11月22日 ヒトレファレンスゲノムをどう設定するのか(Nature Geneticsオンライン版掲載論文)
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11月22日 ヒトレファレンスゲノムをどう設定するのか(Nature Geneticsオンライン版掲載論文)

2018年11月22日
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最近1Kgの基準器が変わったそうだが、人のゲノムにも標準ではないが、参照する為のレファレンスゲノムが存在する。現在のものは米国在住の匿名の13人で、血液型はO型だけというもので、もちろん多様な人間をカバーするのではなく、あくまで比べる参照として使われる。human reference genome consortiamから、その時のコンセンサスが発表されており、現在では2013年に発表されたGRCh38が標準ゲノムとして用いられている。ただこのレファレンスゲノムの背景には、ゲノムが極めて連続的なものだという前提があり、個人のゲノムを基礎に決定した一つの標準にアップデートを重ねれば良いとする現在の方法を続けて良いのかについては議論が起こっている。そこで、各民族のゲノム全体をカバーするパンゲノムも標準として利用できないかの模索が始まっている。

今日紹介するジョンズ・ホプキンス大学からの論文はアメリカに住むアフリカ系の人910人のゲノムデータを用いて、アフリカ系のパンゲノムを制定できないか試みた研究でNature Medicineオンライン版に掲載された。タイトルは「Assembly of a pan-genome from deep sequencing of 910 human of African descent (アフリカ系の910人のゲノム解読データから、ゲノムの総体を組み立てる)」だ。

この研究では、910人のゲノムを繰り返し調べた解読データを、現在のレファレンスゲノムと比較し、まずこのレファレンスで関連づけられなかった新しい配列を集め、その配列が、複数の人で共有され、決して個人的な特異配列でないことを確認し、それを集めてゲノム総体として標準化できるかを確かめている。

結果だが、現在のレファレンスゲノムで参照できない部分がなんと300Mb近く存在する。すなわちアフリカ系のゲノム解析結果の10%近いゲノム配列(12万5千種類のゲノム領域に対応)が、現在得られるレファレンスゲノムには存在していない事を示している。この12万5千種類の領域がゲノムのどこに存在するのか調べているが、ほんの一部に当たる302領域だけしかゲノム上の位置を完全に特定できていない。また部分的に位置を特定できるのが1246領域で、12万5千領域のほんの一部にしか過ぎない。すなわち、染色体のどこに存在しているのか分からない領域が10%も存在することになる。

ところが標準ゲノムではなく、中国人、韓国人ゲノムと比べると、より合致する部位が多く、標準ゲノムとマッチしなかった300Mbのうち120Mbは新しく決められた中国人か韓国人のゲノムと一致している。

残念ながら、見つかった多くの領域のゲノム上の位置は現在のところ全く分からず、結局問題提起で終わっており、この結果を標準パンゲノムとして使うには各領域の完全な場所極めが必要だ。ただ、見直しが必須というところに来たことは確かなようだ。」
カテゴリ:論文ウォッチ