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4月2日:突然変異を元に戻す(3月31日発行Nature Biotechnology掲載論文)

2014年4月2日
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一般的に遺伝子治療と言うと、機能が低下している遺伝子を様々なベクターを使って外から補ってやる治療だ。この場合、自分の遺伝子に起こった変異が治るわけではない。これを可能にするには、ゲノム遺伝子の編集を効率よく行うための技術が必要だ。ここでも紹介して来たように、CRISPRと呼ばれる技術が生まれて、ゲノム遺伝子の編集も可能ではないかと皆が思うようになった。これをいち早く示したのが今日紹介する論文で、アメリカMITとハーバード大学から3月31日付けのNature Biotechnologyに掲載された。「Genome editing with Cas9 in adult mice corrects a disease mutation and phenotype(Cas9を用いたゲノム編集で大人のマウスの突然変異を治し症状を改善させる)」がタイトルだ。内容は全くタイトル通りで、Cas9遺伝子と、標的遺伝子へCas9を導入するのためのRNAを組み込んだベクターを作成し、このベクターを、遺伝子編集するための小さなDNA断片とともに静脈注射するだけだ。この方法では、肝臓細胞の1/250で遺伝子編集が狙い通り起こり、この細胞が増殖して変異細胞を置き換える事で、マウスの体重は減らず組織学的にも正常肝細胞が増えている事が確認されたと言う結果だ。CRISPRのおかげで夢がどんどん実現している実感がある。今の所肝臓以外の臓器でも効率よくゲノム編集が起こるかは不明で、人への応用のために克服すべき事は多いが、持って生まれた突然変異を治す時代が来るのは時間の問題だと感じる。今の所は肝臓だけだとしても、肝臓で働く遺伝子に突然変異を持って生まれてくる子供も多く、開発を加速して欲しいと期待する
カテゴリ:論文ウォッチ
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