10月8日 ちょっと変わった臨床研究(10月5日Nature Medicineオンライン掲載論文他)
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10月8日 ちょっと変わった臨床研究(10月5日Nature Medicineオンライン掲載論文他)

2026年10月8日
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今日はテーマが極めてユニークな論文を2報紹介する。

最初の論文はカナダのマクギル大学を中心に世界の研究者が集まって、118カ国から600万人から現在感じている痛みについて自己申告して貰ったデータを、一つの土台に統合し、年齢、性別、地域での痛みの傾向を分析した研究で、読んでみるとなんとなく納得してしまう結果が示されている。タイトルは「Global and regional reference curves for pain across the lifespan in 6.1 million individuals in 118 countries(生涯をカバーする118カ国610万人について調べた痛みのグローバル及び地域のレファレンス曲線)」だ。

これまで痛みの統計調査は病気との関係で調べられることが多かった。即ちリューマチの関節炎と行った具合だ。一方、この研究は病気等の条件とは関わりなく、健康調査の聞き取りで今どこにどの程度の痛みを感じているかについての自己評価だけを集めて解析している点が特徴だ。これまで、このような原因を無視した調査は科学的でないとあまり行われていなかったようだが、600万人以上について調べると、なるほどと納得できるおもしろい結果になっている。我が国からも4大学が参加しており、日本人のデータも含まれる。

まずどこが痛いかと聞かれたとき、例えば「背中から腰」あるいは「膝」と11カ所の痛みにわけて比率が示されている。まずどの場所でも痛みを訴える比率は女性が多い。最も多くの人が訴えるのが背中から腰で、納得できる。ただ、増加速度が20-30歳をピークに、男性ではほとんど増えないことで、本当かなと感じる。一方老化や体重に影響される膝や股関節では増加のピークが40-50歳で納得できるが、70を超えるとそれ以上増加がないというのは意外だった。頭痛や腹痛は10歳代で増加のピークを迎えるのも納得できる。Open accessなので図のURLを示すが、この図を見て痛みの傾向を感じることは結構役立つ気がする(https://www.nature.com/articles/s41591-026-04696-w/figures/2)。

痛みの質で言うと、強い痛みは30代前半をピークに増えて、50代からは低下する。一方、あちこち痛いですと言った答えは50歳をピークに増加し、70歳を超えると減る。即ち70までどこか痛いという症状がないと後はあまり心配がないと言える。

地域差も調べてあり、我々東アジア人は世界と比べるとどの場所の痛みも少なめだ。一方で、経済格差と痛みの比率は明確で、トータルの数で言えば関節痛、背中腰、頭痛では所得の低い国ほど多い。即ち生活環境に左右されるが、他にも胸痛は喫煙が強く影響するし、膝の痛みは肥満と強く相関する。

以上が結果で、600万人のデータをまとめただけで素晴らしく、是非掲載されている図をゆっくり眺めてほしいと思う。

次はコペンハーゲン大学からの論文で国際宇宙ステーションに滞在した宇宙飛行士52人の血液を、滞在前、滞在中、滞在後に採取し、代謝物解析を質量分析で行った研究で、ちょっと古いが6月29日にNature Communicationに掲載された。タイトルは「Longitudinal metabolomics profiles reveal increased gut microbial protein fermentation during Spaceflight(持続的メタボロームによって宇宙飛行時の細菌叢によるタンパク質の発酵が上昇する事が明らかになった)」だ。

結果はは一つの図にまとめられているのでURLを示すので是非見てほしい(https://www.nature.com/articles/s41467-026-74979-w/figures/2)。宇宙飛行によるメタボロームの変化のうち27%は食事の変化で、限られたレパートリーから選ぶ宇宙では逆に寄与が少ないのではと思えるぐらいだ。おもしろいのは、魚由来の代謝物が上昇している点で、通常魚をあまり食べない人が多く、宇宙では魚の多い食事が提供されていると考えられる。

タイトルにあるようにこの研究で最も協調しているのが、細菌叢による代謝物が上昇する点で、特に図に示したようなタンパク質の発酵が強く起こって、アンモニアや硫化水素など、毒性のある代謝物が腸で合成され、また図にあるフェニルアセチルグルタミンのような細胞老化誘導分子が合成される。

何故このような変化が起こるのかだが、おもしろいことに微小重力空間で暮らす宇宙飛行士の多くは便秘に悩むようだ。従って、便通を維持するのと、タンパク質の発酵が少ない食事を考えることが重要になる。

以上が結果で、「宇宙飛行士は便秘」という話だけが頭に残りそうだが、フムフム論文としてはおもしろい。

カテゴリ:論文ウォッチ
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