感染性のガンの存在はイヌを飼っている人には広く知られていると思う。主として交尾中にイヌからイヌへ伝搬し、遺伝子解析からオオカミから存在し、数百年以上にわたって維持されていることが示されている。イヌ以外には、このブログで何度も紹介したタスマニアデビルの顔面に発生する腫瘍で、食べ物を争うときに感染し、一時はデビルは絶滅の危機にまで追い追い詰められた(https://aasj.jp/news/watch/4641)。これに加えて北アメリカのオオノガイの白血病は、細胞が海を漂って他の貝にに感染することが報告されている(https://aasj.jp/news/watch/3246)。
今日紹介する米国・バーモント大学からの論文は、バーモント州のMemphremagog湖のナマズに発見されたメラノーマが感染性であることをゲノムから証明した研究で、4番目の感染性腫瘍の発見になる。タイトルは「Brown bullhead catfish melanoma represents a novel transmissible cancerブラウンブルヘッドナマズのメラノーマは新しい伝搬性のガンだ」」で、7月19日Natureにオンライン掲載された。
この湖では2012年に一部のブラウンヘッドナマズ(BHC)にメラノーマが見つかることが報告された。そして、2014年から2017年にかけてお、なんとメラノーマにかかった個体が23-37%へと上昇し、一般的な個別の個体に発生するメラノーマの頻度をはるかに超えていることがわかった。そこで、第4の感染性腫瘍の発見と考え、19個体のメラノーマと正常脳組織、さらに近くの湖のBHC の全ゲノム解析を行っている。
まずミトコンドリアゲノムを調べると、全てのメラノーマはホスト組織と異なっていること、そして腫瘍のミトコンドリアは多様化はしていても、は同じ起原を持つミトコンドリアに由来していることが明らかになった。
次に核染色体のゲノムを調べると、メラノーマと、正常組織の系統樹は全く異なることが明らかになった。即ちメラノーマの起原は、この湖で見られる個体のゲノム多様性が生まれるより早い段階で発生し、その後メラノーマ自体で多様化していることがわかる。さらに、組織でもメラノーマでも一塩基レベルの多様化が発生しているが、個体で見られる多型のほとんどは1個体だけでしか見られないが、メラノーマの多型の多くは16/19メラノーマを筆頭に、複数のメラノーマで共有されていることを明らかにした。
さらにより大きな構造変化を見ると、メラノーマではほとんどの変異が12種類以上の個体で共有されているが、脳組織では頻度も低く、ほぼ全てが1個体だけで見られる。
以上が結果で、ゲノム解析だけが行われているが、間違いなくメラノーマが感染性に伝搬していることは間違いないと思う。タスマニアデビルと異なり、野生の魚と言っても飼育することが出来るだろうから、ゲノムとガンの個体を超えた伝搬について実験的な研究へと進むことを期待する。このナマズは生殖時に身体をすりあわせるので、おそらくこの時に感染したと著者らは想像しているが、感染の拡大から考えると、実験的な感染実験と、それに基づく個体間感染のメカニズムが明らかに出来るのではと期待する。
