2月7日:睡眠中に単語を覚えられるか(2月18日号Current Biology掲載論文)
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2月7日:睡眠中に単語を覚えられるか(2月18日号Current Biology掲載論文)

2019年2月7日
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この歳になって何かを学ぶということは、知りたいという自発的な意思に基づいているため、不思議と頭に入る。最近は学生の時に苦手だった、歴史的事実の年号すら覚えている自分に気がついて驚いてしまう。絶対的記憶力の落ちた現在の経験から振り返ってみると、学生の時のただ覚えるためにだけの勉強がいかに無駄なことかよくわかる。とはいえ、受験を控えた多くの学生さんたちは、一つでも頭に詰め込んでおきたいと思っているだろう。そんな人間の夢は、寝ている間に新しいことを覚える方法の開発ではないだろうか。ちょっと気になって「寝ている間に覚える」でウェッブを調べると、たしかに英単語をテープで流しながら寝ることで単語を覚えることができるというサイトがトップに来ている。これに対し、次に現れる有名学習企業のサイトでは、寝ている間に覚えようなどバカなことを考えずに、しっかり睡眠をとるように勧めている。

脳のことを知ると、どちらの意見にも一理あることがわかる。すなわち、睡眠は記憶を確定するために極めて重要で、実際寝ている時にさまざまな短期記憶を復習している。この時の脳波を調べると、slow wave sleep(SWS)と呼ばれるゆっくりしたリズムを刻んでおり、例えば夢を見たり、あるいは夢遊状態もSWSが特徴で、意識はないものの障害物を避けて歩けることから、覚醒時と同じような脳状態にあると考えられる。

今日紹介するスイス・ベルン大学からの論文はこの寝ているとも、起きているとも言える状態をうまく使って寝ている間に単語を覚えられないか調べた論文で2月18日号のCurrent Biologyに掲載された。タイトルは「Implicit Vocabulary Learning during Sleep Is Bound to Slow-Wave Peaks (睡眠中のはっきりとした語彙の学習はSlow Waveのピークに連結している)」だ。

この研究も新しい外国語の単語を学ぶという設定で記憶の成立を調べる課題を設計している。単語を覚えるという課題は、どの国でも共通のようだ。ただ、現実の外国語単語を使うと、個人差が出る心配があるので、全く存在しない単語を作っている。例えばコルク栓=aryl、 家=toferといった具合だ。そして、SWSの時を狙って、1秒感覚で、コルクという訳と、arylという新しい単語を聞かせ、その時に誘導される脳はの波形と単語を聞かせたタイミングを記録しておく。その後、覚醒時にarylやtoferが靴箱より大きいかどうかを聞く。新しい単語の意味を覚えておれば、aryl(コルク)は靴箱より小さく、tofer(家)は靴箱より大きいと答える。

ではこの課題で、本当に寝ている間に単語を覚えることができるのか?

結果だが、SWS時に音を聞くともちろん脳は反応して興奮波形が現れる。そのあともう一度覚える単語を聞くことになるが、この2回目に単語を聞いた時のの脳波がslow waveのピークと一致した時、正解率が高く、 逆に単語を聞いた時が波形の底に一致してしまうと正解率が落ちるという結果だ。

要するに、コルク vs aryl (あるいは逆でもいい)というセットを聞く時、2回目の刺激がslow waveのピークに来た時、寝ていても新しい単語を覚えることができるという結果だ。もしこれが正しければ、極めて敏感な脳波計を用いて、slow wave ピークの上がり始めを感知して単語を流すという機械を作れば、おそらく寝ている間の単語を覚えるという夢を実現できるかもしれないという話だ。

面白いし、本当かどうかさらに追求して欲しいとは思うが、年寄からのアドバイスは「そこまでして物を覚える必要はない」だ。

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