9月1日 アルツハイマー病に関与する新しい分子ERBB4(8月24日 Nature オンライン掲載論文)
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9月1日 アルツハイマー病に関与する新しい分子ERBB4(8月24日 Nature オンライン掲載論文)

2026年9月1日
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アミロイド β(Aβ) や Tau の蓄積がアルツハイマー病 (AD) での神経機能低下や細胞死に関わることは間違いないが、シナプス結合が低下して、最終的に細胞が死んでいくまでには様々な分子が関わっている。ということは、Aβや Tau 以外にもAD治療の標的は存在することを意味する。

今日紹介する韓国・科学技術先進研究所からの論文は、ADの初期からERBB4が興奮神経に発現することがADでのシナプス結合の低下の原因である可能性を明らかにした研究で、8月26日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Aberrant excitatory neuronal ERBB4 promotes Alzheimer’s disease pathology(興奮神経の異常ERRB4発現がアルツハイマー病の病理を促進する)」だ。

このグループはADでアストロサイトやグリアが興奮神経のシナプス突起を貪食で除去する過程に興味を持って研究していたようで、アミロイド沈着モデルマウスで、アストロサイトやミクログリアが興奮神経ではシナプスを貪食し、逆に介在神経では貪食が低下することを観察する。そしてこの原因が興奮神経が過興奮することで生まれるシナプス増加を抑える反応であることを、神経興奮実験で明らかにする。この結果は、ADの変化の最初に、興奮神経が過興奮するというこれまでの結果と合致している。

この過興奮によるシナプス除去に関わるメカニズムを探るべく、ADモデルマウスの single cell 転写解析を行い、様々な変化の中でも受容体チロシンキナーゼで、乳ガンのHer2分子と同じファミリーに属するERBB4がADの興奮神経に過剰発現していることを発見する。

あとは、実際にERBB4がアストロサイトのシナプス除去に関わるかを調べるため、興奮神経のERBB4遺伝子をクリスパーでノックアウトする実験を行い、期待通り興奮神経で起こっていたシナプスの貪食亢進が正常化し、逆に介在神経では低下していた貪食が正常化することを明らかにしている。一方、Fosの発現からわかる興奮神経の過興奮は、ERRB4をノックアウトすると正常化する。病理的にも、 ADでのアストロサイトやグリアの増殖がERBB4ノックアウトで正常化することも確認している。

以上の結果から、ADが始まると興奮神経の過興奮が起こり、このシナプスを除去するためアストロサイトやミクログリアが活発になる一方、代償的に抑制性介在神経のシナプスが増え、興奮神経の活動が低下することがわかる。

この研究で最も重要な実験は、正常の興奮神経にERBB4を過剰発現させた実験で、これによりADに見られるシナプスの生理学的、細胞学的変化を再現することができる。さらに、認知機能の低下も誘導出来る。従って、ADでは何らかのきっかけでERBB4の過剰発現が起こることが、AD病理の重要要素になっていることがわかる。AD患者さんでERBB4の発現を調べると、ERBB4の発現と認知症状の相関が見られる。

以上が結果で、細胞内シグナルの検討から通常のERBB4活性化と同じように、AKT、mTORを介したシグナルにより、興奮神経がリプログラムされ、その結果過興奮になることも確認しているので、おそらくAβが引き金になってERBB4の過剰発現が起こることが、ADの発症過程の引き金になっていると結論している。

今後は人間のADについてより詳細な検討を進めるとともに、ERBB4の過剰発現を誘導する過程を明確にする必要があると思う。また、Tauだけで誘導するADではどうかなど、検討項目は多い。しかし、ERBB4は十分介入可能な標的なので期待できる。

カテゴリ:論文ウォッチ
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