4月29日 新型コロナウイルス肺炎とレニン・アンジオテンシン系阻害剤(4月23日号 JAMA Cardioloty 他)
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4月29日 新型コロナウイルス肺炎とレニン・アンジオテンシン系阻害剤(4月23日号 JAMA Cardioloty 他)

2020年4月29日
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MERS, SARSそして新型コロナ肺炎(Covid-19)と、重症な肺炎を誘導するコロナウイルスの宿主細胞への侵入機構を比べてみると、MERSはインクレチンを切断するペプチダーゼDPP4、そしてSARS、Covid-19はアンジオテンシンを切断するACE2を使っている点で、我々が生活習慣病の治療に使っている分子と関わりがある。たまたまといえばそれだけだが、DPP4とACE2を進化過程で使うようになったのか、人から人への感染能力の進化を考える意味では面白い問題に思える。おそらく、他の動物での感染メカニズムと比べることで、今後この意味が明らかになるように思う。

一方治療に当たる医師の方では進化などと悠長なことは言っておられない。アンジオテンシン2を切断してアンジオテンシン1-7に転換するACE2は血管緊張のバランスを取っており、しかも高血圧治療の標的になっている。そこに新型コロナウイルスが割って入ってきたのだ。最初から、レニンアンジオテンシン系の薬剤(RA剤)がcovid-19の重症化に関わる、いや治療効果があるなど、様々な論文が報告され、学会も対応に追われた。最終的に、RA剤を中止する、あるいは新たに処方するエビデンスはないという声明が多くの学会から出されている。

ただこの声明を裏付けるためには、臨床的調査が必要で、論文の発表を待っていたら、武漢中央病院に入院した症例のデータがJAMA Cardiologyに、

そして武漢の多施設からのデータ解析を行った論文がCirculation Researchに、それぞれ発表された。

詳細を省いて結論だけを紹介すると、

最初の論文では、全入院症例1178例、うち高血圧患者さんが362例、そのうち115例が、アンジオテンシン阻害剤か、アンジオテンシン受容体阻害剤を服用していた。結果だが、重症化率、死亡率、いずれの指標でもRA剤使用グループで差が見られなかったので、RA剤を服用中の人たちには一安心という結果だ。

驚くことに、同じ武漢でも他施設に入院した3611例(内1128人が高血圧)について、死亡率を計算した研究では、高血圧患者さんのうちRA剤を服用していた患者さんの方が死亡率で3.7% vs 9.8%と予後が良かったという結果になっている。

結論としては、病院に入院するケースではやはり高血圧の比率が高いことがはっきりしているが、いずれの論文もRA剤が悪いという結果ではないので、covid-19感染を恐れてRA剤を辞める必要は全くないことがわかる。

一方、RA剤を飲んでいる方が予後が良いかについては結果が分かれており、今後の確認が必要だろう。現在進行形で多くの死者が出ており、論文はすぐに出てくるように思う。個人的には、致死率が極めて高い米国やイタリア、スペイン、英国と、比較的低いドイツやアジアの国の比較が面白いように思う。我が国でもすでに死者が300人を超えており、しっかりしたデータが集まるのではと期待している。

カテゴリ:論文ウォッチ