9月25日 長脂肪酸代謝の長期代謝を測定する(Nature Medicine オンライン版掲載論文)
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9月25日 長脂肪酸代謝の長期代謝を測定する(Nature Medicine オンライン版掲載論文)

2019年9月25日
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私たちが小学生の頃は、核保有国の核実験により、放射能を含んだ雨が実際に降っていた。もちろんその時に放出された様々なアイソトープ核種は大気中を漂って、人体に取り込まれた。ただ、1963年地上核実験禁止条約が締結されてからは、核実験による核種が大気中に含まれる量は指数関数的に低下した。この結果、核実験ででた放射線量と、自然のアイソトープの量を測ることで(核実験種のみが低下する)、そのアイソトープが体に取り込まれた年齢を測定することができる。この核実験によるアイソトープを細胞の長期ターンオーバー測定に利用したスマートな研究者がJonas Frissenで、その後このテクニックをSpaldingらは脂肪細胞代謝に利用し、太ると脂肪細胞が増えることを示して注目された。

今日紹介する同じSpalding研究室からの論文は同じテクニックを細胞ではなく脂肪酸の代謝に使った研究で、Nature Medicineオンライン版に掲載された。タイトルは「Adipose lipid turnover and long-term changes in body weight (脂肪組織の脂肪代謝と体重の長期変化)」だ。

アイソトープを用いて短期の脂肪代謝を調べることはできるが、5年単位という長期単位で調べることは簡単でない。代わりに、この研究では核実験で排出されたC14が脂肪酸に取り込まれた年代を測定して、脂肪年齢を算出する方法を開発した。すなわち、C14/C12比を使って脂肪酸ができた年代を測定し、脂肪組織にどれだけ多くの古い脂肪酸が残っているのか算出する方法を開発している。すなわちこの指標は、脂肪酸が分解され消滅させられる速度を反映している。

あとは、この脂肪年齢を用いて、様々な指標と比較している。まず、脂肪年齢はほとんどの人で年齢とともに増えていく。これは脂肪のターンオーバーが年齢とともに悪くなることを示し、食べたり、運動が減ったりと太る様々な原因はあるが、古い脂肪を取り除く活性が低下することが年をとるとともに太りやすくなる原因であることがわかる。

基本的には、核実験のC14を利用することで、細胞だけでなく、長期レベルで脂肪自体のターンオーバーを調べられるようになったというのがこの研究のハイライトと言えるだろう。

面白いことに、ダイエットをして痩せる可能性があるかどうかを調べると、実際には脂肪年齢が大きい人、すなわち古い脂肪除去活性が低い人の方がダイエットに成功する。この理由だが、このような人は古い脂肪の除去活性を上昇させる余地がある結果、食事制限によるダイエットを成功させやすいことがわかる。

このような意外な結果も見つかるので、脂肪の摂取だけでなく、脂肪年齢を測定してダイエットや老化を調べることが重要だという結論だ。しかし一旦成功すると10年以上同じテクノロジーを守っている研究室があるのに感心した。

カテゴリ:論文ウォッチ