カテゴリ:活動記録
患者さんからいただく最高の勲章:IDMMネットワーク研究助成公募のお知らせ
2014年2月16日
この前ニコニコ動画で対談した日本IDDMネットワークの井上龍夫理事長からうれしい知らせが来た。2005年、多くの皆様からいただいた寄付をI型糖尿病研究の助成として拠出するようになって、助成金累計が1000万円の大台に達した事、そして本年はなんと500万円の助成を行えるようになったと言う知らせだ。これも明確な目的を持って活動し、認定NPOの認可を得られた成果だと感服している。他の患者さんの団体も先ず認定NPOを目指して活動を進めて欲しいと期待している。IDDMネットワーク研究助成の公募は既に募集が始まっており、4月14日が締め切りだが、是非多くの研究者の皆さんが応募される事を願っている(書類などはIDDMネットワークのHP(http://japan-iddm.net/2014_grant_guideline/)参照)。私のホームページでも紹介してきたように、この病気には様々な方向からの希望が生まれている。日本の研究者からも多くの希望が生まれる事を願っている。この分野は国家助成も多く、研究者によっては最高300万と言う額はたいした額ではないかもしれない。しかし、患者さん達が寄付集めをし、自分で運営されている研究助成金は我が国にはほとんどない。その意味で、患者さん達から支持されたということを最も大きな勲章として誇りに感じる研究者が増える事を期待する。
2月16日:恐竜の色はわかるか?(Natureオンライン版掲載)
2014年2月16日
恐竜の再現図には当たり前のように色がついているが、本当は色についての手がかりはほとんどなく、想像の産物と言っていい。2010年に恐竜の色が特定できたと言うセンセーショナルな論文が中国から飛び込んで来たが(Nature 643号1073ページ)、これは色素が閉じ込められているメラノソームの構造の多様性が化石でも確認できたという発見で、本当の色がわかった訳ではなかった。メラノソームとは色素が閉じ込められた細胞器官で、鳥類やほ乳類でこの構造と中の色素の種類が相関している事が知られている。従って、メラノソームの構造の多様性から化石として残された生物の色を予想する事は荒唐無稽な話ではない。この可能性を更に追求したのが今日紹介する中国とアメリカの共同研究で、Natureオンライン版に掲載されている。タイトルは、「Melanosome evokution indicates a key physiological shift within feathered dinosaurs (メラノソームの進化は羽毛恐竜で起こった重要な生理学的変化を示している)」だ。この研究では現存の爬虫類からほ乳類まで181種類の皮膚に存在するメラノソームの大きさと形を操作電子顕微鏡で丹念に調べ、含まれる色素とメラノソームの構造に相関があるか調べている。次に13種類のトカゲ、亀、恐竜、翼竜化石に残ったメラノソームの形態を調べ、現存の動物の結果と比べる事で化石動物の皮膚の色を予想できる可能性を調べている。論文を読んだ印象は、少し期待はずれで、まだまだ化石の色を予想する事は難しいと言わざるを得ない。とは言えこの研究により、爬虫類から翼竜を経て鳥類へと進化が進む過程と、ほ乳類への進化過程で急速にメラノソームの形態の多様性が拡大する事が明らかにされている。爬虫類と比べると鳥類の外見は色の多様性が顕著だが、この論文では色彩の多様性にメラノソームの多様性を軽々に相関させるのは早計であると結論している。なぜなら、あまり色彩の多様性のないほ乳動物でも鳥類と同程度のメラノソーム多様性が見られる事から、おそらくこの多様性は毛や羽を獲得する過程で必要になったエネルギー代謝系に関わる生理学的変化に伴って二次的に生まれたのではないかと結論している。事実、メラノソームの形成に関わるホルモンは、同時にエネルギー代謝や摂食行動調節などに重要な分子である事がわかっている。メラノソームの構造の多様線を単純に色彩の多様性に結びつける事は早計だとしても、もちろんこうして生まれた多様性が、鳥類では色彩の多様性獲得の基礎になって行った可能瀬は残っており、過去の動物の色を知ると言う夢の実現には、鳥類進化の詳しい研究がまだまだ必要な事がよくわかった。起こった事とは言え、実験的に繰り返せない過去を調べる事は骨が折れる。
カテゴリ:論文ウォッチ