7月15日 大都市のマラリア流行に関わるステファンスハマダラカの移動(7月9日 Science 掲載論文)
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7月15日 大都市のマラリア流行に関わるステファンスハマダラカの移動(7月9日 Science 掲載論文)

2026年7月15日
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マラリアの流行は医学に残された課題だが、通常は田舎に棲息するハマダラカによる感染なので、これを撲滅する努力が、マラリアの治療や予防開発とともに行われてきた。この論文を読むまで全く知らなかったが、これまでの努力が無駄になるほどの危険が、都会に適応したステファンスハマダラカのアフリカでの拡大によりもたらされているようだ。ステファンスハマダラカ (A.s) は、都会の貯水槽などに適応しただけでなく、多くの殺虫剤に抵抗性を持っており、これまで比較的マラリアの流行が低かった都会での大流行の原因になりつつある。

今日紹介するリバプール熱帯医学校からの論文は、アジアからアフリカにかけて集められた A.s のゲノムを調べ、A.s の伝搬ルートを探り、また薬剤耐性の出現過程についても調べた研究で、7月9日号の Science に掲載された。タイトルは「The origin, history, and resistance architecture of an invasive urban malaria mosquito in Africa(アフリカで広がってきた都会のマラリアを媒介する蚊の起原、歴史、そして殺虫剤抵抗性の構造)」だ。

まさにガンのゲノム研究と同じで、様々な地域の A.s ゲノムを解読し、その起原や伝搬の様態を調べている。もちろん昆虫学や疫学的に既に A.s の伝搬についてはかなり詳しいレポートが存在し、アフリカでは最初2012年にジプチで発見され、その後北のスーダンで2016年、南のエチオピアで2016年、ソマリアで2019年、ケニアで2023年発見されている。

それぞれの地域の A.s の系統樹を作成すると、アフリカの A.s は全て、インド・アフガニスタンの都会で流行した A.s に由来することがわかる。おもしろいのは同じ起原の A.s はイランからサウジアラビアの都会へと伝搬しているが、このルートはアフリカへは到達していない。アラビア砂漠の南には大都市がほとんどなく、砂漠も大きなバリアとして機能したと考えられる。

そして、エチオピア、ケニアなどへ伝搬した A.s はジブチに上陸した A.s が起原となっていることがわかった。それぞれの地域の A.s の多様性から、南インドの A.s の一部が、おそらく船に乗ってジブチに到達し、そこから南に広がっていた経緯がわかる。即ち、アフリカに到達し、ケニヤに至るまでの間に、ゲノムの多様性が失われているのがわかる。即ちおそらく船に乗ってわたったほんの少数の A.s から現在の集団が繁殖しており、他からの遺伝子流入がないことがわかる。エチオピアの高地には全く認められないことから、ジブチから海岸線に沿ってソマリア、ケニアと広がっている。また、南だけでなく、北のアラビア半島イエメンにもジブチをハブにして伝搬している。

おもしろいのはスーダンで繁殖している A.s は、エチオピア、ソマリア、ケニアで繁殖している系統とは離れており、別のルートで運ばれてきたことがわかる。

次に A.s の殺虫剤耐性を支える遺伝子を探索し、一つの抵抗遺伝子で殺虫剤耐性が獲得されたわけではなく、いくつかの遺伝子セットが集まることで、代謝システムがリプログラムされることで、殺虫剤の耐性が形成されていることを明らかにしている。そして、この耐性遺伝子セットはインドで流行している多様な A.s に存在し、アフリカへの伝搬の過程で、遺伝子のコピー数が増えた A.s が強く選択されていることが示されている。

結果は以上で、20年程度の間に起こった、A.sの進化と伝搬の物語が、ゲノムにより詳しく語られるようになっている。読んでいて、ガンのゲノム研究とほとんど違いがないこともよくわかった。

カテゴリ:論文ウォッチ
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