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9月16日:PD-1はガン自身にも発現してガン増殖を促進している(9月10日号Cell掲載論文)

2015年9月16日
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免疫反応を弱めるチェックポイントを標的にしてガン免疫を高め、ガンを治療する抗体薬が注目を集めている。リンパ球に発現して免疫反応を抑制する分子CTLA4やPD-1、あるいはそのリガンドに対する抗体を用いて、この抑制をブロックする治療法だ。従来の治療が全く効かなくなった末期のガンに効果を示し、人によってはガンが完治したことが示され、大きな期待が集まっている。先日ラスカー賞がAllison博士に与えられたのも、この治療法開発への貢献が認められてのことだ。また抗PD-1抗体は我が国の小野薬品独自の開発品であることから、久々にヒットが生まれたとメディアでも大きく取り上げている。ただ、私を含めてほとんどの人は、この治療はガンを直接標的にするのではなく、あくまでもガンに対するキラー細胞を標的にして、免疫反応を高めると思ってきた。今日紹介するハーバード大学からの論文はこの通説を覆し、少なくとも悪性黒色腫ではPD-1はガン細胞にも発現してガンの増殖を助けており、抗PD-1抗体はガンに直接効いて増殖を抑えることもあることを示した研究で9月10日号のCellに掲載された。タイトルはズバリ「Melanoma cell-intrinsic PD-1 receptor functions promote tumor growth (メラノーマ細胞自身が発現するPD-1機能は腫瘍の増殖を促進する)」だ。チェックポイント治療が始まってから、抗CTLA4抗体と抗PD-1抗体が同じ細胞を標的にしているはずなのに、効果に違いがあり、特にPD-1抗体の方がよく効くことが知られていた。あまり深く考えない研究者が多い中で、このグループは抗PD-1抗体が免疫チェックポイント以外に作用しているのではと考え、この抗体の効果が最もはっきりしているメラノーマでこの可能性を追求している。結果、メラノーマの多くはその集団の中にPD-1を発現する細胞を抱えていることに気がついた。次にメラノーマが発現するPD-1が腫瘍増殖に関わるか調べた結果、mTORというシグナル分子を介して細胞の増殖を促進していること、またPD-1を発現しているメラノーマほど腫瘍増殖性が高いことを明らかにした。そこで抗PD-1抗体がガンに直接効くかどうか、免疫反応が起こらないマウスにガンを移植して調べると、明確な効果が認められ、抗PD−1抗体が免疫反応を介さずにガン増殖を抑制できることを初めて示した。他にもいろいろ実験は行っているが、ガン自体がPD-1を発現し、同じガンが発現するPD-L1に刺激され、直接ガン増殖に関わる可能性があり、抗体治療の一部はこの経路も標的にしているというのが結論だ。今後、他のガンでもPD-1が発現していないか違う観点から調べることが重要だろう。特に、現在多くの治験が進んでおり、効いたケース、効かなかったケースが分類されているはずで、これらの症例についても新しい観点から見直すことが重要だろう。いずれにせよ、この治療にたいしてますます期待が高まる結果だ。しかし論文は面白いのだが、大きいはずのわが国の貢献について全く引用していない事に驚く。この分野は多くの会議が持たれているはずで、わが国の免疫や臨床の人たちはもっとプレゼンスを高める努力が必要だと思う。おそらく独自開発のヒット作の治験を外国に丸投げして、わが国臨床研究者が初期段階で外されてしまった結果ではないかと想像する。もしそうだとすると、私が現役の頃進められていた国際共同治験をリードできる機関の育成は全て失敗に終わったのだろうか。今新しい医学部を作る一方で、定員を削減するという方針が出されている。まさにこれは愚策の典型で、国際的に比較すると日本の医学部の規模は小さすぎる。ソウル大学病院は2500床を越し、北京大学に至っては9000床を越すのに、東大でようやく1300床のありさまだ。治験を始め臨床研究の事を考えると、大学は半分以下に減らして一つの規模を拡大するしか国際的に医学部の残る道はない。皆が小粒へ落ちていく道を用意する政策の罪は重い。
カテゴリ:論文ウォッチ
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