2026年7月21日
細胞レベルでも、臓器レベルでも古くなった分子や細胞を新しいものに置き換えることが生命にとって必須の過程だ。この過程の異常は老化の重要問題として研究されてきた。まずリクルートする側、即ち幹細胞から分化した細胞の供給が老化で低下することは、だれもが感じる。さらに、最近では老化した細胞を速やかに除去できないと、臓器や個体全体の老化が促進されることが示され、死にかけの細胞の処理を速めるセノリシスによって老化を食い止める方法の開発が進んでいる。ただ最近様々な治験結果が出てきて、人間でセノリシスが老化を抑えるという仮説については再検討が必要なようだ。
今日紹介するスタンフォード大学からの論文は、古くなった細胞を処理する機構を高めて老化を防ぐという点ではセノリシスのアイデアに似ているのだが、処理される細胞が好中球に限られており、古くなった好中球が臓器に溜まると障害を起こすが、これが臓器老化の一因であることを示す研究で、7月16日 Science に掲載された。タイトルは「Restored clearance of senescent neutrophils by tissue-resident macrophages limits organ aging(老化した好中球の除去機能を組織で回復させると臓器の老化を抑制できる)」だ。
この論文はおもしろいというより、老化という定義の難しい言葉を使ってしまうことの問題を認識させる論文だとおもい紹介することにした。肝臓のクーパー細胞、脳のグリア細胞など、組織内で再生して機能するマクロファージは、tissue resident macrophage (TRM) として知られている。
この研究に至ったいきさつはわからないが、まず TRM 特異的にプロスタグランディンE2受容体 (EP2) をノックアウトするところから研究が始まっている。TRM とそれ以外のマクロファージを区別することはそう簡単ではないので、完全に TRM 特異的 KO とは言えないが、TRM での発現レベルが半分以下になるマウスを作成して、肝臓、肺、脳で TRM を調べている。TRM は老化とともに数が低下するが、EP2-KO ではこの低下が抑制される。
特に自然炎症や免疫に関わる遺伝子発現を見ると、老化 TRM で上昇傾向が見られるが、これが EP2-KO で元に戻る。これは、肝臓や肺だけでなく、腸、心臓、腎臓でも見ることができる。大事なのは、その結果で老化に伴う脳の認知機能低下が防がれ、四肢筋肉が強くなり、心筋の強度も高まる。実際に TRM の数の低下は2-3割程度で、それが9割ほど元に戻るだけなのだが、臓器機能への効果は意外に高い。
この原因を single cell RNA sequencing で調べると、老化によるTRM の減少に呼応して、老化した好中球や、細胞死の途中の好中球が処理されずに溜まってきていることがわかる。それだけでなく、溜まった死にかけ、あるいは細胞死細胞から炎症性サイトカインが放出され、NETosis と呼ばれる核酸の排出まで起こっている。ところが、PE をノックアウトすると、これらの異常がほとんど正常化することがわかった。このように、死にかけの好中球を処理することをエフェロサイトーシスと呼ぶが、老化に伴い TRM の数が減るだけでなく、エフェロサイトーシス機能が低下し、その結果死にかけの好中球から炎症物質が出て臓器を傷害する。
老化に伴う TRM のエフェロサイトーシス機能低下は、細胞をマクロファージが取り込むときに必要なインテグリンなどの発現異常によっており、EP2-KO でこれら機能分子の転写調節に関わる分子の発現が活性化されることで、エフェロサイトーシスが正常化することも示している。またノックアウトだけではなく、EP2 機能を阻害する化合物を2ヶ月投与する実験で、肝臓や脾臓で老化とともに上昇してくる死にかけの好中球の数を、化合物により低下させられることも示している。
最後に、人間の肝臓の single cell RNA sequencing データベースから、人間でも老化に伴い死にかけの好中球が増加し、炎症性サイトカインの分泌も高まっており、マウスと同じ状態が起こっていることを示している。
結果は以上で、元々プロスタグ TRM を減らし、マクロファージのエフェロサイトーシス機能を落としてしまう結果、死にかけの好中球が臓器に溜まることで、逆に炎症が起こるという結論だ。そして、EP2 機能を抑えることで、老化を防げるという結論になっている
しかし、これを老化と言っていいのかわからない。EP2 も若い段階では炎症が高まらないよう重要な機能を果たしている。しかしこの論文では追求し切れていない、年齢による影響により TRM 特異的に思いがけないサイクルが始まり、この時 EP2 のような炎症を抑える分子が逆に炎症を高め、臓器が傷害されるという話だ。これを老化と一言でまとめていいのか、そして EP2 阻害を若返りの薬と言っていいのか、個人的には違っているような気がする。
2026年7月20日
ガンのゲノム解析の重要性は言うまでもないが、RNAの発現や免疫染色も重要だ。例えば私のガンの場合、発現が高い遺伝子としてアンドロゲン受容体とその下流分子が見つかるし、乳ガンで最も研究が進んでいる Her2 とそのファミリー分子も発現している。とすると、状況によっては変異はなくてもこれら分子を標的として使うことができる。
Her2 を標的に使う治療として最近大成功を収めているのが Her2 抗体にトポイソメラーゼ阻害剤や、微小関係性阻害剤を結合させた ADC 治療だ。もちろん抗体が結合する必要があるので、Her2 の発現が高い必要があるが、第一三共のエンハーツは Her2 発現が低い場合も一定の効果があることを証明し、この薬剤の宣伝文句になっている希望を生み出している。しかし、エンハーツでも Her2 の発現が高い方が効果は高い。
今日紹介するワシントン大学からの論文は、エンハーツや同じ Her2 抗体に微小管阻害剤を結合させたカドサイラを、高い確率で Her2 と同時に発現している EGFR を利用することでリソゾームへの取り込みを高めて、Her2 の低い場合でも効果を高める方法の開発で、7月15日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは、「Modular in vivo antibody–ADC click to reverse drug resistance in tumours(抗体とADCを生体内で組み合わせるクリックを用いて腫瘍の薬剤耐性を抑える)」だ。
私の場合もそうだが、Her2 発現のガンは EGFR も発現していることが多い。エンハーツもカドサイラも Her2 に結合して細胞内に取り込まれて薬剤が外れるので、Her2 の発現が多い方が良いし、また細胞内に取り込まれることも重要になる。この時、EGFR が Her2 と結合すると、Her2 の細胞内への取り込みを抑えることがある。
そこでこの邪魔な EGFR を薬剤を取り込みヘルパーにしようと考えたのがこの研究だ。方法だが、EGFR に対する抗体と、ADC (エンハーツやカドサイラ) に、生体内でそれぞれの抗体を結合させることが出来るクリックと呼ばれている小分子を結合させる。まず、EGFR に対する抗体を投与した後、クリック結合可能な ADC を投与すると、EGFR と Her2 を発現するガン細胞上で複合体が形成され、Her2 だけでなく EGFR によっても細胞内へ取り込まれることが期待できる。
試験管内でこの可能性を確かめた後、クリックADC をアイソトープラベルしてマウスに投与すると、クリックで結合可能な EGFR を前もって投与していた群のみ、腫瘍内へのアイソトープの取り込みが高まる。これを Her2 の発現が高いガンで確認した後、今度はHer2の発現が極めて低いエンハーツだけでは効果が低いガンで調べると、ADC がガンに効率よく取り込まれ、単独治療よりはるかに強いガン抑制効果を得ることができる。
さらに、EGFR の発現が高まった結果 ADC が効かなくなったガンに対するクリックADC の効果を調べ、クリック・エンハーツがほぼ完全に腫瘍を抑制できることを示している。
最後により安定なクリック化合物の抗体への結合方法として、抗体や ADC の糖鎖にクリック化合物を投与する方法を開発し、これにより極めて均質にクリック化合物が結合した EGFR 抗体と、ADC の組み合わせを作れること、これを用いてエンハーツだけでは効果がなくなった膵臓ガンや乳ガン細胞の増殖を抑制できることを示している。
以上が結果で、Her2 が ultralow でも EGFR が発現しておればガンを強く抑制できると言う結果は、私たちの希望になることは間違いないが、しかし正常細胞にも Her2-lowEGFRhig は存在するので、ヒトでの治験が待たれる。さらに、この結果はこのようなクリックの利用による2種類の抗体を結合させることで、これまで難しかった多くのガンをたたける可能性を秘めている。期待したい。
2026年7月19日
タンパク質のデザインに AI が使われるのは珍しくもなんともない。しかし AI の専門家ではない生命科学の大御所が AI を利用した論文は、なかなか味がある。例えばエピジェネティックス研究の大家 Richar Young が ESM2 を利用してタンパク質の細胞局在を予測する方法の開発(ProtGPS: https://aasj.jp/news/watch/26318)では、大御所ならではの明確な研究目的の設定など、生成 AI もプロが使うようになるとさらに大きな発展があることを予感させた。
今日紹介するのは遺伝子編集の大御所中の大御所 Doudna さんが、コンパクトな遺伝子編集分子を AI を用いてデザインした論文で、AI と専門知識の共同することの重要性を見事に示した研究で、7月16日 Science に掲載された。タイトルは「Structure and evolution-guided design of minimal RNA-guided nucleases(最小限のRNAガイドによるヌクレアーゼを構造と進化をベースにデザインする)」だ。
遺伝子編集には細胞への導入効率の点で、遺伝子をできるだけ小さくすることが重要になる。この点で、Doudna さんたちが開発してきた CRISPR/Cas システムより小型のシステムとして、Cas12 の祖先筋のトランスポゾン TnpB が注目されている。この研究の目的は、現存する TnpB を人工的にデザインしてより小さな RNA/DNA 配列を認識して遺伝子を切断する人工酵素を作ることだ。
これまでの生命科学では、これを実現するため既存の TnpB に変異や欠損をランダムに導入する人工進化システムが使われていたが、この役目を生成AIにやらせて見ようというのが今回の研究だ。現存の生命のゲノムに残っている進化経路以外にも、多くの潜在的進化経路が存在し、それを生成 AI が確率空間として表現しているとすると、Doudna さんが AI を利用しようとするのも当然の成り行きだ。
このために彼女が選んだ AI が ESM-IF と呼ばれる2022年に開発されたモデルで、タンパク質の構造を入力すると、アミノ酸配列が出力されるというアルファフォールドの逆モデルだ。おそらく、TnpB や Cas の構造を熟知した Doudna さんならではの選択に思える。
ただ使ってみると、Doudna さんの期待は裏切られ、彼女がこの分子の機能に最も重要と考えるアミノ酸まで自由に変えたアウトプットが出てくることに気づいた。そこで、構造だけでなく、実際に進化過程で保存されたアミノ酸部位を条件として与えて、この制限の範囲内で自由に設計できる方法を考えた。実際には、TnpB としての保存度 (Co) と、TnpB が様々な配列の RNA や DNA に合わせて共進化する coupling strength をσとして、この閾値を研究者が決めることで設計の自由度を制限する方法を開発した。この coupling strength 等はまさに遺伝子編集分子を熟知した Doudna さんならではの境地だと思う。
さらに、RNA/DNA 結合ドメインとヌクレアーゼドメインを一体としてデザインさせると、相互に作用し合って設計が難しくなることを考慮して、それぞれのドメインの設計を、実際の TnpB の持つもう一つのドメインと結合させて制限するインプットで行わせ、現存する TnpB と比べて72-83%という多様性を持つ人工 TnpB を生成させることに成功している。ここにも専門家の視点が生きている。
こうして生成した TnpB の機能はバクテリアの生存としてチェックできるので1万個を超えるアウトプットでも評価が可能で、最終的に実際の TnpB と同じかそれ以上の編集効率を持つ9種類の人工 TnpB の設計に成功している。
この人工 TnpB を用いてヒト腎臓細胞株での遺伝子編集効率を、実際の TnpB と比べ、条件によっては5倍以上の効率で働くことを明らかにしている。その上で、何故人工 TnpB で効率が高いかをクライオ電顕で構造比較し、新しくデザインされた分子では、より核酸との結合が安定化するアミノ酸が導入されていること、さらに TnpB の進化過程では捨ててしまった TAM-結合部位が復活していることを発見する。まさに、進化可能性の潜在空間から新しい分子を生成出来ることを見事に示した。
結果は以上で、Doudna さんの脳という遺伝子編集知識の集大成が、ESM-IF の足りない点を補うことで、それぞれでは難しい課題が解決されたことが示された素晴らしい研究だ思う。このようにトップ研究者ほど AI を生かし、新しいモデルも開発できることを考えると、ただ闇雲に AI 研究者を生命科学に動員すればいいという話ではないことがわかる。まさに、それぞれの研究現場で利用のためのチャレンジを進めることが重要なのだ。
とは言え、Doudna さんの頭の中にしまわれている遺伝子編集分子の構造や進化の知識を、将来 AI に置き換えることも可能だろう。例えば原核生物の進化潜在空間を学習した Evo1 などを ESM-IF と組み合わせることで、専門家以外にも課題解決が可能になると確信する。しかしそのためにも、AI と専門家の共同が重要だと認識した。
2026年7月18日
利根川先生の訃報を聞いたので、新しく Science に掲載されていたカロリンスカ研究所から発表されたγδT細胞を刺激する自己分子の話を取り上げることにした。
大学卒業後、免疫学から始めたので、利根川先生についての思い出は多い。最初はまだ研修医の頃、京都大学胸部疾患研究所の会議室で、凱旋帰国した利根川先生の免疫グロブリン再構成の可能性についてセミナーが行われ、同級生の武藤君と聞きに行った。まだ southern blotting と言う時代ですらなく、DNAの会合・再会合を調べる Cot 解析で、リンパ球のDNAが生殖細胞と異なることを示した話だった。
その後1980年に留学した時は、ちょうど MIT に移られる頃だったが、バーゼル研の利根川研で夜昼なく働いていた同世代の黒沢さん、坂野さんと知り合いになり、帰国後も付き合いは続いた。バーゼル研での利根川さんの様々な逸話は彼らから聞かされたので、いつか彼らの口から語られるのを待とう。
免疫グロブリンの研究は1970年代の話だが、1980年当時はT細胞受容体遺伝子を明らかにすることだった。T細胞受容体遺伝子をだれが最初に明らかにするのか、当然利根川先生が本命と考えられていた。ところが京都で行われた免疫学会が最初だったと思うが、全くダークホースと言える Mark Davis や Tak Mak が T細胞受容体遺伝子のクローニングに成功した。
この競争の中でもう一つ明らかになったのが、全く新しいγδT細胞で、通常の αβTCR遺伝子とは異なるγδTCR遺伝子を再構成して表現するおもしろい T細胞で、最初に利根川先生により報告された。そんな訳で、γδT細胞とノーベル賞のカロリンスカ研究所が利根川先生と結びつき、この論文を紹介することになった。
利根川先生の発見以来40年以上経つが、この細胞についての謎は多い。中でも、いくつかのγδT細胞が胸腺で自己分子に選択され、Th1T細胞へ分化するという発見だ。とはいえ、ほとんどのγδV遺伝子組み合わせに対応する自己分子はほとんどわかっていない。その中で、なんと炎症に関わる IL-17受容体を新しいγδT細胞刺激自己分子として発見したのがこの研究で、7月16日 Science に掲載された。タイトルは「Direct interaction of Vδ7 TCRs with IL17RA drives the differentiation of TH 1-like γδT cells(Vδ7TCRとIL17RAの直接相互作用がTH1様γδT細胞の分化を誘導する)」だ。
この研究では胸腺から樹立した細胞に反応する TCR を探索し、調べたほとんどの TCR を刺激する胸腺リンパ腫細胞を発見する。即ち、自己分子がいくつかのセットのγδTCRと反応する。次に反応している分子を特定するため、この細胞の遺伝子をクローニング、その中から TCR を刺激する分子を探索して、IL17RA分子を特定する。
次に、IL17RA分子をラベルして、これに結合する T細胞を集め、その TCR遺伝子を調べると、全て例外なく Vδ7 を発現しており、γの方は Vγ4 か Vγ1 である事がわかった。おもしろいのは、Vδも再構成部位には多くの変異が入っており、これが IL17RA との結合多様性に関わる点だ。おそらく、CD3領域の変異は分化後に導入されていると思うので、今後この変異の起こり方の理解が重要な課題になると思う。
ただこの研究では機能より、IL17RA と Vδ7 の結合に関わる部位、及びこのT細胞の発生に焦点を当てて研究している。構造的には CDR2 を挟む FR2、FR3 領域が直接 IL17RA に結合する。即ち、例えば HLA のような抗原を提示する分子は全く必要がなく、直接結合する。
多くのγδT細胞は腸管に分布するが、このタイプはほとんど脾臓やリンパ節に存在し、ほとんどが TH1 型の遺伝子発現を示す。そこで、γ4δ7TCR を持つトランスジェニックマウスを作成し、IL17RA抗原を発現するマウスと掛け合わせると、このタイプの T細胞が胸腺の CD4-CD8-細胞段階から発現し、ここで IL-17RA と反応して TH1 への分化のシグナルが入り、末梢へと移動することを明らかにしている。この過程は、IL-17RA のノックアウトされたマウスでは起こらず、またγ4δ7T細胞の増殖も起こらない。即ち胸腺のポジティブセレクションを IL17RA が誘導し、そのまま TH1細胞へと分化させている。
結果は以上で、自然炎症に重要な IL-17RA がγδT細胞を誘導する自己分子として働いているという驚くべき結果だが、何故このようなγδT細胞系が存在するのか、あるいは人間にも存在するのか、そしてその機能は何か、等まだまだ謎は続く、
2026年7月17日
今日はどちらも Nature Medicine に掲載されていたアルツハイマー病 (AD) についての臨床研究を紹介する。
最初のワシントン大学からの論文は 環状 RNA を用いて AD のステージについての正確な診断を行う試みで、7月1日にオンライン掲載された。タイトルは「Blood-based circular RNAs for early diagnosis of Alzheimer’s disease(血中の 環状 RNA はアルツハイマー病の初期診断に使える)」だ。
これまで症状の出る前から AD のリスクを判定できる血中マーカーとして pTau217 が開発され、広く使われるようになった。ただ、アミロイド沈着に依存するため、抗体治療でアミロイドが除去されると病気のモニターに使えなくなる。この研究では神経細胞由来の RNA 、とりわけ血中で安定な 環状 RNA を用いてAβや Tau の治療にかかわらず診断が出来ないか、500人近くの AD のコホート研究サンプルを用いてチャレンジしている。
結果、主に脳で発現している mRNA がスプライシングを受ける際に発生する34種類の 環状 RNA の量を組み合わせた指標を開発し、この指標が アミロイドPET 等の他の検査と比べても、AD リスクや病態と相関する検査になることを示している。pTau217 と組み合わせて使うと、AUC で0.931と言う高い特異性で アミロイドPET 陽性の患者さんを発見できることを示している。最初、神経が損傷されて 環状 RNA が出てくるから神経変性疾患の間で特異性がないのではと思ったが、なんと AD 特異的で、逆に言うと他の神経変性疾患でも同じようなマーカーを開発できる可能性がある。
環状RNA は認知症が始まる2年前から陽性になり、この数値は予後と強く相関する。更には胃や胃段階から上昇する pTau217 と比べるとその精度は一段と上がる。
以上が結果で、ここでは検討されていないが、アミロイド抗体を用いた治療群を調べると、検査としての重要性がより明確に示されると思う。実際にはシークエンスベースで行っているが、簡易検査として確立することを期待している。
次は米国の Immunobrain Checkpoint Inc という会社と、イスラエルワイスマン研究所などからの論文は、軽度認知を示す AD 患者さんの進行を、ガンのチェックポイント治療に用いられる PD-L1 抗体を用いて抑える第一相の治験で、7月15日にオンライン掲載されている。タイトルは「Immunotherapy with a short-lived anti-PD-L1 antibody in Alzheimer’s disease: a phase 1b, randomized, double-blind trial(半減期の短い anti-PD-L1 を用いたアルツハイマー病の免疫治療:無作為化、2重盲検第一相b治験)」だ。
AD にチェックポイント治療を行う理由は、高齢のAD患者さんでは免疫機能が低下しており、ミクログリアなどの活性が低下して異常が拡大する傾向にあると考えているからだ。これは年齢とともに自然炎症が亢進することが AD のリスクになるとする考えの真逆になる。ただ、チェックポイントは獲得免疫の話なので、自然炎症とは別に獲得免疫が AD の進行を抑えているという前臨床研究が行われてきたのだと思うが、全く把握しておらず、こんな治験が始まっているのかと正直驚いた。
とは言え、ガンに使う抗体とは異なり、わざわざ半減期が短い抗体を設計し、しかも12週に1回と、かなりの間隔を空けて注射している。ただ投与量は30mg/kg と多く、例えば PD1 抗体は3mg/kgで使うことを思うと、短い期間免疫疲弊を戻すという方法だ。
結果だが、量は多くとも、間隔が短く半減期も短いので、通常のチェックポイントよりはるかに副作用は少なく、一番重い副作用として自覚症状のない肝機能低下が挙げられている。また、薬剤動態だが4日で抗体価が半減している。
効果だが、活性化T細胞が投与後1週間をピークに末梢血に出現し、免疫反応では期待の効果を上げている。そして、AD のバイオマーカーとしての脊髄液中の neurogranin、tTau。pTau の量は低下している。症状については、ほぼ一年の経過観察でホトンの大きな変化がないという結果だ。
なんとなく効いてそうな感じだが、軽度認知症を対象にAβ抗体を選ぶのか、PD-L1を選ぶのか、もっと大規模な第2相、第3相の結果待ちになる。いずれにせよ、ADも搦め手からの治療法はまだまだありそうだ。
2026年7月16日
パーキンソン病 (PD) はドーパミン分泌細胞が失われることで起こるため、特有の運動障害については Lドーパを服用してドーパミンを補充することが最初の治療になる。ただ、長期に Lドーパを続けると、薬剤が効いている on の時期に不随意運動が起こるディスキネジアと薬剤の濃度が低下した off の時期に PD の強い運動障害が現れるという問題がある。この問題に対する対症療法がないわけでないが、副作用のせいで使用は限定される。
今日紹介するトロントにあるバイオテクベンチャー Sinopia Bioscience からの論文は、パーキンソン動物モデルで Lドーパ服用時にドーパミン受容体を発現した細胞に起こる遺伝子発現変化から、Lドーパによる運動障害を改善する薬剤を開発した研究で、7月15日 Science Translational Medicine に掲載された。タイトルは「A small molecule reduces both parkinsonism and l-dopa–induced dyskinesia in animal models of Parkinson’s disease(動物のパーキンソン病モデルの症状とLドーパによるディスキネジアを改善する化合物)」だ。
Lドーパを服用すると、D1ドーパミン受容体を発現する細胞が刺激され、これにより PD の運動障害が改善するが、D2 受容体を発現する細胞も同時に刺激され、ディスキネジアが起こる。それぞれの神経に Lドーパ服用による変化を調べ、Lドーパによる PD 運動障害改善と相関する分子、逆に Lドーパによるディスキネジアと相関する分子を特定し、PD 運動障害改善の遺伝子発現パターンを阻害せず、ディスキネジアを阻害する化合物を、in silico で探索し、最終的に狭心症に用いられてきた血管拡張剤 trapidil (SB0107) がこの目的に合致することを発見する。
次に SB0107 の生化学的作用点を探索し、SB0107 が PKA-II の活性を高める作用があることを発見し、また構造学的に SB0107 の結合部位を特定している。即ち細胞内で MAP キナーゼ経路を活性化することで、ドーパミン作用をミミックし、ディスキネジアに必要な分子経路を抑えている。
あとは、マカクザルの PD モデルで Lドーパ投与時に SB0170 が Lドーパ服用の問題を抑えてくれるか調べている。結果は、Lドーパによる運動機能改善作用を阻害することなく、また場合によってはさらに改善しつつ、ディスキネジアの発生を強く抑制することがわかった。さらに、PD が進むと起こる認知障害にもある程度の効果が認められることを明らかにしている。
結果は以上で、これまでの薬剤と異なり、狭心症治療薬として50年近い使用の歴史がある薬剤が見つかったことで、PKA-II 活性の促進剤とは言え、副作用の問題は少ないと考えられる。SB0107 ベースに体内動態を改善した化合物も得られており、是非治験へとす済んでほしいと思う。PD については根治治療が徐々に視野に入ってきている。しかし、患者さんの数を考えると、新しい治療に全員がアクセスできるわけではない。とすると、新しい治療を待つまでの間、高い生活の質を保証できる薬剤の開発は重要だ。
2026年7月15日
マラリアの流行は医学に残された課題だが、通常は田舎に棲息するハマダラカによる感染なので、これを撲滅する努力が、マラリアの治療や予防開発とともに行われてきた。この論文を読むまで全く知らなかったが、これまでの努力が無駄になるほどの危険が、都会に適応したステファンスハマダラカのアフリカでの拡大によりもたらされているようだ。ステファンスハマダラカ (A.s) は、都会の貯水槽などに適応しただけでなく、多くの殺虫剤に抵抗性を持っており、これまで比較的マラリアの流行が低かった都会での大流行の原因になりつつある。
今日紹介するリバプール熱帯医学校からの論文は、アジアからアフリカにかけて集められた A.s のゲノムを調べ、A.s の伝搬ルートを探り、また薬剤耐性の出現過程についても調べた研究で、7月9日号の Science に掲載された。タイトルは「The origin, history, and resistance architecture of an invasive urban malaria mosquito in Africa(アフリカで広がってきた都会のマラリアを媒介する蚊の起原、歴史、そして殺虫剤抵抗性の構造)」だ。
まさにガンのゲノム研究と同じで、様々な地域の A.s ゲノムを解読し、その起原や伝搬の様態を調べている。もちろん昆虫学や疫学的に既に A.s の伝搬についてはかなり詳しいレポートが存在し、アフリカでは最初2012年にジプチで発見され、その後北のスーダンで2016年、南のエチオピアで2016年、ソマリアで2019年、ケニアで2023年発見されている。
それぞれの地域の A.s の系統樹を作成すると、アフリカの A.s は全て、インド・アフガニスタンの都会で流行した A.s に由来することがわかる。おもしろいのは同じ起原の A.s はイランからサウジアラビアの都会へと伝搬しているが、このルートはアフリカへは到達していない。アラビア砂漠の南には大都市がほとんどなく、砂漠も大きなバリアとして機能したと考えられる。
そして、エチオピア、ケニアなどへ伝搬した A.s はジブチに上陸した A.s が起原となっていることがわかった。それぞれの地域の A.s の多様性から、南インドの A.s の一部が、おそらく船に乗ってジブチに到達し、そこから南に広がっていた経緯がわかる。即ち、アフリカに到達し、ケニヤに至るまでの間に、ゲノムの多様性が失われているのがわかる。即ちおそらく船に乗ってわたったほんの少数の A.s から現在の集団が繁殖しており、他からの遺伝子流入がないことがわかる。エチオピアの高地には全く認められないことから、ジブチから海岸線に沿ってソマリア、ケニアと広がっている。また、南だけでなく、北のアラビア半島イエメンにもジブチをハブにして伝搬している。
おもしろいのはスーダンで繁殖している A.s は、エチオピア、ソマリア、ケニアで繁殖している系統とは離れており、別のルートで運ばれてきたことがわかる。
次に A.s の殺虫剤耐性を支える遺伝子を探索し、一つの抵抗遺伝子で殺虫剤耐性が獲得されたわけではなく、いくつかの遺伝子セットが集まることで、代謝システムがリプログラムされることで、殺虫剤の耐性が形成されていることを明らかにしている。そして、この耐性遺伝子セットはインドで流行している多様な A.s に存在し、アフリカへの伝搬の過程で、遺伝子のコピー数が増えた A.s が強く選択されていることが示されている。
結果は以上で、20年程度の間に起こった、A.sの進化と伝搬の物語が、ゲノムにより詳しく語られるようになっている。読んでいて、ガンのゲノム研究とほとんど違いがないこともよくわかった。
2026年7月14日
私の唾液腺ガンは病理診断もゲノム診断も多形腫がガン化した carcinoma ex pleomorphic adenoma と診断がついている。比較的珍しいガンで、ゲノムから良性から悪性への転換、そしてリンパ節転移を後押しする変異などがよくわかるが、膵臓ガン、大腸ガン、肺ガンのような、ドライバーがはっきりするガンでないことも認識される。17番染色体の片方が欠損しているので、大きな染色体変化がガン化に関わると思うが、この場合ガンのドライバーを見つけることは簡単ではない。
今日紹介するカナダの Mount Sinai 病院とトロント大学からの論文は、特定の染色体異数性を示すことで知られるトリプルネガティブ乳ガンの中の基底細胞様乳ガンで、異数性を示した染色体にコードされている遺伝子の中から、ガンのドライバーを特定しようとした研究で、7月8日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Aneuploidy selects for the acquisition of driver genes in breast cancer(乳ガンでは、染色体異数性がドライバー遺伝子獲得につながる)」だ。
基底細胞様乳ガン (BLBC) では様々な染色体異数性が知られており、これがガンのドライバーとなっているが、領域内のどの遺伝子が実際に関わるのかははっきりしない。そこで、p53 (-) PTEN (-) マウス乳腺に、染色体異数を示す領域の遺伝子を、CRISPR or 活性化させるガイドを導入して発ガンを誘導し、ガンで誘導された遺伝子を調べ、発ガンに関わるドライバーなどを特定しようとしている。
出るは出るはの結果で、3752種類の遺伝子について検討し、最終的に90種類の遺伝子が p53 (-) PTEN (-) マウスからノックアウト、あるいは活性化するだけで BLBC が発生する。この中で、遺伝子をノックアウトすることでガンが発生する分子は、mRNAメチル化酵素、ユビキチンリガーゼ構成分子のように、様々な細胞内過程に関わり、これらの調節が異常になることでガンが起こることを示している。
おもしろいのは p53 や PTEN 欠失で染色体異数性が起こりやすくなり、その中の特定の染色体の異数性が発ガン過程で選択されると、それ以上の染色体異数性が起こらないことで一旦異数染色体が決まると、他の異数染色体の発生はガンにとっても有害なので、選択されるのだろう。
もちろん異数性により活性化される遺伝子も発見される。しかも、多くのドライバーと考えられる遺伝子は、これまでガンのドライバーとしては認識されていないものが多い。すなわち、ガンへの道筋は想像以上に複雑だ。
この研究ではその典型としてプラスミノーゲン受容体を選んで詳しく解析している。正常型の遺伝子を PI3K 変異を遺伝的に持つマウスの皮膚に過剰発現させると、皮膚ガンが6日で発生する。即ち変異は必要無く、HER2 のように発現が高まるだけでガンが起こる。ただ、この受容体を刺激するプラスミンは発ガンに必要ない。もちろんp53 (-) PTEN (-) 乳腺に発現させても BLBC が起こる。この発ガン過程をたどっていくと、プラスミノーゲン受容体はミトコンドリア膜に結合して、高い活性状態にあるミトコンドリアの活性酸素を不活化させる作用があることが明らかになた。
以上が結果で、染色体異数性による発ガン過程の解析から、これまでガン遺伝子や抑制遺伝子としてはっきりと認識されていなかった分子も、発現量が上下することで、発ガンに関わることを明らかにしている。これに加えて、先日紹介した京大 小川研 からのエピジェネティックな変化も加わるとすると、発ガン過程が理解できる日はまだまだ遠い気がする。しかし、このようなドライバーが見つかることは、標的薬が見つからなくても、その変異をガンのネオ抗原としてワクチン設計が可能であることも重要で、是非その方向での研究が進むことを期待する。
2026年7月13日
2020年、ミクログリアが分泌する補体第一成分 C1q がシナプス剪定に関わることを示した論文を紹介した(https://aasj.jp/news/watch/12355)。さらには C1q はエンドゾームに取り込まれて細胞内でリボゾームの相分離を誘導して翻訳に影響するという突拍子もない論文も発表されている(https://aasj.jp/news/watch/24795)。
このように脳神経回路での C1q に注目すると突拍子もない話が出てくるようだが、今日紹介する University College London からの論文も、今度は C1q 依存性のシナプス剪定に抗原特異的な抗体が関わるという、やはり突拍子もない研究で、7月9日 Science に掲載された。タイトルはズバリ「C1q and immunoglobulins mediate activity-dependent synapse loss in the adult brain(C1q と免疫グロブリンは成人の脳での神経活動依存性シナプス剪定に関わる)」だ。
この研究では正常マウスだけでなく、アルツハイマー病モデルについても実験を行っているが、ややこしくなるので割愛して、正常マウスのみに絞って紹介する。まず、光遺伝学的方法で海馬神経を刺激したあとの組織を詳しく検討している。刺激に応じて神経が投射している側のシナプスだけで神経活動を示す Fos の発現が見られるとともに、同じ場所に C1q が蓄積することを確認する。即ち、神経活動依存的にシナプスに C1q が集まる。その結果 VGLUT2 神経のシナプスだけが剪定される。VGLUT1 が全く影響を受けないことがミソで、この剪定により VGLUT1 優位のシナプスが維持される。ただ、その生理学的結果については全く調べられていない。
この研究では、神経活動依存的に C1q が VGLUT2 シナプスに集まるメカニズムに焦点を当てて調べており、VISUM 等のノンバイアス空間トランスクリプトームを用いて、免疫グロブリンを発現するB細胞が刺激に応じて海馬にリクルートされていることを発見する。刺激を受けていない反対側では全くこのような現象は起こらない。
ラベル実験から、B細胞は頭蓋骨髄から硬膜を通って、刺激依存的に海馬に移動してくること、おそらく CXCL12 ケモカインが刺激依存的に働いてB細胞の移動を誘導するのではと結論しているが、はっきりとした証拠は示されていない。
こんなことがあるのかと疑うが、IgM をノックアウトしたマウス、IgM が分泌できないマウスを用いて、B細胞から IgM の分泌がないと、C1q のシナプスへの集合はなく、シナプス剪定もないことが示される。即ち、刺激依存的にB細胞が活動している神経の近くで、IgM を分泌することが C1q の特異的集合に必須であることを示している。
さらに驚くのは、卵白アルブミンに対する抗体だけを分泌するマウスでは、刺激依存的な C1q の集合、そしてシナプス剪定は起こらない。ただ、この実験では卵白アルブミンB細胞が海馬に移動するかどうかは調べていない。これは大きな手落ちで、神経活動依存性がB細胞の移動なのかどうかを知る意味で決定的に重要な実験だと思う。いずれにせよ、IgM だったらいいわけではないので、抗原特性があることになる。
結果は以上で、C1q がミクログリアから神経刺激依存性に分泌されるだけでなく、C1q を VGLUT2 神経へ集合させるためにB細胞の神経刺激依存的移動と一定の特異性を持った IgM の分泌が必要であるという結論になる。とすると、IgM がどの抗原を認識しているのか調べてほしかったと思う。
このようにフラストレーションは残るが、本当なら免疫学的にも極めて不思議な現象で、今のところはまだ完全に信じられない。
2026年7月12日
今日紹介するカナダ・マクギル大学からの論文を読むまで全く知らなかったが、免疫チェックポイント治療 (ICI) は太り気味で BMI が25以上のヒトの方が効果が出やすいという論文がいくつか発表されている(例:Lancet Oncology Vol19, 310, 2018)。例えば太った人の方がガンになりやすい、あるいは大腸ガンは食生活が西欧化することでリスクが高まる、などの現象から考えると、大変意外な話だ。
この研究では、様々な食事のタイプを再現した餌をわざわざ作成して、その餌を食べさせたマウスのチェックポイント治療に対する反応を調べ、何故肥満の人の方が ICI に反応しやすいのか検討したおもしろい研究で、7月8日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Diet–microbiome synergy underlies obesity-associated immunotherapy efficacy(食と細菌叢のシナジーが肥満の人が免疫治療に反応しやすい背景にある)」だ。
この研究の圧巻は、肉、魚、豆由来のタンパク質、様々な炭水化物、様々な植物性及び動物性油、そして様々な食物繊維を配合して、地中海食、日本食、ビーガン、アメリカ食、高脂肪食、ケトン食などを再現し、これを食べさせたマウスをわざわざ作成している点だ。これまで、単純に高脂肪食と言った簡単なレシピで済ませていたのを、ここまで徹底しているのが売りになる。
結果は期待通りで、高脂肪食だけでなく、アメリカ食、西欧食などは体重が増加する。意外なことに地中海食もアメリカ食並みに肥満を誘導する。一方、我が日本食は最も体重増加が少ない。これに相応して、腸内細菌叢も食事のタイプごとに大きく違う。この中から、良い代謝スコアや悪い代謝スコアと相関するバクテリアと特定することができる。これも少し意外だったが、乳酸菌は悪いスコアと相関している。
そして、これらの異なるタイプの食を続けたマウスにガンを注射して ICI の効果を比べるメインの実験が行われ、衝撃の結果になっている。まず我が日本食を食べたマウスでは ICI が全く効かない。これは体重は増加する地中海食でも同じだ。一方、アメリカ食マウス、イヌリンが多く含む食を食べたマウスは、ICI がよく効いてガンの増殖を抑える。日本で開発された ICI が日本食と合わないというのは皮肉だ。
ただ、肥満を起こしやすい地中海食と日本食ともに ICI が効きにくい、あるいは西欧食とアメリカ食では友にメタボスコアは悪いが、アメリカ食の方が圧倒的に ICI の効果があることから、実際には、単純な代謝レベルではなく、細菌叢とそれを支える食成分が ICI の効果を決める最大の要因であると考え、ICI の効果と相関する細菌叢を探索している。
ここからは結構単純で、最終的にサプリでも使われている L.johsonii の一種類に焦点を当てている。そして高脂肪食やアメリカ食は L.johnsonii が腸内で生存しやすい環境を作るとともに、ICI を増強する様々な分子の原料を L.johnsonii に提供することで、ICI 効果を高めるシナジーカイロを形成することを示している。実際には、ICI 増強効果に関わるメインの代謝物は、脱アミノチロシン DAT と、インドール3乳酸と特定され、DAT は試験管内のキラーT細胞のガン障害活性を増強することまで示している。
以上が結果で、我々日本人にとっては少しショッキングな結果で、アメリカ食も捨てたものではないという話だが、その結果代謝バランスを変化させるのはリスクが多いので、ICI を受けるとなって急にハンバーガーを食べ始めるというのはないと思う。その意味では、DAT やインドール3乳酸などの効果をさらに突き詰めて、代謝バランスを壊さない ICI 食を開発してほしい。