9月3日 ヤモリからわかる性染色体の進化(8月27日 Science掲載論文)
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9月3日 ヤモリからわかる性染色体の進化(8月27日 Science掲載論文)

2026年9月3日
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性染色体というと、一般にはXX(メス)/XY(オス)を思い浮かべると思うが、他にも鳥類に代表されるZZ(オス)/ZW(メス)も存在する。さらに遡って魚類や両生類になると、両方のタイプの性染色体が存在するだけでなく、性染色体の区別がつきにくい種も存在し、極めて多様だ。以上のことから、まず環境によって性が決まる、即ちはっきりと性染色体を持たない種から、XYとZWという2つのタイプの染色体によって性を決める方法が分かれてきたと考えられている。

同じような多様性は、Gecko(ヤモリ)でも見られることが知られることから、ヤモリは性染色体進化過程を知る上で重要な動物として研究されている。今日紹介する中国中山大学からお論文は、性染色体を持つヤモリの全ゲノム解析から、性染色体の形成過程を明らかにしようと考えた研究で、8月27日Scienceに掲載された。タイトルは「Genomic predisposition is associated with the direction of sex chromosome evolution(性染色体進化の方向性はゲノム自体の傾向で決まる)」だ。

この研究では、温度で性が決定される3種、XY型5種、そしてZW型11種の全ゲノムを高いカバレージで解析している。これにより、系統樹とともに、性決定に関わる遺伝子などのクラスターから性染色体のタイプを決めることができる。共同研究者に北京ゲノムが加わっており、野生動物でもかなり高いレベルの全ゲノム解析ができている。それでも性決定タイプが決められないヤモリも2種類存在した。

これらヤモリの系統樹に性決定タイプをマップすると、性決定法が系統樹とは全く無関係に発生していることがわかる。また近縁の系統でも、XYタイプもあればZWタイプもあり、性決定はほかの遺伝子進化とは全く別の歴史を持つことがわかる。

温度により性が決定される種のように、明確に性染色体が存在しない種から性染色体が発生したと考えると、性染色体は常染色体から進化したと考えられる。事実、それぞれの種の性染色体の起源になった常染色体を特定して、それが性染色体として固定する過程を追跡することができる。

性染色体として選ばれると、互いに組み換えが起こらないように染色体内で逆位などが進むとともに、片方では急速な遺伝子の喪失が起こる。次にどの染色体が性染色体として選ばれるのか追跡すると、祖先種に存在するほとんどの染色体から性染色体がランダムに選ばれていることがわかる。しかも、例えば祖先種の10番目の染色体は、ある種ではZWシステム、ある種ではXYシステムとして選ばれるが、様々な種で選ばれている16番目の染色体は全ての種でZWシステムを形成している。一方、11番染色体はXYシステムに進化する。重要なのは、これらの選択は系統樹と無関係に起こっている。

性染色体の発生時期を調べると、様々な種でランダムに起こっているように見える性染色体の発生は、地球が急速に寒冷化した時期に一致する。おそらく、それまで温度差で性が決まっていた種の維持が出来なくなるため、常染色体に存在した性決定に関わる遺伝子の選択を性染色体として固定化する過程が進んだと考えられる。この過程で組み替えの抑制が起こるが、ヤモリの場合ほとんどが逆位を繰り返すことで進み、この変化は染色体上で起こった歴史=進化階層として残っているのを確認できる。

どれを性染色体に選ぶかの選択の原因を調べるために、祖先染色体上に発現の性差が存在する遺伝子を調べると、オスで発現が多い遺伝子が多い場合はZWシステムへと進化し、一方オスで発現が高い遺伝子がが多く乗っている染色体の場合はXYシステムを形成する確率が高いことを示している。即ち、通常は転写調節で決まる発現の性差を性染色体で固定化して性決定を安定化させていることがわかる。

以上、性染色体の発生過程を、環境変化による常染色体性決定の不安定化が引き金となり、発現の性差がある遺伝子の多い染色体が選ばれて、主に逆位で組み替えを抑えた進化階層を形成し、その後片方で遺伝子の喪失が起こるという4段階に整理したおもしろい研究だ。このように「役に立たない分野」での中国は大躍進している。

カテゴリ:論文ウォッチ
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