9月2日 tRNAを使った遺伝子治療(8月27日 Science 掲載論文)
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9月2日 tRNAを使った遺伝子治療(8月27日 Science 掲載論文)

2026年9月2日
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CRISPRによる遺伝子編集が可能になり、突然変異を正常化する遺伝治療が可能になったとはいえ、臨床応用まで解決すべき課題は多い。従って、できる限り様々な方法が変異に応じて開発されることが重要になる。遺伝子がコードしているタンパク質の機能不全につながる様々な変異があるが、11%が翻訳の途中でストップコドンが入るタイプだが、これはストップコドンを読み飛ばしてしまうことで最後まで翻訳させるという方法の開発が行われている。一つはリボゾームに結合する抗生物質を改変して合成されるリードスルー薬だが、治験が行われている段階だ。もう一つの方法は、アミノ酸を結合する tRNA のコードをストップコドンに変えたサプレッサー tRNA (stRNA) を合成し、これを細胞に供給する方法が研究されている。

今日紹介するトロント大学からの論文は、嚢胞性線維症 (CF) の原因遺伝子 (CFTR) のストップコドンを治療できるサプレッサー tRNAとそのデリバリーについて徹底的にトライアンドエラーの検討を行い、マウスでは治療可能な脂質ナノ粒子とサプレッサー tRNAの組み合わせを突き止めた研究で、8月27日 Science に掲載された。タイトルは「Nonviral delivery of chemically modified tRNA rescues nonsense mutations in cystic fibrosis(化学修飾を行った tRNAをウイルスを使わずに注入することで嚢胞性線維症のナンセンス変異を直すことができる)」だ。

これまでサプレッサー tRNAによるリードスルーを阻む最も重要な壁が、ウイルスベクターによって導入した tRNA遺伝子が細胞内で、通常の tRNAが受ける様々な化学修飾を受けることが難しい点にあった。このグループは、最初から様々な化学修飾を行った tRNAを用意し、これを mRNAワクチンのように、脂質ナノ粒子に詰めて細胞に届ければ、高いリードスルーが得られるはずだと考え、リジン tRNAのコドンを変化させ、様々な化学修飾を行った tRNAを14種類合成、一つづつリードスルー活性を調べ、高い活性を示した修飾を選んでいる。その上で、その中から大量に導入しても自然免疫を誘導しない修飾方法を確定している。

次に導入した tRNAはアシル化酵素でアミノ酸と結合出来る必要があるが、この効率を検討してアルギニンに結合する tRNA をA58番目をメチル化したがアミノアシル化される率が高く、さらに細胞内での半減期も延長することを確認し、またアルギニンが導入されてもCFTR機能に変化がないことも確かめ、tRM6を stRNAとして選んでいる。

次はこの tRNAを肺の細胞に届ける脂質ナノ粒子について、脂質のヘッド、リンカー、テールまで成分を変化させ導入効率を調べている。トライアンドエラーでは大量に合成できないので、ミクロフルイディックスを用いて実験用を調整している。そして、その中から熱い粘液で覆われたCF患者さんを想定した細胞へのデリバリ-実験を行い、TTP-3と呼ぶ至適ナノ粒子を完成させている。

後はマウスの気管に注入して気管上皮への効率の高い導入を確かめた後、CFTR変異を持つマウスで発現を正常化できるか検討し、正常肺レベルの5-6割程度まで発現量を回復させられることを示している。また、患者さんの腸細胞のオルガノイドを用いて、イオンチャンネル活性が回復できることまで明らかにしている。

以上が結果で、ともかく可能な条件についてトライアンドエラーを繰り返し、目的を実現するという、かなり古典的な研究だが、我々古い世代には爽やかな印象を残す研究だ。今後人間に投与するとき、吸入になるのか、そのときどれほどの量の stRNA-ナノ粒子が必要なのか、など調べる課題は山積みだと思うが、期待したい。

カテゴリ:論文ウォッチ
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