマウスを放し飼いにし、なんと14ヶ月観察する。すると、近くに生息する主にフクロウに襲われるため、土地の色から浮き上がったネズミは淘汰されると予想される。実際予想通り、黒い土地のネズミを砂地で飼っていると14ヶ月目にはほとんどのネズミが鳥の餌になる。同じように、砂地のネズミを黒い土に離した場合も同じ結果に終わる。

実際それぞれの土地にどのようなネズミが生き残れるか調べると、砂地には背中の色が薄いネズミ、黒い土には背中の黒いネズミが生き残ることが確認でき、工業暗化と同じことが起こっている。ただこのネズミの場合、すべて茶色のトーンの違いなので、この色をコントロールするAgouti遺伝子の周りの遺伝子変化の結果だと決めて、この遺伝子の前後の塩基配列を詳しく調べ、それぞれの土地で生き残ったネズミで300−500のSNPを特定している。すなわち多様化が怒っている。そして、少なくとも黒い土の上での選択は自然選択により、この多様化した遺伝子の中から特定のSNPが選択されているという可能性が高いことを計算している。

次に、それぞれのSNPから自然選択されたことが間違いない7種類のSNPを特定し、この7種類が連鎖している3種類のブロックを形成していること、そのうちの一つはAgoutiのコーディング領域のserineが欠落する変異であることを確認する。

最後に、直接Agoutiタンパク質の構造が関わる変異を見出しせので、このalleleに絞って毛色の変化との関わりを調べると、このSNPを持つほど背中の毛色が薄くなることを確認している。同じSNPをマウスに導入して毛色を調べると、確かに色が明るくなる。変異の効果をこのように確認した上で、黒い土の上で生き残ったネズミのゲノムを調べると、serineの欠損したSNPを持つネズミが黒い土の上では強く選択を受け、殺されていることを示している。

結果は以上で、短いタイムスケールの中で、明らかに特定の遺伝子の多様性の結果が環境により選ばれるという進化過程を、予測し確認できることを示すことに成功している。おそらく、野生でも同じことが起こって、現在の状態になっているのだろうと納得した。


  1. Okazaki Yoshihisa より:

    短いタイムスケールで、特定の遺伝子の多様性の結果が環境により選ばれるという進化過程を、予測し確認できることを示すことに成功例。

    →実験進化論学=ダーウインを実験で証明する。

    こうした結果を、Intelligent Design論者の方々はどのように論破されるのでしょうか?
    アメリカでは、40%の国民が、ダーウイン進化論に納得してないとのことですが。。。

  2. 若松一雅 より:

    西川伸一先生,

    論文のご紹介ありがとうございました。この論文の共著者の藤田医科大学の若松一雅です。日本色素細胞学会では,色々とお世話になりました。お元気で,ご活躍のこと,嬉しく思います。今後のご活躍を楽しみにしております。

    1. nishikawa より:

      素晴らしい研究だと思っています。

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