10月6日 新しいGPCR阻害方法の開発(9月30日Natureオンライン掲載論文)
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10月6日 新しいGPCR阻害方法の開発(9月30日Natureオンライン掲載論文)

2026年10月6日
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今年のノーベル医学生理学賞は、Karl Deisseroth, Peter Hegemann, Georg Nagelの3人が、光に反応して開くチャンネルロドプシンの発見と、それを動物の脳神経操作に仕上げ、光遺伝学の時代を造った業績で受賞した。いつ受賞してもおかしくない業績で極めて順当なノーベル賞といえる。毎年解説をYoutube配信するのだが、Deisseroth 論文についてはYoutubeでも何度も解説しているので、今年の解説はやめてもいいのではないかと思っている。もちろん光遺伝学のここが知りたいというリクエストがあれば解説することにして、当分は静観する。

さて、今日紹介するハーバード大学からの論文は、光遺伝学とは全く異なる話で、最も重要な創薬ターゲットGPCR(Gタンパク質共役受容体)の全く新しい阻害方法の開発で9月30日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「GPCR antagonism via rewiring of receptor trafficking and degradation(受容体の輸送と分解を再編成するGPCR阻害)」だ。

このグループはユビキチン化を通してタンパク質を分解する薬剤の開発などを手がけてきているが、今回はGPCRが刺激されるとアレスチンと結合して、GPCRを細胞内のエンドゾームに取り込まれることをGPCRの不活化に利用できないかと考えた。もちろん刺激によりエンドゾームに入るのだが、この細胞内への取り込みを高めるために、エンドゾームから細胞膜へのシャトルを高速で行っているトランスフェリン受容体(TfR)とGPCRを結合させることで、GPCRの細胞膜から細胞内への移行を促進し、受容体機能を抑えられるのではと着想した。

この目的のために、様々なGPCRに対する抗体と、TfRに対する抗体をキメラにして、GPCRをTfRとリンクさせうる実験を行い、ほぼ全ての受容体でGPCRが小胞体に輸送されることで細胞膜から消失し、GPCRの機能を阻害できることを示している。GPCR阻害剤は医療で多く使われているが、化合物を探索し薬剤として使えるまでの大変な努力と比べると、どの受容体でも抗体さえあれば阻害剤を造ることが可能になる。まさに画期的な方法と言える。

実際に何が起こっているのかを調べるため、GPCRに蛍光タンパク質を結合させ、この蛍光タンパク質に対する抗体とTfRに対する抗体が合体したキメラ抗体を加えると、蛍光ラベルされたGPCRの機能を抑制する。即ち、GPCRの機能とは全く無関係に機能を抑制することができる。GPCRと結合した蛍光を追跡することでGPCRが細胞表面からエンドゾームに移行するだけでなく、完全にそこで分解されることも明らかになった。即ち、リソゾームをうまく使うタンパク質分解誘導薬が可能であることを示している。

あとは、いくつかのGPCRを選んで、その阻害に必要な条件を探っている。はっきりしているのはただ抗体があれば阻害できるというものではなく、GPCRの性質によりGPCRに対する抗体のアフィニティーや、TfRに対するアフィニティーを調整する必要がある。このような検討には蛍光ラベルしたGPCRは同じ分子に対する様々な抗体を条件設定に使えるので極めて役に立つ。これとTfRに対する様々なアフィニティーの抗体を組み合わせて分解効率を比べることができる。ただ様々な組み合わせを試したとしても、阻害剤を探すよりははるかに条件探しは簡単だ。その例として、リラキシンに対するGPCR=RXFP1阻害条件を検討している。このGPCRはリガンドとGPCRが同じ細胞に共存するオートクラインシステムで、細胞表面に発現する受容体の数も少なく、これまで全く阻害剤が開発できなかった他のGPCRと比べると難度は高いが、RXFP1の機能をほぼ抑制できるキメラ抗体を完成させている。これにより薬剤がない卵巣ガンの転写プログラムを抑えることが出来ることを示している。

次は高血圧に使われるアンギオテンシン受容体阻害剤の開発で、完成したキメラ抗体をiPS由来心臓細胞のアンギオテンシンに対する反応を完全に抑制して、正常な心拍数を維持することを示している。

最後に生体内でも効果があるかを調べる目的で、炎症に関わるTh17細胞の移動を誘導するケモカイン受容体CCR6の機能を、ヒト化したマウスの皮膚乾癬炎症モデルを用いて調べている。キメラ抗体投与で、Th17細胞の遊走はほぼ完全に抑えることができる。また、皮膚炎の症状も抑えることができる。

結果は以上で、もっと生体内での実験を増やして臨床応用が可能かを検討することが必要だと思うが、標的細胞に合わせてGPCRとTfRに対する抗体を組み合わせるだけで、難しい構造解析なども全てすっ飛ばして阻害剤が開発できることは画期的だと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ
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