9月29日 血清アミロイドはビタミンAを白血球へ受け渡す機能を通して腸管免疫を調節する(9月17日号 Science 掲載論文)
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9月29日 血清アミロイドはビタミンAを白血球へ受け渡す機能を通して腸管免疫を調節する(9月17日号 Science 掲載論文)

2021年9月29日
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セグメント細胞と呼ばれる上皮への接着性が高いバクテリアが、腸管上皮の血清アミロイドを誘導し、腸のTh17細胞のエフェクター機能を活性化することは、慶応大学の本田さんや、米国のLittmanらにより明らかにされた、この分野では重要な発見だ。

SAAは小腸から吸収される脂溶性ビタミンの一つ、ビタミンA結合分子と知られており、おそらくSAAはビタミンAを介して、免疫系に作用するのではと考えられていたが、詳しいメカニズムは解析できていなかった。

今日紹介するテキサス大学からの論文は、SAAの受容体LRP1を特定し、これに結合したSAAにより受け渡されたビタミンAが、白血球内でレチノイン酸に変換され、このレチノイン酸がリンパ球の分化やホーミングを誘導することを明らかにした研究で、9月17日号のScienceに掲載された。タイトルは「Serum amyloid A delivers retinol to intestinal myeloid cells to promote adaptive immunity(血清アミロイドAはレチノールを白血球に届け獲得免疫を促進する)」だ。

SAAの免疫系への作用が解析できていなかった最大の理由は、SAA+ビタミンAに結合する受容体が特定されていなかったためだ。この研究では、まずクロスリンカーを用いてSAAと受容体を共有結合させ、受容体を精製する手法を用いて、LDl受容体ファミリー分子の一つLRP1がこの受容体であること、さらにSAAに結合したビタミンAはLRP1発現細胞に多く伝達されることを示している。

小腸内でLRP1の発現が最も高いのはCD11陽性白血球細胞だが、他のマクロファージやリンパ球も少し低いレベルではあるが発現が認められる。そして、LRP1にSAAが結合すると、ファゴゾームに取り込まれてCD11陽性細胞へ受け渡され、そこでレチノイン酸へと転換される。事実、CD11陽性細胞では、SAA-LRP1結合により、レチノールからレチノイン酸合成に関わる酵素系が誘導されることも明らかにしている。

後は細胞特異的、SAAノックアウト、あるいはLRP1ノックアウトマウスを用いて、この経路が遮断する実験を行い、これまで示されていたように、Th17細胞のエフェクター機能の増強、B細胞、CD4T細胞の小腸組織へのホーミングも高まることを示している。

そして最後に、サルモネラ感染実験系で、サルモネラ死菌の腸管投与による免疫がLrp1ノックアウトでは成立しにくいことを示し、これまでSAAの機能として知られていた現象が、ビタミンAの受け渡しを介して行われていることを明らかにした。

この論文では、CD11陽性細胞でレチノイン酸が合成され、これがリンパ球に働くと考えているようだが、低いとはいえ、リンパ球にもLRP1が発現していることを考えると、SAAが直接他の細胞に結合していることも十分考えられると思う。いずれにせよ、腸内免疫に関わる分子過程が着々と明らかになっていることを実感する。

カテゴリ:論文ウォッチ