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3月10日:65歳までは低タンパク食がお勧め(3月4日Cell Metabolism掲載論文)

2014年3月10日
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遺伝的にがんや糖尿病になりにくい人達がいる。この原因になる遺伝子を突き止めることで、普通の人の生活改善のヒントになる事がある。そんな仕事が今日紹介する研究で、南カリフォルニア大学のグループにより3月4日号のCell Metabolismに掲載された。タイトルは「Low protein intake is associated with a major reduction in IGF-1, cancer, and overall mortality in the 65 and younger but not older population (65歳以下での低タンパク摂取はIGF-1の低下とともに、がんや全般的な死亡率の低下につながるが、65歳以上ではそうではない)」だ。この研究グループは既に、IGF-1や成長ホルモン受容体遺伝子の変異が発ガンを抑制する事を突き止めていた。この遺伝学的研究を一般の人の健康について拡大できないか調べるため、先ずがんの頻度と相関する食生活について、50歳以上の健康コホート解析データを6000人程度集め検討している。その結果65歳までにがんや糖尿病で亡くなる頻度がタンパク質摂取と最も相関している事を見つけた。ただ、65歳がポイントで、この年齢をすぎると今度は高タンパク食を取っている方ががんで死ぬ確率は減るようだ(糖尿病で死ぬ確率は65歳以上でも高タンパク摂取群の方が高いようだが)。では高タンパク食を取ると言う事と、血中のIGF-1は相関するのだろうか?次にこの点について調べ、蛋白摂取量と血中のIGF-I濃度が比例している事を示し、高タンパク食がIGF-Iを上昇させる事でがんのリスクを上げているとするシナリオを提案している。このグループは、更に統計データを一般的な実験データとして確かめるため、マウスを用いた実験も行っている。結果はヒトでの統計データと一致し、高タンパク食を長期に与えるとがんの発生は上昇すると同時に、血中のIGF-I濃度が上昇する。残念ながら動物タンパク質を植物タンパク質に変えた所で、この傾向を止める事は出来ないようだ。また、酵母を使った実験で培地のアミノ酸量を上げると遺伝子突然変異の発生率が3−4倍増える事を示し、発ガンが上昇する一つの原因が突然変異の誘導である事も示唆している。いずれにせよこの研究から得られるアドバイスは、中年期にはあまり高タンパク食は取らないこと。しかし65歳からはタンパク質の吸収が低下するため、元気で暮らすためにはタンパク質はある程度頑張って取った方が良いと言う結果だ。常識的な結論だが、統計データとマウスの実験データを単純に組み合わせているのは、疑り深い私には少しこじつけがすぎるように思える。ただ、IGF-1の血中量は次の検診から是非調べてみたい。
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