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2月2日 結節性硬化症は介在神経前駆細胞の腫瘍性増殖(1月28日号 Science 掲載論文)

2022年2月2日

Medical ganglionic eminenceと呼ばれる、脳室に突き出した領域から発生する介在神経分化を、組織学と脳の培養を組みあわせて研究した論文を、一昨日紹介した(https://aasj.jp/news/watch/18940)。このとき驚いたのは、介在神経前駆細胞(INP)がこの場所で、あたかも腫瘍のような塊を作り増殖し、その後様々な場所へ移動することだ。また、同じ腫瘍性増殖を、ヒトのINPをマウスに移植することでも再現できる。

このような腫瘍のような塊を作って増殖した後、様々な箇所へ移動する例で最もよく知られているのが、神経堤細胞が集まる鰓弓で、いくつかの塊にまずまとまった後、決められた場所へ移動していく。

同じようにganglionic eminence(GE)も3種類に分けられ、一昨日紹介したMGEは新皮質へ移動するが、生後も増殖を続けて皮質の介在神経を供給するのがCaudal GE(CGE)で、新生時期の介在神経異常を考える上で重要な集団になる。

今日紹介するオーストリア・分子生物工学研究所からの論文は、このCGEが、結節性硬化症のオリジンであることを示した、介在神経発生を考える上で重要な貢献で、1月28日号のScienceに掲載された。タイトルは「Amplification of human interneuron progenitors promotes brain tumors and neurological defects(人間の介在神経前駆細胞の増殖が脳腫瘍の形成と神経異常を誘導する)」だ。

タイトルにある結節性硬化症(TSC)は、てんかんや自閉症を伴う発生異常とともに、中枢神経に良性腫瘍が形成される多様な病気で、mTOR活性を抑える一種のガン抑制遺伝子TSC1、TSC2遺伝子が欠損によることが特定されている。

この研究ではTSC2が片方の染色体で欠損している患者さんから樹立したiPSを用いて試験管内でTSC異常を再現することを目指しているが、このときのコントロールとして、患者さんのiPSのTSC2遺伝子をクリスパーで正常化した細胞を作成し、遺伝子欠損株と比較している。

神経を誘導する培養を用いると100日ぐらいで両者に差が生まれ、遺伝子欠損株だけで腫瘍性の増殖が見られる。腫瘍の細胞由来を調べると、期待通り介在神経前駆細胞(ING)であることが分かるが、その中でもCGE由来で有ることが分かる。すなわち、介在神経前駆細胞は、いくつかの場所で増殖するが、そのうちcaudal ganglionic eminenceで増殖する介在神経だけが、TSC2欠損の影響を受け、腫瘍性の増殖を起こす。

次に腫瘍性の増殖のメカニズムを探り、腫瘍でよく起こるLOH(増殖中にもう片方の遺伝子も欠損すること)は腫瘍性増殖に必要ないこと、そしてCGEのINGが特にmTOR発現が亢進しやすいため、TSC2欠損で増殖しやすいことを示している。その結果、CGEのINGだけがTSCの原因細胞になることを示している。

そして、実際の患者さんの脳組織を、この結論から眺め直し、極めて複雑に見えた様々な異常も、CGE-ING異常増殖がTSCの原因であるという考えで全て説明がつくことを示している。

一昨日の論文とともに、介在神経の発生を考える上で極めて重要な貢献だと思う。合わせて自閉症の科学として紹介するとともに、ジャーナルクラブでも詳しく紹介したいと思っている。


  1. okazaki yoshihisa より:

    1:介在神経前駆細胞は、いくつかの場所で増殖する。
    2:そのうちcaudal ganglionic eminenceで増殖する介在神経だけが、TSC2欠損の影響を受け、腫瘍性の増殖を起こす。
    Imp:
    極めて複雑に見えた様々な異常の原因の一端が解明された。

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