過去記事一覧
AASJホームページ > 2015年 > 2月 > 27日

2月27日:地道に進むニーマンピック病治療の動物実験(Science Translational Medicine掲載論文)

2015年2月27日
SNSシェア

ニーマンピック病は、NPC1,NPC2遺伝子の欠損によっておこる難病で、コレステロールを細胞に貯留し最終的に細胞死を引き起こす。この結果、神経細胞死による脳や運動機能の障害、肝細胞死による肝臓障害などが進行する。全く治療法がない遺伝病と思われてきたが、21世紀に入って様々な食品添加物として利用されているシクロデキストリンが病気の進行を止めることが動物実験で示され、2013年にはシクロデキストリンを髄啌内に注入する第1相治験も始まった。私自身も、この治験を皮切りに着々と治療法の開発が進むと期待している。ただ、それでも動物実験による詳しい研究が必要であることを示す論文がペンシルバニア大学獣医学部からScience Translational Medicineに発表された。普通なら全く新しい分子や薬剤についての論文を掲載しているトップジャーナルがわざわざ掲載を決めたのも、治験と並行して動物実験がいかに重要かを示すためだろう。タイトルは、「Intracisternal cyclodextrin prevents cerebellar dysfunction and Purkinje cell death in feline Niemann-Pick type C1 disease (猫C1型ニーマンピック病の小脳プルキンエ細胞死をシクロデキストリン脳槽内投与は抑制する)」だ。この研究では、ヒトと同じ遺伝子突然変異を持った猫ニーマンピック病をモデルに、シクロデキストリンの脳曹内投与の効果と副作用を調べている。まず手始めに、皮下注射を行って調べているが、予想通り肝障害の進行を遅らせられるが、小脳性の運動障害には全く効果がない。また、大量の投与は、肺障害をきたすことも分かった。次に、様々な用量のシクロデキストリンを猫の脳内、大槽と呼ばれる小脳のすぐ下の髄腔に2週間に1回投与を行っている。すると、症状の出ていない3週齢の猫に120mg投与し続ける群では、なんと2年にわたってほとんど症状が現れず、子供を作ることもできたという驚くべき結果だ。実際に脳細胞にも脂肪蓄積はほとんど起こっていない。障害の強い小脳に近い事、髄液の流れの溜まりになっていること、比較的多くの量を投与できること、などから大槽に投与したと思われるが、現在治験で行われている腰椎からの髄腔投与と大至急比べる必要があるだろう。もちろん副作用についてもしっかり調べている。間違いなく聴力障害が来るようだが、これはなんとか対応できるのではないだろうか。このホームページではこれ以上の詳細を紹介しても意味がないだろう。極めて期待できる結果だし、現在進行している治験のプロトコルにも影響を与える結果だと思う。さらに詳細知りたい、あるいは質問がある場合は遠慮なくメールを送っていただければ対応したいと思います。いずれにせよ、わが国も国際コンソーシアムに積極的に参加し、早期から治療が可能になることを願う。また、最も有効な投与方法について臨床治験を進めてほしい。

カテゴリ:論文ウォッチ
2015年2月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
232425262728