10月26日 インフルエンザに対するユニバーサルワクチンは可能か(10月25日号 Science および10月17日号 The Lancet 掲載論文)
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10月26日 インフルエンザに対するユニバーサルワクチンは可能か(10月25日号 Science および10月17日号 The Lancet 掲載論文)

2019年10月26日
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インフルエンザのシーズンが近づいてきて、マスメディアでもワクチン接種を呼びかけている。ただどのワクチンを注射するのか、厚労省資料によると今年のワクチン供給量は3000万本に近く、ほぼ接種希望に対応できるとしている。問題はインフルエンザといっても多様で、どのウイルスが今年はやるかの予想を立てた上で、ワクチン製造を行う必要がある点で、予想が完全に外れたりするとすべて無駄になる。

今年のワクチンについては、3月終わりにWHOが推奨したウイルス系統について国内メーカーで製造効率を確かめ、その結果を4月に2回開かれた審議会で検討した後製造に入っている。

この予測に伴う不確実性を克服するためには、一本のワクチンですべてのインフルエンザウイルスに対して抗体を誘導できるワクチンを開発する必要があり、このための努力が重ねられてきているが、なかなか実現していない。

今日紹介するThe LancetとScienceに掲載された2編の論文は、このような試みを代表するもので、ユニバーサルインフルエンザワクチンもいつかは実現する可能性を示す研究だ。

最初のシンシナティ大学を中心とする論文は変異の少ないhemagglutininのストーク部分に対する抗体を誘導するためのワクチンの第一相治験で、タイトルは「Immunogenicity of chimeric haemagglutinin-based, universal influenza virus vaccine candidates: interim results of a randomised, placebo-controlled, phase 1 clinical trial (ヘマグルチニンキメラ分子を基盤とするユニバーサルワクチン候補の免疫原性:無作為化盲検による第1相治験)」だ。

詳細は全て省いて簡単に紹介するが、B 型も含むほとんどのhemagglutinin(HA)に共通のストークスに対する抗体を、H8、H5のヘッドと組み合わせたキメラタンパク質を用いて効率に誘導しようとする方法で、普通のHAワクチンの場合どうしてもヘッドに対する抗体ができてしまうのを、ヘッドを変えて免疫することで、本来抗体ができにくいストーク部分のメモリー反応を誘導するという戦略だ。

治験のアウトカムは抗体ができたかどうか、そしてそれに対するメモリーB細胞が誘導されたかどうかだが、AS03ワクチンと組み合わせると、ヘッドを変えたワクチンを2回接種されたグループは、1ヶ月以内に高いストークスに対する抗体およびB細胞が誘導されることから、ユニバーサルワクチンとして使える可能性が高いという結論だ。次は実際に流行を予防できるかの治験が待っているが、期待したい。

もう一編のマウントサイナイ医大からの論文はインフルエンザの感染を防ぐことのできる抗体を分離したという論文で、タイトルは「Broadly protective human antibodies that target the active site of influenza virus neuraminidase (インフルエンザのニューラミニダーゼに対するヒト抗体は広い範囲のインフルエンザウイルスを防御できる)」。

この研究ではやはり変異が少ないニューラミニダーゼ(NA)を標的にしており、感染した患者さんからヒトモノクローナル抗体を3種類分離し、その特異性を様々なNAと反応させると、1G01,!E01という抗体はほとんどのNAに対して反応することがわかった。

そこでマウスに感染させる実験でそれぞれの抗体が感染や病気の発症を止めるか調べると、1G01,1E01ともにほとんどのインフルエンザの発症を防ぐことができ、なかでも1G01は調べたすべてのウイルスによる病気を予防できた。

これは抗体の話だが、それぞれの抗体が認識しているNA部分が特定できたので、今後この部分を免疫原として用いるユニバーサルワクチンの開発も可能になると期待できる。

カテゴリ:論文ウォッチ