11月24日 驚く対比: sotrovimabと回復者血清の初期covid-19進行抑止効果 (11月18日号 The New England Journal of Medicine 掲載論文)
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11月24日 驚く対比: sotrovimabと回復者血清の初期covid-19進行抑止効果 (11月18日号 The New England Journal of Medicine 掲載論文)

2021年11月24日
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ヨーロッパで再感染の大きな波が来ているようだが、コストを度外視すると、感染初期のロジカルな治療手段がそろってきているので、状況は大きく改善していると言える(もちろん薬剤の供給という面は感染者が多いと問題になるが)。その筆頭が、第五波で我が国もその効果を実感したモノクローナル抗体療法だが、その後メルクが開発した核酸アナログのモルヌピラビル、そしてファイザーからcovid-19のMain Proteaseに対する阻害剤が認可され、おそらく塩野義製薬の同じMain Protease阻害剤も続こうとしている。これらの薬剤は、ワクチンによる免疫にかかわらず、ブレークスルー感染にも使用可能だ。感染者全てに投与というのは非現実的なので、これらをどう標準治療に組み入れるのかが、covid-19を抑制する鍵になるだろう。

今や誰もが知っている抗体療法だが、中でも玄人受けするのが、GSKのsotrovimabだろう。まずspikeとACE2の結合サイトを直接狙うのではなく、その横のSARS型コロナウイルスで保存された場所に結合してスパイクのダイナミズムを抑え、感染を抑止する。さらに、元々SARS患者さんから分離された抗体を使っている点でも、SARS型であれば、今後予想されるスパイク変異株にも対応できる。そして、十分時間をかけて開発され、Fc部分に突然変異を導入して、体内での抗体半減期を延ばし、しかもFcにより肺への移行を高めている。

このsotrovimabを発症後5日以内の患者さんに使って、病気の進行を止める治験の結果が11月18日号のThe New England Journal of Medicineに掲載された。タイトルは「Early Treatment for Covid-19 with SARS-CoV-2 Neutralizing Antibody Sotrovimab(SARS-CoV2中和活性を持つSotrobimab のCovid-19 初期感染治療)」だ。

この研究は感染が確定した患者さんの中から、発症5日以内の症例を探し出し、そのまま無作為化し、sotrovimab 500mgを静注、入院や死亡を防げるかどうかに絞って調べている。このとき、55歳以上で、BMI30以上、また何らかの基礎疾患があるいわゆるハイリスクグループを対象にしている。

結果は期待通りで、sotrovimab投与群では3人が入院、一方偽薬群では21人と、ほぼ7倍の入院率だった。3人入院したが、重症化してICU治療を受けたのは0人、一方偽薬群は5人だった。

500mgは筋肉注射可能なので、今後外来治療に移行させる可能性大の結果だ。

ただ、今日紹介したいのはこの論文ではなく、同じ号のThe New England Journal of Medicineに掲載されていたピッツバーグ大学を中心とする、回復者血清をcovid-19初期治療に使う治験で、タイトルは「Early Convalescent Plasma for High-Risk Outpatients with Covid-19 (初期Covid-19ハイリスク外来患者さんに対する回復者血清治療)」だ。

この治験も感染初期のハイリスク患者さんに抗体治療を行うという点では同じだ。ただ、この研究では発症後7日目までの患者さんをリクルートしており、GSKの治験と比べると2日遅い。

抗体については中和活性が十分あるという患者さん血清を用いている。結果の評価は15日時点で入院が必要だったかを指標にしている。

まず、発症後2日の違いが大きいことがわかる。すなわち、sotrovimab治験で偽薬群が入院した確率は7%だったのに対し、この治験での偽薬群の入院率は30%に達している。

そして最も驚くのが、回復者血清投与群での入院率が32%と、全く治療効果がないという結果だ。

発症後2日という違いがあるので、完全な比較は難しい。しかし、少なくとも試験管内で感染を防ぐ抗体を十分含み、原理的にウイルス感染を防ぐことができる回復者血清が全く効果がなかったという結果には驚く。

もちろん、今後の治療オプションにならないことが明確になるとともに、科学的知見の重要性が再認識されたが、原理的に効くはずの抗体がなぜ全く効かないのか、良く原因を理解することが重要になる。

よくデザインされたモノクローナル抗体を使ったことがこの差を生み出すのか、他の原因なのか、今後のためにも重要な課題がまた一つ生まれた。

カテゴリ:論文ウォッチ