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7月7日 成熟CD8T細胞が形成する幹細胞システム(7月1日 Cell オンライン掲載論文)

2026年7月7日
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CD8キラーT細胞は、抗原により刺激されるとエフェクター機能を発揮し、役目を終えると細胞は消失する。一方、抗原刺激の様式によってはメモリーT細胞が形成されるので、次の免疫反応に備える体制が出来ている。他方で、ガンや自己免疫刺激のような持続的抗原刺激に対しては、PD-1発現などチェックポイント機構が働き免疫反応が抑えられるが、PD-1抗体によるガン治療からわかるように、T細胞を疲弊させずに持続的に機能を発揮できることもわかっている。

今日紹介するコーネル大学からの論文は、リンパ組織内では慢性刺激によるエフェクターシステム自体が、幹細胞からプロジェニター、そして分化エフェクターという幹細胞システムを形成している可能性を示した研究で、7月1日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「LEF1 and niche factors determine T cell stemness across chronic diseases(LEF1とニッチ因子が慢性疾患でのT細胞の幹細胞性を決める)」だ。

慢性刺激にそのまま免疫反応が維持されると病気になる。そのモデルとして、IGRPと呼ばれる膵島抗原に対するCD8T細胞で誘導される1型糖尿病をモデルにしている。免疫不全マウスにIGRP特異的CD8T細胞を注射すると膵島が傷害され糖尿病になる。この系では、リンパ節に存在する未熟な前駆細胞は全てTCF1と呼ばれる転写因子で決まると考えられてきた。これに対し著者らは、より階層的な幹細胞システムが存在するはずで、おそらく一般の幹細胞システムと同じでWntシグナル下流のLEF1が重要な役割を演じていると仮説を立てている。

まず膵臓につながるリンパ節細胞を単一細胞レベルで転写を調べると、期待通りTCF1発現細胞をLEF1陽性と陰性に分けることができる。さらに、IGRP特異的T細胞のLEF1をノックアウトしてマウスに投与すると、コントロールでは糖尿病が発生するのに、ノックアウトでは膵臓への浸潤が起こらず糖尿病が発生しない。以上のことから、これまでメモリー、あるいはプロジェニターと呼ばれてきたTCF1陽性細胞のうちLEF1陽性細胞だけが幹細胞として、慢性刺激に持続的に対応することがわかった。実際、LEF1陰性TCF陽性細胞をマウスに投与しても糖尿病は起こらない。

これは重要な発見だが、残念ながらLEF1を活性化するWntシグナルについてはこの研究では全く調べられていない。しかし、βカテニンの核内移行を追跡すると、LEF1陽性幹細胞のみ核への移行が認められるので、Wntは間違いなく効いている。これに加えて Atac-seq 等で開いたクロマチンを調べると、LEF1陽性から陰性への分化課程で大きなエピジェネティックな再構成が起こっており、一方向性の分化が誘導されるのがわかる。そして、LEF1陽性T細胞の遺伝子発現を他の幹細胞システムと比較すると、例えば皮膚の幹細胞などと極めてよく似ているので、他の幹細胞システムと同じように Wnt/βカテニン/LEF1 と言うシグナルがエフェクターT細胞で働いていることを強く示唆している。

この転写パターンから、幹細胞ではNotchシグナルも幹細胞性の維持に重要であることがわかるが、T細胞でもNotchをノックアウトすると幹細胞性が失われることから、Wntのみならず他のシグナルも共通であることがわかる。さらに、リンパ節内におそらくWntを発現するニッチが存在し、インテグリンに対する抗体でニッチとの相互作用をブロックすると、自己免疫は起こらなくなる。

結果は以上で、慢性刺激が続く場合、Wntシグナルを切ってやることで幹細胞機能を阻害して病気を治せる可能性を示したことは重要だ。逆に言うと、ガンなどでは逆にWntシグナルを提供するニッチが存在すれば、長期にわたりガンを傷害できることになる。

LEF1は幹細胞性に必須だという一種の思い込み論文だが、自己免疫病やガンを考える時には重要な研究になったと思う。

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