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9月4日:FOPの進行を抑制できる可能性を示す画期的発見(9月2日号Science Translational Medicine掲載論文)

2015年9月4日
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FOPは全身の筋肉が骨化する難病だが、ACVR1(ALK2)遺伝子の特定の突然変異によることがわかっていた。この突然変異により、BMPと呼ばれる骨化を促すサイトカインに対する反応性が上がることも生化学的に示されており、このシグナルを抑制する薬剤の開発が進んでいた。ただ病気の進行自体をよく見てみると、骨化サイトカインに対する反応が促進しているという説明だけでは不十分なことは誰もが感じていた。しかし従来の研究は、BMPシグナルが亢進しているという事実に完全に囚われて、他の可能性を考えることができていなかった。今日紹介するアメリカのベンチャー企業リジェネロンからの論文は、AASJの仲間藤本さんから昨日指摘され論文を読んだが、間違いなくFOPの病態理解に全く新しい道を示すだけでなく、骨化の進行を抑える新しい治療法を示した画期的研究で9月2日号のScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「ACVR-R206H receptor mutation cause fibrodysplasia ossifyicans progresssiva by imparting responsivenesss to activin A (ACVR受容体のR206H突然変異はアクチビンに対する反応性を獲得してFOPを引き起こす)」だ。普通ACVR1はBMPと結合して細胞膜上でACVR2と会合し、smad分子を介して細胞分化を誘導するシグナルだ。ほとんどのFOPの原因であるR206H突然変異が起こると、BMPに対する反応が亢進する。ただ、もしこの亢進が骨化の原因なら、発生過程でもっと大規模な異常が起こっても良さそうだが、FOPは生後徐々に発症する。この著者らは、BMPシグナルの亢進という定説を一から洗い直し、この突然変異はBMPシグナルの亢進だけでなく、普通ならこの受容体を刺激しないアクチビンに反応することを突き止めた。その後、1)アクチビンはACVR1と結合するが、普通はBMPと拮抗してシグナルを抑えていること、2)R206H突然変異が起こると今度はアクチビンをBMPと同じように刺激シグナルとして間違ってしまうこと、を明らかにした。だとすると、アクチビンの作用を抑制することでFOPの骨化を防ぐことができるはずだ。これを証明するため、これまで作成されたよりはるかにレベルの高いマウスモデルを作成し、このマウスモデルで起こる骨化が、アクチビンを抑制する抗体でほぼ完全に抑えられることを明らかにした。マウスの作成の方法といい、多くの抗体を用意している点といい、まさにプロの仕事だ。この結果から、これまで開発されてきた化合物も骨化を抑える効果はあるだろうが、アクチビンに対する抗体がもっとも特異的で、副作用のない治療法になることが結論できる。もちろんここまでわかっても、薬にまで仕上げるにはまだ時間がかかるだろう。しかし共著者にもなっている、リジェネロンの創始者George Yancopoulousは、彼がコロンビア大学の大学院生だった頃から知っているが、学生の時から業績、頭のキレなど全てで群を抜いていた。その彼の会社のことだ、この結果から考えられるアクチビンの中和抗体薬の開発は急速に進められるだろう。FOPに間違いなく光が差したと思う。
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