ビタミンC(VitC)がガンに効果があることはかなり昔から提唱されているが、一部の人以外にはほとんどおまじないのレベル以上にはならなかった。ところが、静脈注射で1g/Kgという大量療法が提唱されるようになってから、TETを介してメチル化を低下させる、あるいはガン特異的に鉄代謝を崩壊させガンを殺すなど科学的結果がトップジャーナルにも報告されるようになり、私もしっかりと臨床治験を進めるべきだと考えるようになった。実際米国ではClinical Trial Govに登録された治験が膵臓ガンなどで行われており、効果が明らかになれば使わない理由なないだろう。
時間のかかる臨床研究とは別に基礎研究はさらに進むようで、今日紹介するイタリア・トリノ大学からの論文は免疫系に働いてチェックポイント治療の効果を後押しするという研究で、2月26日号のScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「High-dose vitamin C enhances cancer immunotherapy(高濃度ビタミンC治療はガンの免疫治療を高める)」だ。
研究は単純で、VitC 2g/kgを週5日投与する大量療法が一定の効果があるいくつかの移植腫瘍モデルを用いて、T細胞に対する抗血清を用いて免疫細胞の機能を抑えると、VitCの効果がなくなるという発見から始まっている。そして、CD4T、CD8Tの両方がVitCの効果に必要であることを示し、メカニズムはわからないがVitCが免疫機能を高めることを示している。
免疫を高めることがわかれば、当然チェックポイント治療との相性を確かめることになるが、すい臓ガン、乳ガンなどを用いた実験で、anti-PD1およびanti-CTLA4の両方にVitCを組み合わせると、ガンをほぼ抑え込むことができることを示している。
他にも、修復機構が壊れた大腸ガン細胞を用いた、変異の生成と、チェックポイント+VitCの影響や、ガン組織へのリンパ球の浸潤に対する影響なども実験しているが、割愛していいだろう。要するに、VitCはガン免疫を高め、その結果チェックポイント治療との相性もいいという結果だ。
ガンの増殖以外ほとんど何も調べていないシンプルな論文で、よく掲載されたなと思うが、結局しっかりとした臨床治験を待つ以外にないが、Clinical Trial Govを見ると世界各国、信頼の置ける大学や病院で45の治験が走っているようなので、特効薬になるかどうか結果がわかるまでには時間はかからないと思う。