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1月30日 強力な発ガン遺伝子として知られる転写因子MYCはRNAにも結合してRNA分解を促進する(1月22日 Cell オンライン掲載論文)

2026年1月30日
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このブログで何回も紹介してきたMYCは、様々な遺伝子の強力な転写の核として働き、ガン征圧にとっても最も重要な標的分子だが、エンハンサーに結合して転写を調節する以外の機能があるとは想像だにしなかった。

今日紹介するドイツビュルツブルグ大学からの論文は、同じMYCがRNAにも結合し転写が止まったRNAを分解して自然免疫の誘導を抑え、ガンを守る働きがあることを示す極めて面白い研究で、1月22日 Cell に掲載された。タイトルは「MYC binding to nascent RNA suppresses innate immune signaling by R-loop-derived RNA-DNA hybrids(MYCの転写されたばかりのRNAへの結合は、RNA-DNAループ形成による自然免疫刺激を抑制する)」だ。

1月25日に血液の観察からスタートした血小板の新しい活性化機構について紹介した論文もビュルツブルグ大学からだったが(https://aasj.jp/news/watch/28201 )、ドイツが地方大学も高いレベルが維持できているのは学ぶ必要があると思う。

この研究以前にもMYCがRNAに結合していることは知られていたようで、この研究ではタンパク質とRNAを結合させた後、MYCに結合しているRNAを詳しく調べ、染色体にまだ結合している出来たばかりのRNAで、このRNAの合成が止まったりするストレスでDNAからRNAに移行して、特にイントロン部分に結合することを生化学的に明らかにしている。

RNAに結合したMYCはDNAに結合する時のMYC/MAXのような二量体ではなく、いくつも集まってRNAに結合しており、このMYCに結合しているタンパク質を調べると、MYCがハブとなってRNA分解する様々な分子が複合体を作っていることがわかる。

この研究のハイライトは、このような生化学的結果に基づき、多重化が出来ないためRNA結合が出来なくなったMYC変異分子を作成したことで、これによりMYCのRNA結合の生理的機能を明らかにすることが可能になった。

膵臓ガン細胞株の内因性MYCを抑えて、正常型MYCあるいはRNAに結合できない変異MYC (mMYC) を発現させると、細胞の増殖は特に変化がなく、転写因子としてのMYCは機能していることがわかる。しかし、これをマウスに移植すると、mMYCを発現したガン細胞の増殖は強く抑制されることがわかった。即ち、増殖は問題ないがホストの免疫機能を誘導して増殖が抑えられる。

このメカニズムを探ると、mMYCではNFkBやインターフェロンシグナル等の自然免疫経路の抑制が起こらない。すなわちmMYCでRNA分解ができないと、自然免疫を調節するTBK1が活性化されたままになり、NfkBやインターフェロン経路が抑制できないためであることがわかった。

最後に核酸を感知するTLR3と核酸の結合を調べることで、mMYCはRNA自体の結合よりはRNAとDNAがペアリングした2重鎖の結合を阻害していることがわかった。すなわち、RNAループに結合して分解することで、TLR3を刺激するRNA-DNAハイブリッドの形成を阻害し、自然免疫を免れていることがわかった。

以上が結果で、MYCのRNA結合から始めて、自然免疫抑制機能まで、面白く納得のシナリオが生まれている。ビュルツブルグは実家のあった大津市と姉妹都市だが、この規模の都市にある大学からトップジャーナルに相次いで論文が採択される高い研究力が示されていることは、科学立国を目指す我が国も、この高い研究力を支える政策面を学ぶ必要があると思う。

  1. okazaki yoshihisa より:

    RNAループに結合して分解することで、TLR3を刺激するRNA-DNAハイブリッドの形成を阻害し、自然免疫を免れている。
    Imp:
    エンハンサーに結合して転写を調節する以外の機能発見!
    自然免疫の誘導を抑え、ガンを守る。

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