日時:2014年4月20日 14:00~16:00
胎児性がんと闘っておられる岸田徹さんをAASJにお迎えし、直面している現状と課題について最新の研究論文を紹介しながら一緒に考えます。ご意見やご質問なども番組中にどしどしコメントでお寄せ下さい。( http://ch.nicovideo.jp/aasj )
※AYA世代:adolescent and young adult
【出演】岸田徹
【解説】西川伸一
■西川伸一:プロフィール
1973年京都大学医学部卒業。1987年熊本大学医学部教授、1993年京都大学医学部教授を歴任。2002年理化学研究所 発生・再生センター副センター長。専門は幹細胞生物学。2013年NPO法人AASJを設立。患者さん中心の医療体制の確立を目指している。
先日ニュースで元巨人の桑田投手が投球をしているのを見て、プロを辞めた後も凄い球を投げるなと感心した。そんな感想を裏付ける論文が4月8日付けのアメリカアカデミー紀要に掲載されていたので紹介する。インディアナ大学からの研究でタイトルは「Physical activity when young provides lifelong benefits to cortical bone size and strength in men (若いときの運動は生涯続く皮質骨の大きさと強さをもたらす)」だ。研究はプロ野球の投手の腕の骨をX線などで調べ、大きさ、密度、強さなどを調べている。研究のアイデアは面白い。投手は利き腕を酷使するため、反対側を鍛えていないコントロールの骨として使える。また、野球を辞めると大体現役時代の様な投球を続ける事はないので、運動を辞めた後の影響を見やすい。約100人の引退後様々な年数を経たプロの元投手の上腕骨について調べており結果はわかりやすい。もちろんトレーニングを辞めて時間が立つと、普通の人と同じように皮質骨の量や運動能力は落ちて行く。これは普通考えられているのと同じだ。しかし一定(最盛時の半分程度)のレベルに達すると骨のサイズは運動に関わらず維持されるようになり、また骨の強さも維持されると言う結果だ。これをそのまま解釈すると、若い時に鍛えれば強さはある程度維持できると言う事になる。しかし正直に言うと、論文のレフリーは少し甘いと感じる。プロの選手の鍛え方は尋常ではない。また元々遺伝的に選ばれた人達である可能性も十分ある。私がレフリーなら、アマチュアも含めて対象を拡げろとコメントするだろう。アマチュアの元投手の方も安心するのはまだ早い。