新しい年を迎えて、早速ホモサピエンスのシナイ半島への進出がこれまで考えられてきたよりもっと昔から始まっていたことを示す論文がテルアビブ大学を中心にした国際チームから発表された。イスラエルハイファのすぐ南、カメル山麓のMisliya洞窟から発掘された上顎が17−19万年前のホモ・サピエンス由来であることを示す研究で1月26日号のScienceに掲載された。タイトルは「The earliest modern humans outside Africa(アフリカを出た最も古い現生人類)」だ。
この研究では発掘された上顎の年代測定をいくつかの方法を組み合わせて17−19万年前と特定している。その上で、Misliyaで今回発掘した上顎骨、および歯の計測を行い、ネアンデルタール人、現生人類と比較して、骨の持ち主がネアンデルタール人か現生人類かを調べ、現生人類に属すると結論している。
一番大きな決め手は、上顎の形態で、すべてのネアンデルタール人の骨はMisliya人の骨とは大きく異なっていることを示している。また、一本一本の歯の形態を調べると、北アフリカで発見される更に古いホモサピエンスと比べて、ネアンデルタール人の形態より違いが大きいことも示している。以上のことから、この上顎はまさしくホモサピエンス由来だと結論している。
これが結果のすべてで、ホモサピエンスの出アフリカ(出エジプトとも言える)は20万年前にまでさかのぼれることになる。しかしこの研究で利用された主成分解析の条件では、確かにMisilyaの骨はネアンデルタール人からは大きく分離しているが、近くから発見されているQafzeh出土の骨とも違いが大きそうで、かなり独特の位置を占めているようにも見える。まだまだ、議論が続くように思える。
折しも昨日発表されたNatureの論文では、インドで38万年前にすでにイスラエルで見られる中石器時代の石器への転換が起こっていたことを示す研究が発表され、ホモサピエンス、ネアンデルタール、そして当時アジアに住んでいた人類との交流が早くから進んでいたことが示唆された。時期や、ルートをめぐっては今後も議論が続くと思うが、ホモサピエンスの出アフリカ研究から目が離せない。