12月16日 世界最古の狩の絵がインドネシアで発見された(12月12日 Natureオンライン版掲載論文)
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12月16日 世界最古の狩の絵がインドネシアで発見された(12月12日 Natureオンライン版掲載論文)

2019年12月16日
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いつ我々の先祖は絵を描くようになったのか?ネアンデルタール人は絵を書いたのか?これらの疑問は現在人類進化学の最大の問題となっている、というのも、言語発生に必要なシンボル化能力の発生は、まず絵画を描く行為で検証できると考えられているからだ。すなわち、絵画が発見されると、その人間が言語を話していた可能性が高まる。

では世界最古の絵画はいつ頃書かれたのだろう?はっきりとした像ではないが、絵画のようなものなら6万5千年前のスペインの洞窟に残っており、年代からネアンデルタール人によるとしか考えられず、これが絵画能力を示すのか、そうでないのか現在も議論が続いている。一方、私たちが洞窟絵画として思い浮かべるような動物の像がはっきり描かれているのは4万年以上前には存在せず、またその全てはヨーロッパで製作されたと考えられてきた。

ところが今日紹介するオーストラリア・グリフィス大学を中心とする国際チームの論文は、宗教的な人間像を含む動物の絵が描かれたインドネシア・スラウェシ島(以前はセレベス島と呼ばれていた)の洞窟画は、4万年より前に描かれたことを示す研究で、12月12日 Nature オンライン版に掲載された。タイトルは「Earliest hunting scene in prehistoric art(有史以前の最古の狩の絵)」だ。絵の一部はNature サイトで一般にも公開されている(https://www.nature.com/articles/d41586-019-03826-4 )。

この論文のメッセージは単純だ。インドネシア・スラウェシ島で見つかった洞窟絵画には、大きな水牛や、イノシシなどの動物とともに、狩をする人間の姿が描かれており、しかも描かれた人間の中には動物の頭を持つ獣人の姿も描かれている。すなわち、狩の状況を思い出してもう一度表現する能力をもち、しかも獣人(おそらく動物のお面をつけたか、被り物をつけた人間)を参加させて、安全を祈願したり、動物への鎮魂の意を表したり(これらは全て私の勝手な想像)といった、宗教的な精神性を持つ人間がインドネシアに存在していたことになる。

もちろん同じような絵や彫刻はヨーロッパにも出土しており、絵の内容だけでは「なるほどインドネシアにもあるのか」で終わってしまうのだが、なんと絵画の年代測定を行うと、同じ洞窟の壁に描かれた最も古い像は4万3千年前、最も新しい水牛や人間でも4万1千年まえに描かれたと推定され、ヨーロッパで見られる最も古い狩の絵と比べるとさらに古い、世界最古のものであることがわかった。

結果は以上で、実際には描かれた絵画の年代測定は難しいことから、この研究で使われた最新の方法が正しいかどうか、議論が続くと思われる。

個人的な空想をめぐらせると、インドネシアにこのような高いシンボル化能力を持った人間が存在したことは納得できる。というのも、アフリカから世界へと広がった我々の先祖にとって、先が見通せない海を渡るという決断には、船を作るシンボル化能力と、見えない先に生活できる陸地を想像する力と、集団をまとめる力が必要だったはずで、当然優れた絵画を描く能力がないと、不可能だっただろう。すなわち、優れた能力を獲得した集団だけが、海を渡ったはずだ。

このようにまだまだロマンは尽きない。

カテゴリ:論文ウォッチ