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9月20日 論文をAI Agent化して、自分のデータも解析に使える様にする:論文を読むから使うへと変換する革命(9月16日Natureオンライン掲載論文)

2026年9月20日
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毎日論文を読んでいるが、現役を退いた今はもっぱら読んで説明するだけで、論文を自分の研究に使うことはなくなった。もちろん現役時代は、論文に書かれている方法やデータは、自分の研究に使えるということが重要だった。特に最近になって、膨大なデータとその解析手段が生命科学研究の重要なテーマになってくると、ますます論文を使うことが重要になってくる。しかし先日紹介したGoogle Deepmindから発表されたAlpha Genomeモデル(https://aasj.jp/news/watch/28262)を自分の研究室環境でセットアップしようとすると、かなりIT知識のあるメンバーに、APIキーの取得から、Python環境までセットアップが必要になる。ChatGPTやClaudが使える様になってからはLLMに教えて貰いながらなんとかできるようにはなるが、こんな作業をおもしろいと思った論文で繰り返すのはほとんど不可能だ。

ところが今日紹介するスタンフォード大学からの論文は、論文をClaude AI Agentを使って、自動的に論文で使われデータやたコードベースを整理し、必要な外部のデータを利用して自分のデータを解析、結果をアウトプットできるMCPサーバーへと変換できることを示した研究で、9月16日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「Reimagining research papers as interactive and reliable AI agents(研究論文を相互作用可能で信頼性の高いAI agentとして再構想する)」だ。

この研究は別に新しいモデルやデータベースを構築したという論文ではない。アンソロピックのClaude Code Agentを使って独自のAI Agentを構築しただけなのだが、画期的なのは発表された研究論文をAI agentに転換したという点だ。多くの読者はLLMに論文をダウンロードして要約させたり、詳細を質問したりしていると思うが、この研究で開発されたPaper2Agentは、LLMを使うだけでなく、実際に論文で行われたデータ処理を自分でも行えるようにするため、

  1. 論文で開発されたアプリケーションを構築するときに使われるコードベースを探しだし、ダウンロードして自分で使えるようにする。
  2. 様々なタスクを実行するAI環境を整備する。
  3. 外部の情報を取り込んで使い方についてわかりやすいマニュアルを作成する。
  4. サンプルを実行して正しく動くか検証する。
  5. このようにして一つの論文から様々なMCPツールを抜き出して使える様に整備し、論文と同じデータ処理などが出来るよう必要な外部とのリンクを備えたMCPサーバーとしてまとめる。

この結果、「この論文の方法で私のデータを解析して」と自然言語でインプットすると、論文の方法に従って解析した結果が図として現れると言うわけだ。論文を「読んで調べる」から「使う」への変換が行われている。もちろんこの背景にあるアンソロピックやオープンAIのMCPサーバー技術が素晴らしいのだが、これを使って論文専用のMCPサーバーを作ってしまうという発想は画期的だ。

おそらくPaper2Agentを使わなくても、ClaudeやChatに、この論文の方法でRNAseqデータを解析できるようにしてとインプットすると、自動ではないがターミナルを使って様々な外部ソフトとリンクして、なんとか結果が出るようになることは自分のガンのデータで経験し、そのパワーに感心しているが、Paper2Agentによってこれらの作業が自動的に行えるようになったと考えられる。

その例として、AlphaGenome論文を読み込ませ、22種類のMCPツールからなるMCPサーバーを完成させている。これには45分かかり、おそらくClaude利用代金として14ドルかかると紹介されている。そしてこのサーバーに遺伝子配列をインプットして、この配列の遺伝子発現調節機能を予測せよとインプットすると、答えが出てくる。これにより、例えば自分の知りたい遺伝子多型の機能的役割を調べることもできる。

もう一つの例としては、single cell RNA sequencingの解析方法SCANPYについての論文をインプットして作成したMCPサーバーをそのまま自分のsingle cellデータの解析に使えることを示している。Single cell データ解析の場合、クオリティーの高いデータの選別から、圧縮次元での表示まで一連の過程を順番に進める必要があり、改めてAI agentのパワーを認識する。

最後に、自己免疫病T細胞のCRISPRによる網羅的ノックアウトをsingle cell levelで解析したPerturb seqデータ論文と、AlphaGenome 論文を読み込ませて、解析方法とデータを異なる論文から一つのMCPサーバーとしてまとめることで、それぞれの論文の著者らが発見していない新しい発見が得られることまで示している。

実際にはAlphaGenomeのように研究用の場合無料でアクセスできないと、APIアクセスする度に課金されることになるので、まさに研究のオープンアクセスの重要性が問われるようになると思うが、自分のPCからLLMの利用料だけで、AlphaGenomeのような無料のAPIにリンクして操作できる様になる。論文発表の意味が、読むから使うへ大きく変化させた、画期的なアイデアだと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ
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