AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 8月5日 入院できない新型コロナ発症患者のための治療薬開発(7月26日 Antimicrobial Agents and Chemistry オンライン掲載論文)

8月5日 入院できない新型コロナ発症患者のための治療薬開発(7月26日 Antimicrobial Agents and Chemistry オンライン掲載論文)

2021年8月5日

唐突に政府がCovid-19発症者の隔離入院について、トリアージを行う方針を表明して問題になっているが、問題はこれしか我が国厚労省が取りうる手段がないという点で、今の東京でこの方針を否定したところで、現状は全く変わらないのではないだろうか。

とすると、今必要とされているのは、感染して症状があるのに、不安なまま自宅に取り残されている人のケアになる。ところが我が国で発行されている治療指針を読むと、自宅療養者の治療については全く考慮されておらず、中等症は入院治療するとある。今回、この境が無くなったとすると、入院させて行っていたケアを提供できることをガイドラインとして明確に示さないと、一般の人の不安は取れないだろう。

自宅待機の人のケアの重要性については、このHPでも強調してきた。例えば、5月18日、次のように書いて、少しでも可能性があることは初期治療に取り込むことの重要性を強調してきた。

「例えば以前紹介したコロナウイルスnsp7がプロスタグランジン合成酵素と結合するとする細胞レベルの結果が、実際に治療に役立つか調べるため、新型コロナウイルス軽症感染者に対してかかりつけ医が投与したCox阻害剤が、入院を防いだかどうかを調べ、Cox2選択的阻害剤のセレコキシブは全く効果がなかったが、Cox1阻害効果があるインドメタシンは、入院者数を50%以上低下させたというScienceの論文は、原理がわかっておれば、初期治療として十分使えることを示しており(https://aasj.jp/news/watch/14287)、この論文を読んだ後、私は自宅にインドメタシンカプセルを用意している。」

さらに今回より軽症者の治療としてスパイク抗体カクテル療法に首相が言及したことから、入院制限=抗体利用のトリアージではないかとの憶測を生んでいる。しかし、抗体の半減期は長く、毎日点滴するものではないため、もちろん外来や自宅でも抗体点滴は可能だ。ようするに、特効薬と思うなら、使用のための対象者の選択ガイドラインを設定して、そのあとで首相がアナウンスすると言う手順が必要で、ともかく首相に語らせて点を稼ごうとする取り巻きの程度があまりにひどい。

抗体薬で言えば、もちろんこれから一年はかかるが、先日紹介した、EUや米国で緊急承認された広い特異性を持つGSKのSotrovimabは、外来患者さんも考慮して抗体の筋肉注射の治験が始まったことも知られている。このように、今回のパンデミックで、ワクチンとともに、外来で患者さんを治療する方法の開発が急務であることがよくわかった。

以前紹介したように、メインプロテアーゼの阻害剤が、ファイザーやシオノギで開発されている。1日でも早く効果を確かめるための治験を我が国でも進めることが重要だと思う。政府ももっと現状を把握し、情報を発信することが重要だろう。

このような新しい薬剤だけでなく、現在使われている薬剤も、さらに使いやすくできることを示した論文がカリフォルニア大学サンディエゴ校から発表された。タイトルは「Rethinking Remdesivir: Synthesis, Antiviral Activity and Pharmacokinetics of Oral Lipid Prodrugs(レムデシビルを再考する:経口投与できる脂肪型プロドラッグの合成、抗ウイルス作用、そして薬剤動態)」だ。

レムデシビルは、C型肝炎ウイルス薬で有名なギリアドサイエンスにより一本鎖RNAウイルス薬として開発された、実際に細胞内で働く有効型アナログを最終的に作るためのプロドラッグ(体内で変化して有効産物になる)、covid-19で入院すると、ほとんどの患者さんで使用されると思う。ただ、あらゆる抗ウイルス薬共通に言えるのは、効果は早く投与するほど良いが、点滴でしか投与できないため、感染後経過してから使うことになり、手遅れの場合が多い。

ギリアドが徹底的に研究した果ての化合物と考え、改良の余地などないと思っていたが、著者らは実際に働く有効型レムデシビルを安定的に体内で合成させるための化学構造はまだまだ改良の余地があり、最終的に有効型レムデシビルに様々な脂肪が結合したODBG-P-RVnを合成して、この薬剤が経口投与可能で、血中での安定性が高まり、体内で有効型に変わるための過程が一つの酵素で進むため、ほとんどの細胞で抗ウイルス効果を発揮できることを示している。

実験では、ODBG-P-RVnが、レムデシビルと比べても、血中でほとんど分解されないが、どんな細胞でも有効型化合物へ転換されるため、これまでレムデシビルでは効きが悪かった細胞でも抗ウイルス作用を発揮することを示している。

残念ながら、動物の感染実験は全く行っていないが、ハムスター経口投与で、まず腸管リンパ管に入り、分解される危険がある肝臓を経由しないで血中有効濃度を達成できることは示しており、レムデシビルをもっと早期に使うための方法として期待できると思った。

この薬剤が実際に使われるためには時間がかかるだろう。ただ、すでにある薬剤も、効果がわかっておればもっと使いやすくできる可能性を示した点は大きい。その上で、今回経験したような感染爆発に対応できる、治験のあり方も確定してほしい。そうでないと宝の持ち腐れになる。

いつまで自制が必要なのか不安な時に、科学に基づいてこのような取り組みをわかりやすく語ってくれる政府を国民は待っている。


  1. okazaki yoshihisa より:

    今回のパンデミックで、ワクチンとともに、外来で患者さんを治療する方法の開発が急務であることがよくわかった。
    Imp:
    東京は90%がデルタ株になったようで、しばらく“感染爆発”が続きそうです。
    外来治療薬の出現に期待します。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*