11月5日 細菌叢研究でバクテリアを培養する重要性(11月2日Cellオンライン掲載論文)
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11月5日 細菌叢研究でバクテリアを培養する重要性(11月2日Cellオンライン掲載論文)

2026年11月5日
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最初16SリボゾームRNAシークエンシングから始まった細菌叢研究も、現在ではショットガンシークエンスとゲノム再構成によるよりリアルな細菌ゲノムを求めるようになり、場合によってはlong readのシークエンサーで完全なゲノムを特定する試みまで進んできた。

そんな中で今日紹介する米国MITとドイツキール大学からの論文は、ゲノムから細菌を再構成するメタゲノムと実際に細菌を培養して得られる情報を丁寧に比べて、リアルな細菌培養の重要性を示した研究で11月2日Cellにオンライン掲載された。タイトルは「Convergent genomic evolution of human gut bacteria along an industrialization gradient(工業化に伴うヒト腸内細菌ゲノムの収束的進化)」だ。

これまでの多くの研究で、我々人間の腸内細菌叢は工業化とともに大きく変化していることがわかっている。このグループも、同じ時に工業化により細菌叢の多様性が失われ、腸内での免疫反応を反映するIgA分泌が高まり、腸内での炎症ストレスが上昇していることを発表している。このこと自体は新しい発見とは言えないが、工業化国の細菌叢が他の人に移植しやすいというおもしろい結果を示している。即ち、細菌の多様性は減ったが、細菌自体の人間への適合性が高まったことを示唆している。

この適合性の上昇という工業化に伴う細菌側の進化を研究するためには、細菌をリアルに培養する必要がある。この研究では、選択性が少ない培地を用いて得られた細菌叢に含まれる各細菌を培養、個々の細菌ゲノム配列を決定するとともに、同じサンプルで培養前の細菌叢のゲノムを再構成するメタゲノム解析をおこなって、それぞれの方法を比べている。

個々の細菌の構成で見ても、工業化によって株レベル、種レベルの多様性が低下していることなどは捉えることが出来るが、この研究では10種類の異なる株をひとまとまりの集団として扱って、メタゲノム解析と個別のゲノムの解析とをいろいろ比べている。

まず、メタゲノムで細菌ゲノム再構成技術は進んできているが、しかし分離細菌のゲノム解析と比べると、多くの遺伝子が失われていることがわかる。驚くことにゲノムサイズで見るとメタゲノム再構成では実際の半分程度に低下する。特に、水平遺伝子伝搬でゲノムに統合された遺伝子をメタゲノムではほとんど把握できない。

今回初めて明らかになったのは、工業化で確かに細菌叢の多様性は失われるが、細菌の合成するタンパク質は全ての種で工業化とともに上昇する事がわかる。即ち細菌自体が工業化とともにより進化し、人間に適合している可能性が示唆された。さらに、水平遺伝子伝搬などによるゲノムの可塑性は工業化とともにはるかに高まっている。そして、このような変化をもたらすほとんどは、水平遺伝子伝搬と、遺伝子自体の変異によっていることも確認している。おそらくlong read sequencingを用いれば同じ結果を得ることは可能だと思うが、正に培養して個々のゲノムを調べることの重要性が良くわかるデータだ。

その上で、同じ種の細菌自体が工業化により異なる遺伝子構成を進化させていることも、工業化で増大した、あるいは減少した遺伝子から推察することができる。工業化で増加する遺伝子で目立つのは、ホスト自然免疫と相互作用する細菌細胞壁構成分子や、アミノ酸の分解に関わる分子で、今後細菌培養を用いた進化の再現実験も可能だろう。おもしろいのは、工業化により異なる種の相同遺伝子で同じ変異が起こることで、工業化というホストの状況により細菌のゲノムが自然選択されることがわかる。

以上が結果で、工業化国の人間の細菌叢が他の人間に移植しやすいという、この論文に先行する発見を、細菌自体のゲノム進化として見事に説明している。なんと言っても、この研究で調べられた細菌はライブラリーとして全て残っている点で、今後これを用いて細菌叢操作につながる重要な研究が進むように思う。

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