カテゴリ:論文ウォッチ
2月13日:ワインと低容量アスピリンのガン予防効果?(アメリカアカデミー紀要掲載論文)
2014年2月13日
読んで自分の習慣が正しいことが確認できる都合のいい論文に出会ったりすると、少し目が曇って勝手に重要な論文と思ってしまうことがままある。今日紹介したいと思う論文は、私にとってまさにそのような論文で、今日書くことも個人的な自己満足として無視していただいてよい。論文はフランスの国立保健医学研究所を中心とする共同研究で、アメリカアカデミー紀要オンライン版に掲載されたばかりだ。タイトルは、「Resveratorol and aspirin eliminate tetraploid cells for anticancer chemoprevention (レスベラトロールとアスピリンは4倍体細胞を除去してガンの予防薬剤として有効だ)」だ。タイトルを読んでいただけば私がほくそ笑む理由も、またこの論文のメッセージも理解していただけるだろう。タイトルにあるレスベラトロールというお薬は、ワインに多く含まれている成分としてよく知られているポリフェノールの一種で、抗酸化作用があり、フランス人が健康を保てる秘訣だと考えられている物質だ。当然フランスの威信のかかった研究であることが理解できる。一方、低容量のアスピリンを服用すると、炎症を抑え大腸ガンの予防にもなることが大規模調査で確認されている。この研究では、これらの予防薬に4倍体の細胞を選択的に除去する力があることを報告している。私も不勉強で知らなかったが、様々な原因で2倍体の細胞が4倍体の細胞になることががん化の重要なメカニズムの一つらしい。この研究ではまずレスベラトロールが4倍体のがん細胞を試験管内で選択的に殺す力があることを見つけている。この4倍体細胞除去に関わるシグナル伝達経路を明らかにして、この経路に介入できる薬剤を調べたところ、アスピリンも同じ効果を持つことがわかった。最後に直腸ガンを発症するモデルマウスを用いてレスベラトロールやアスピリンが予防効果を持つかどうか調べると、4倍体細胞が腸管に蓄積するのを押さえることが出来たという結果だ。科学的には、これまで腸管の炎症状態を押さえることでガンの生育を押さえると説明されていたアスピリンが、4倍体細胞に作用して除去するという直接効果があることを示している点が重要だ。しかし、赤ワイン好きで低容量アスピリンを服用している私としては、今の生活習慣がガンに対して新しい効果を持つことを知った意味で大変嬉しい研究だ。ただ、よく読んでみると、マウスに飲ませているレスベラトロールは100mg/kg、アスピリンは25mg/kgと、私が毎日摂取している量よりはだいぶ多い。さて本当に安心できるのか、少し心配だ。