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7月2日 Tauタンパク質伝搬に小胞も関与する(6月29日 Cell オンライン掲載論文)

2026年7月2日
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リン酸化され繊維状に凝集したTauを神経細胞に振りかけると細胞内に取り込まれそこでプリオンと同じように新しいTau凝集を引き起こすことは、ほぼ多くの研究者の認めるところだと思う。脳から分離したTau線維はそのまま神経細胞に取り込まれるが、シナプス小胞のように小胞体に詰め込まれて吐き出されると、より効率的に伝搬する可能性が示唆されていた。

今日紹介するユタ大学からの論文は、この可能性を検証し、Arcと呼ばれる分子がTauを小胞体に詰め込むための鍵となる分子で、これによりTau伝搬が加速することを示した研究で、6月29日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Arc mediates intercellular tau transmission via extracellular vesicles(Arcは細胞内Tauを細胞外小胞に詰めて伝搬する過程に関わる)」だ。

神経細胞から放出される小胞の中にTauが存在し、シナプス形成に関わるArcが同じ小胞に見つかることは既に知られていた。従って、研究は最初からArcがTauを小胞体に詰め込むのに関わるという仮説から始めている。まずArcをノックアウトした神経細胞にTau遺伝子を導入、放出される小胞の中のTauを調べると、Arcがノックアウトされても小胞自体の生成は変わらないが、Tauが詰まった小胞形成が激減することを確認する。すなわち、Arcは小胞にTauを詰め込む過程に関わっている。これは試験管内の現象だけでなく、ヒトTauを導入したマウスモデルでも、EVへの詰め込みにはArcが必要であること、またヒトアルツハイマー病でも、TauとArcを強発現している小胞が見つかることを明らかにしている。

次は、Tauが小胞へ詰め込まれるメカニズムで、分子同士の結合を調べるオーソドックスな生化学実験を繰り返して、ArcはN-末のドメインでTauと結合し、その後で小胞形成に必須のIRSp53分子と結合、これにより小胞が形成される時にTauが封入される。即ち小胞形成ではなく、小胞にTauを詰め込むのに機能することが明らかになった。繊維状に凝集したTauはArcへの結合力が強くより小胞内に封入される。

最後にTauをわざわざ伝搬しやすいように小胞に詰め込む仕組みが何故存在するのかを調べている。基本的には、細胞内に蓄積してきたTauが細胞ストレスを誘導するため、これを軽減する目的でこの仕組みが存在している。すなわち、Arcが存在しないと神経細胞内からTauが放出されず細胞死が上昇する。とは言え、Arcがないからと言ってTauのリン酸化など細胞内での処理には全く影響はない。さらに、他の神経への伝搬に注目してみると、神経から神経への伝搬の効率にArcによる小胞体へのTau詰め込みが関わることも確認している。

残念ながら、実際のAD症状の進行とArcを調べた研究が行われておらず、またアミロイドとtau異常が誘導され1年ぐらいで症状を発生するモデルでは、雄マウスでArcノックアウトによる変化がないことから、このシステムがADの発症にどこまで寄与しているのかについては明確ではないと思う。しかし、シナプスからシナプスへの異常タンパク質の伝搬には明らかに寄与しており、今後Tau伝搬研究には常に念頭に置く必要がある、しかし不思議なメカニズムだと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ
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