1月26日 猿と人間の単一神経細胞レベルでの比較(1月24日号Cell掲載論文)
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1月26日 猿と人間の単一神経細胞レベルでの比較(1月24日号Cell掲載論文)

2019年1月26日
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やろうとしていることは面白いのだが、そのために用いた手法がよく理解できない論文が、脳科学には多い。これはどんなに複雑な行動でも、それに関わる神経活動は結局興奮スパイクとして現れるので、それを目的に合った形で処理するうちに、極めて抽象的な指標になり、私のような素人の読者が、実際に起こっている過程を頭にイメージすることが難しくなるためだ。

今日紹介するイスラエルワイズマン研究所からの論文は、猿と人間の神経系の違いを単一神経細胞レベルで特定しようとした研究で、目的は大変面白く、よくわからないながらもなんとか最後まで読んだ。タイトルは「A Tradeoff in the Neural Code across Regions and Species (領域と種を超えて見られる神経のコードの折り合い)」だ。

結局理解の浅い人間に紹介されても余計わかりにくいと思うので、今回は猿と人間の違いをなんとかここの神経細胞の反応の違いに集約できないか頑張っているグループがあるという程度に理解してもらって、面白いと思われたら是非オリジナル論文を読まれることを進める。しかし、同じような課題を行なっている人間と猿の神経活動を細胞レベルで比べた研究はまずないと思う。

実際にはこのコラムでも紹介しているように、テンカンが起こる場所を特定するためには、電極を長期間脳内に留置した患者さんと実験ごとに電極を挿入したカニクイザルを使って比較を行っている。イメージを見せて思い出すという課題をこなしてもらっている間に、扁桃体と前帯状皮質の神経細胞のスパイクを記録しているが、これらの領域は課題を行うことに直接関わるのではなく、統合された感覚や判断を処理する高次の過程に関わっているため、単一の神経活動は課題に関わる脳の反応全体が反映されていると考えられる。しかし、一個一個の神経はあくまでも興奮スパイクでしか評価できないので、このスパイクの特徴を読み取るための様々な手法を使うことになる。

普通スパイクを処理するとき、スパイクの全体数や反応のスピードを判断し、これにより神経反応の信頼性を図る。この研究では、これに加えてスパイクのパターンを言語に見立てて、意味のあるパターンを取るかどうかを調べるエントロピーという指標を導入し、一つの神経が行なっている情報伝達の量を測っている。これにより、一つの神経の反応の速さや信頼性を反映した一種の規則性と、処理している情報量の両方の数値を比較できる。少し具体的に言うと、神経細胞が規則的に反応している場合は、多くの神経は同じように反応している。しかし、情報量は乏しい。一方多くの情報量を伝える場合は、規則性は失われるといったような話だ。

この研究の問題はこうして指標を決めた後は、全くそれぞれの抽象的指標だけが一人歩きしてしまうので、ついていくのが困難だが、この指標を使うと何がわかったのかだけ、箇条書きにしておく。

  • 人間の神経細胞は、反応性は犠牲にしても多くの情報を伝えられるようにできている。
  • 猿でも、人間でも、前帯状皮質の方が扁桃体より多くの情報を処理している。
  • 反応性と情報性は逆相関する。
  • 猿の扁桃体は、従って、最も情報処理量が低いことになるが、そこに存在する神経細胞の多くが同調して活動している。要するに、反応の多様性が少ない。

とまとめていいだろう。結論を見ると、納得なのだが、これが単一神経細胞レベルの特性としてあるのかと言われると、おそらくそうではないだろう。しかし、全ネットワークに表象された情報の全体が、一個一個の細胞でどう見えるのか、こんな地道で大変な作業を繰り返す必要があるのかと、困難に唖然としてしまう。

感想:これほど読むのに時間がかかり、それでも理解が浅いと反省する論文は、どうしても敬遠してしまうが、頑張って今後もできるだけ紹介したい。

カテゴリ:論文ウォッチ