5月11日 一度に全てのパラメーターを解析するMRI(5月6日 Nature オンライン掲載論文)
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5月11日 一度に全てのパラメーターを解析するMRI(5月6日 Nature オンライン掲載論文)

2026年5月11日
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これまでMRIは高い解像度のイメージを得るため、構造を見るためのT1強調画像、血液を強調したT2強調画像、水の動きを調べる diffusion 、そして様々な分子を検出するスペクトロスコピーを別々に行う必要があった。ただ、T1・T2を一回の撮影で取得する技術も進んで来ている。しかし、神経伝達因子や代謝物を測定する MRspectroscopy を同時に組み合わせることはほとんど行われていない。

今日紹介するイリノイ大学からの論文(と言っても著者の全員が中国出身の研究者)は、一度に様々なMRイメージを獲得する方法の開発研究で、5月6日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Multiplexed magnetic resonance imaging(多重化磁気共鳴イメージング)」だ。

目的はシンプルで、水分子の共鳴を検出する T1、FLAIR 等に加えて、N-acetylaspartate 、inositol 、cholin 、 creatine 、gulutamate 、glutamine 、lactate 、GABA 、glutathione 、 taurinn 、aspartylgutamate など、脳の代謝や神経機能に関する分子の分布を同時に撮影するという課題にチャレンジしている。詳細は全く理解できないが、励起パルスも異なるだろうし、エコーの周波数、時間要素をはじめとして多くのデータが混じっているので、それを分別することが如何に難しいか、素人でも想像できる。

論文ではこれを可能にする技術についてまず詳しく述べている。ただ、素人理解をザクッと述べると、要するに多くの分子情報をともかく混合されたまま取得し、それをAI及び物理モデリングを通して分離し直すことを可能にする技術と言える。

繰り返すが、本当の理解が出来ているわけではなく、字面をなぞった紹介になるが、

  • 広帯域励起による全てのプロトン励起。
  • 高速化した Echo-planar spectroscopic imaging
  • Sparse sampling(=データを間引いてサンプリングして、後はAIに埋めさせる)
  • 物理モデルをベースにした機械学習法、特に subspace model という一種のデータのエンベッディング。

が、高次元のデータを取得した後、分析し直したイメージを提示することに成功している。MRの理論に強い人は是非詳しく読んで欲しいと思うが、我々にとって重要なのは、実際にこのような撮影が可能かだ。

ファントムを用いて同時検出が可能である事を確認した上で、正常人、脳腫瘍の患者さん、そして多発性硬化症の患者さんについて、同時に取得した画像を提示、解析している。

正常人の脳で、20種類もの画像が同時に示されるのを見ると壮観だが、何が何だかよくわからない。一方、脳腫瘍の患者さんの脳を見ると、脳腫瘍の周りに浮腫が存在するT1 、FLAIR 画像とともに、例えば乳酸のスポットでガンの代謝状態がわかり、また GABA が濃縮して、低酸素になっていることがよくわかる。これにより、腫瘍と周辺の変化を明確に区別することができる。

多発性硬化症の場合、組織を6種類のタイプに分けることが出来、例えば乳酸の集積は新しい病変に見られるが、古い病変には見られないこと。この特徴を利用して、病気の進行速度を予想すること等が可能になる。

今後様々な病気のタイプを同じように解析して、さらに新しい方法によるイメージの解析を進める必要があるが、解像度は犠牲になるようだが、これだけのパラメータを同時に解析できるようになったことは驚きだ。現在でも、別々にこれらのデータを集めることは可能だが、MR spectroscopy の普及が遅れている日本としては、期待できる気がする。

カテゴリ:論文ウォッチ
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