7月26日 小腸で合成された善玉コレステロールが肝臓の炎症を抑える(7月23日 Science 掲載論文)
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7月26日 小腸で合成された善玉コレステロールが肝臓の炎症を抑える(7月23日 Science 掲載論文)

2021年7月26日
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善玉コレステロール、悪玉コレステロールという用語は、それぞれHDL、LDLに対応する言葉として一般の方に広く認知されている。それぞれが、なぜ身体に良かったり悪かったりするのかについては、理解が進んできているが、炎症という切り口は、両者の機能を考える上で重要だ。

というのも、動脈硬化にせよ、糖尿病にせよ、同じ内因性炎症メカニズムが核になっていることが明らかになり、LDLやfreeコレステロールが炎症を誘導する細胞内のインフラマゾーム形成を活性化することがわかっている。

一方、HDLの作用は血中のコレステロールを回収する働きで善玉コレステロールと呼ばれているのだが、実際にはLPSを中和することで炎症に直接関わることも知られている。

今日紹介するワシントン大学からの論文は、小腸で作られるHDL3が門脈を通って直接肝臓に入り、クッパー細胞のLPSによる活性化を阻害して炎症を抑える働きがあることを示した研究で7月23日号Scienceに掲載された。タイトルは「Enterically derived high-density lipoprotein restrains liver injury through the portal vein(腸由来のHDLが門脈を介して肝臓障害を抑える)」だ。

まずタイトルを読むと、「HDLは肝臓で作られているのに、腸で合成されたHDLがなぜ必要になるの?」と違和感を感じる。実際、HDL合成に関わるコレステロールトランスポーターABCA1は小腸でも強く発現しており、小腸でのHDL合成の必要性はよくわかっていなかった。

この研究では、まず小腸で合成されるHDLは、肝臓で合成されるHDLより小さなサイズのHDL3と呼ばれるタイプで、門脈中のHDLのほとんどを占めることを明らかにしている。

そして、この小型のHDL3こそがLPS結合性タンパク質と結合して、LPSと自然免疫に関わるTLR4との結合を阻害し、これにより肝臓のクッパー細胞の自然炎症誘導を抑えていることを明らかにしている。実際、肝臓で合成されるHDL2ではこの活性は低い。

この結果から、肝臓で合成できるLDLではなく、門脈へと移行できる小型LDL3をわざわざ小腸で合成することで、肝臓を炎症から守っていることが想像される。そこで、小腸の2/3を切除することで、腸内細菌叢のLPSの門脈への流入を高める方法を用いて誘導する肝臓の炎症モデルを用い、このとき残った小腸でのHDLの合成をノックアウトする実験を行い、期待通り炎症が増強することを確認している。

HDL合成に関わるABCA1遺伝子発現誘導にLXR核内因子が関わることが知られている。そこで、小腸切除による肝臓炎症誘導モデルマウスに、経口的に定量のLXR刺激化合物GW3965を投与すると、この薬剤は残っている腸管内だけで働き、腸内でのHDL合成を高め、肝臓での炎症や線維化遺伝子の発言を抑え、肝臓の炎症を抑えることを明らかにしている。

詳細なデータは全て割愛して結果を紹介したが、なぜHDLをわざわざ小腸で合成する必要があるのか、その理由がしっかり理解できた。

著者らは、この作用がLPSだけに限らないと考えているようで、もしそうなら経口的に少量のGW3965を服用することで、肝臓の炎症一般をかなり抑える可能性すら存在する。期待したい。

カテゴリ:論文ウォッチ