5月29日 糖尿病で傷の治りが悪い一因としてのエフェロサイトーシスの低下(5月25日 Nature オンライン掲載論文)
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5月29日 糖尿病で傷の治りが悪い一因としてのエフェロサイトーシスの低下(5月25日 Nature オンライン掲載論文)

2022年5月29日
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エフェロサイトーシスは、ラテン語の死体を墓に埋めるという意味のefferreから命名された言葉で、死んだ細胞が食細胞によって処理されることを意味する。実際、この機能のおかげで、多くの細胞が死んでしまう炎症や損傷部位でも、死細胞の数が上昇しない。

今日紹介するベルギーのVIB炎症研究センターからの論文は、炎症局所の樹状細胞によるエフェロサイトーシスを抑制するアミノ酸トランスポーター SLC7A11 が、糖尿病で上昇して損傷治癒を遅らせる原因になっているという研究で、5月25日 Nature にオンライン出版された。タイトルは「Targeting SLC7A11 improves efferocytosis by dendritic cells and wound healing in diabetes(SLC7A11を標的にすることで樹状細胞によるエフェロサイトーシスを正常化し糖尿病での損傷治癒を早める)」だ。

おそらくこのグループの目的はエフェロプトーシスを調節する様々な方法を開発することだろうと思う。マウス骨髄由来樹状細胞に、細胞死進行中のヒト細胞を取り込ませ、エフェロサイトーシスにより誘導される分子を探索している。実際には200近い遺伝子がエフェロサイトーシスで変化するが、その中から最終的に SLC7A11 を選んでいる。おそらく、この分子のトランスポート機能を阻害するエラスチンがすでに存在して研究がやりやすいのだろうと思う。実際にはエフェロサイトーシスは細胞ごとに異なる分子が働く複雑な過程だと思う。

いずれにせよ SLC7A11 はエフェロサイトーシス過程で発現が上昇し、エラスチンを用いて阻害するとフェロサイトーシスが高まることを発見している。即ち、エフェロサイトーシスが始まると、発現を高めてブレーキをかける分子であることがわかった。

次に SCL7A11 の機能を、エフェロサイトーシスが働く皮膚の損傷治癒過程でしらべているが、エラスチンで阻害するだけでははっきりと差が出ないようで、エフェロサイトーシスを刺激するため、死細胞を損傷部位に注射してエフェロサイトーシスを高めるためのちょっとしたトリックが使われている。基本的には細胞死が多く起こって炎症が高まっていることがエフェロサイトーシスにとっては重要だ。そして、この系で見ると、損傷治癒がエラスチン投与で促進することを確認している。

次に、SCL7A11 のエフェロサイトーシスブレーキのメカニズムを調べ、

  1. SCL7A11 ノックアウト樹状細胞では、グリコーゲン分解と、そこで出来たグルコースの嫌気的回答が高まっていること、すなわちSCL7A11は代謝を抑えてエフェロサイトーシスを抑えていること、
  2. SCL7A11 を阻害することで TGF ファミリー分子の一つ GDF15 が分泌され、エフェロサイトーシスが組織に分泌され、それがまたフェロサイトーシス上昇へと変えること、

を明らかにしている。

このようにグルコース代謝がエフェロサイトーシと接点を持ってきたので、最後に2型糖尿病モデルマウスを用いて CL7A11 の発現と機能を調べ、糖尿病マウスおよび GDF15 ノックアウトマウスでは SCL7A11 が強く上昇し、またこの機能を抑えると糖尿病マウスでも損傷治癒が早まることを示している。

最後のメカニズムの方は、結果か原因かがわかりにくい実験が行われており、切れ味はもう一つだが、エフェロサイトーシスを調節する一つの標的分子が見つかったことは、炎症や老化研究にとっては重要だと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ