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3月23日:ヒトは何種類の臭いを嗅ぎ分けられるか(3月21日号Science掲載論文)
2014年3月23日
「一体何種類の色を見分けられるのか?」「一体何種類の音を聞き分けられるのか?」「一体何種類の臭いを嗅ぎ分けられるか?」と言った疑問を私自身いまだだかっていだいた事はなかった。しかし広い世界にはそんな疑問をいだくだけでなく、科学的に検証しようとしている人が必ずいる。今日紹介する論文は「何種類の臭いを嗅ぎ分けられるか?」についてのロックフェラー研究所からの研究で、3月21日号のScience紙に掲載された。タイトルは「Humans can discriminate more than 1 trillion olfactory stimuli(ヒトは1兆種類以上の臭いを嗅ぎ分けられる)」だ。
これまでの研究でヒトは750万の色彩、35万の音を区別できる事が示されていたが、臭いについては1927年の研究で約1万種類と決められた後ほとんど調べられていなかったようだ。しかし今、臭いの感覚機構についての理解は急速に深まっている。臭いは様々な脂溶性の化学物質が混じりあったものだが、私たちのゲノムの中にある1000種類以上の臭いセンサーを別々に発現している臭い細胞が様々な組み合わせで反応する事によりそれを嗅ぎ分けている。従って、臭いの嗅ぎ分け実験も一個一個の異なる臭い分子を分別できるかではなく、どれほど多様な分子の組み合わせを区別できるかを調べるべきだと言うのがこの研究の動機だ。研究では、128種類の単一分子を集め、その分子を組み合わせて臭いを作り、組み合わせる分子の数を10、20、30と増やす事で臭いの複雑度を上げている。実験では、26人のボランティアを用いて、2種類の違った組み合わせで調合した臭いを区別できるかどうかを調べている。10、20、30種類の組み合わせを作る際、分子の3割、6割、9割が重複する様にサンプルを調合する。要するに分子の重複度が大きいほど臭いの差が少ないと期待している。さて結果は驚くべき物で、確かに30種類の分子混合で90%分子の重複がある場合は誰も区別できないが、それ以外の組み合わせはかなりの人が区別できると言う結果だ。この結果から計算すると人間は少なくとも1兆種類の臭いを嗅ぎ分けられるといううれしい結果だ。しかしもっと驚くのは、26人程度の小さな集団の中でも大きな嗅ぎ分け能力の差が見られる事で、今回の実験では1000万種類をようやく嗅ぎ分けられる人から、10の28乗種類のようにとてつもない種類の臭いを嗅ぎ分けられる人が見つかっている。なら、次は職業と嗅ぎ分け能力の関係を調べるともっと面白いい研究が出来るのではと思った。