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2月12日:分子標的薬剤耐性白血病に効く薬剤を探す(Natureオンライン版掲載論文)

2015年2月12日
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慢性骨髄性白血病のほとんど、および成人のリンパ芽球性白血病の3−5割は9番と22番染色体が部分交換する染色体転座により形成される、Bcr遺伝子とAbl遺伝子の融合が引き金になっている。私が医師になった頃は、いずれも不治の病気だったが、骨髄移植の登場で治る病気に変わった。そして2000年、白血病の原因である融合遺伝子を標的にしたイマチニブ(グリベック)の登場で、薬剤服用を続けるだけで制御できる病気に変わった。この意味でイマチニブは、21世紀の新しい癌治療の幕開けを告げる象徴的薬剤と言える。とはいえ長く経過を観察すると、イマチニブで抑えている白血病細胞の中に、薬剤耐性を獲得した細胞が生まれることがわかってきた。その多くは、315番目のチロシンがイソロイシンに変化した突然変異で、この新しい変異を抑える薬剤の開発が待たれていた。今日紹介するヘルシンキ大学とファイザー製薬からの論文は、現在腎臓がんで血管新生抑制のために使われているアキシチニブが、イマチニブ耐性の白血病に聞くことを示した論文で、Natureオンライン版に掲載された。タイトルは「Axitinib effectively inhibits BVR-ABL1(T315I) with a distinct binding conformation(アキシチニブはT315I変異を持つBCR-ABLと独特の結合構造を形成し機能を抑制する)」だ。これまで、T315I変異がおこってイマチニブ耐性が獲得されると、使える薬剤としてポナチニブしか存在しなかった。ただ、ポナチニブはほとんどのキナーゼに作用するため、副作用が強い。このグループは、より特異的なキナーゼ阻害剤を求めて、様々なキナーゼ阻害剤をテストして、ファイザーから血管新生抑制剤として発売されているアキシチニブがT315I型のAbl分子を抑制することを突き止めた。はっきり言って結果はこれだけで、あとは分子の構造解析に基づき、アキシチニブが活性型の分子構造に変化したAblに強く結合することを示した構造解析、他のキナーゼに対する特異性解析(アキシチニブは正常Ablの抑制活性は低い)、実際の白血病細胞を用いた抑制試験などを行っている。最後に、一人のイマチニブ体制になった患者さんに2週間この薬剤を投与することで、白血病細胞をかなり消失させられることを示している。特に新しい薬剤を開発したわけでもなく、研究論文としてはNature レベルかどうか少し疑問だ。しかし、患者さんにとっては効果が確かめられた、しかも明日からでも使える薬剤が見つかったことは大きな朗報だろう。もちろん、この薬剤を手始めに、より効果の高い副作用のない薬剤を開発する可能性も生まれた。期待したい。

 

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