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9月26日 細胞老化を標的にして線維症を抑えガン免疫を高めるナノ粒子(9月24日 Science 掲載論文)

2026年9月26日
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老化の一つの原因が老化しても組織に居座る細胞が増加することで、老化細胞を標的にして新陳代謝を早める Senolysis は老化研究の重要分野になっている。問題は senolysis を誘導する方法が見つかっても老化を防ぎたいと思うと、それに必要な薬剤などを飲み続ける必要がある。従って、動物実験で寿命が延びることを示せても、寿命の長い人間で治験を行うことは難しい。事実、抗老化を目的とした senolysis 治験の成功例はまだ聞いたことがない。代わりに senolysis は、肺線維症や腎硬化症など、線維化が進む病気の治療として効果があることが知られている。

今日紹介する米国 スローンケッタリング ガン研究所からの論文は、老化細胞で細胞接着分子Pセレクチンが強く発現していることを利用して、老化細胞特異的 senolysis による線維化治療法を開発する中で、この治療効果が老化細胞一般ではなく、老化マクロファージの senolysis を介していることを明らかにした、senolysis 分野では重要な研究で、9月24日 Science に掲載された。タイトルは「Senescence-directed nanotherapy ameliorates fibrosis and overcomes immune exclusion in cancer(老化細胞を標的にしたナノ粒子治療は線維化を軽減し腫瘍免疫を高める)」だ。

このグループはPセレクチンに強く結合する fucoidan をナノ粒子として薬剤をPセレクチン発現細胞にデリバリーする方法を開発しており、腫瘍の微小環境を標的にしてMEK阻害剤を投与、ガンの様々な治療を高められることを既に示している(2016 Science Translational Medicine, 8:345)。 

その後の研究、Pセレクチンが老化細胞の関わる線維化病巣で発現しているという可能性を示唆する観察が増えたことから、fucoidanナノ粒子 (FNP) で線維化を抑えられるのではないかと着想し、この研究を始めている。まずヒトの肝硬変や肺線維症組織でPセレクチンの発現を見ると、特に細胞老化のマーカーを発現している細胞でPセレクチンも発現が上がっている。これを確かめるため、マウスの肝硬変や肺線維症を誘導して調べると、線維化が起こっている領域でPセレクチンの発現が上昇している。

これを確認してから、次にFNPにBcl2阻害剤、あるいは転写因子BET阻害剤を詰めて線維化モデルに静脈注射すると、期待通り線維化を強く抑制することが明らかになった。おもしろいのは、Bcl2阻害剤ではPセレクチン陽性の老化細胞が低下することにより線維化が抑えられるが、BET阻害剤の場合は老化細胞はそのままで、コラーゲンなどの転写の変化で線維化が抑えられる。また、これらの薬剤はそのまま投与すると副作用が強いが、FNPでデリバーするとほとんど副作用はない。

Pセレクチンを発現する老化は多くの細胞で見られるので、どの細胞が実際の標的になっているのか、Pセレクチンと老化マーカーであるβGalの発現を指標に様々な細胞をソーティングして、FNP-薬剤の効果を調べると、なんとマクロファージだけが FNP を取り込んだ後、最終的にリソゾームまで粒子を運んで阻害剤を遊離することがわかった。即ち、Pセレクチン陽性細胞全体が標的ではなく、ナノ粒子による治療はマクロファージが主要な標的で、このマクロファージが組織全体の老化と線維化を調節していることが明らかになった。Single cell レベルの解析から、マクロファージの中でも脂肪を処理する能力を持つマクロファージが、組織線維化の主役であることも明らかにしている。この結果は、今後病的な線維化、及び加齢による線維化、及びその senolysis による治療も、同じマクロファージから見直してみることの重要性を強く示唆している。

さらに、この研究では病的線維化として、増殖の強い腫瘍の周りの線維化も同じではないかと考え、線維化を誘導した肝臓に腫瘍を移植する実験系で、FNP の効果を調べている。結果は期待通りで、FNP により Bcl2阻害剤を投与すると、腫瘍に薬剤が到達できるようになり、それまで効果がなかった抗ガン剤が効くようになる。そしてこの効果は腫瘍周辺に集まるマクロファージを senolysis で除去することで起こること、また薬剤による治療をガンに対する免疫が助けていることを発見する。即ち、Pセレクチン陽性老化マクロファージを senolysis させることで、腫瘍周辺の線維化が消失し、薬剤がガン細胞へ移行しやすくなると同時に、T細胞によるガン免疫反応のアクセスが高まり、治療効果が安定化することがわかった。

最後に人間でも同じことが言えるかを調べるため、ガン組織のデータベースを調べ、ガン増殖を助けるマクロファージが存在するとされてきた組織にPセレクチンマクロファージが存在すること、免疫チェックポイント治療に反応しないグループでこのようなマクロファージが多いことを確認している。

以上が結果で、senolysis の標的をマクロファージに絞れたことがこの研究の大きな貢献で、線維化だけでなく、ガン治療にも新しい可能性が生まれた重要な研究だと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ
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